小説を書くこと
※画像はみんなのフォトギャラリーよりにか様の画像をお借り致しました。
生まれて初めて官能小説を書いたのは、2020年4月のことだった。
募集していたので小説の仕事もしたいし挑戦してみよう。そんな軽い気持ちでのことだった。
目に留まればラッキーだし、採用されなくても仕方ない。そんな後ろ向きな気持ちもあった。
過去に一度だけ読んだ団鬼六先生のタイトルすら憶えていない官能小説を頭の中で紐解いて、何とか自分なりのものを書いて納品したのだ。
ただ、団鬼六先生の作品を読んで最も憶えていたのは、書くのは難しいという第一印象だった。
何処か後ろめたさのある仄暗い人間模様と下品さ一歩手前のエロティックな描写に、十代だった私はこんなものを書けっこないと諦めて白旗を振ったのである。
小説家になりたいと漠然と夢を描いていた私は、そこで官能小説というジャンルに一度背を向けていた。
もちろん、2年間コンスタントに納品を続けている現在も難しいという気持ちはまるで変らない。
文章だけで読んだ人間を性的に興奮させる。
自分の書きたいものも書くが、しっかりと読者のニーズにも応える。
これらの条項を満たせているのかと問われると自信はないし、その証拠に私の書いたものはあまりランキングにも食い込まない。
読者はやはり正直だ。ずっとそのまま自分の欲望に素直でいてほしい。読みたくもないものを読まなくていい。
それでも時折私の書きたいものと、読者の読みたいものがパチッと嵌り、ランキングに食い込むことがある。それをただのラッキーではなく、狙ってできるようになれば良いのだが、言うは易し行うは難しとなる。
とはいえ、私は十代の頃に夢見たように小説を書いて原稿料を頂戴しているのだ。
君にそんな経験はまだないだろ? と十代の自分に言ってやりたくなる。
少なくとも小説を書く時に、このジャンルは書けない、書きたくないなどと自分から離れていく必要はない。とにかく書いてみる経験を積めば良いのだ。
書き切れなくても問題はない。書けなかったという経験さえしておけば、後から「なぜ、どうして」と自分に聞くことができる。
何より案外書けたという場合もあるから気にせず、まずは書いてみなよ。そんなふうに十代の自分には続けて言ってやろう。
官能小説だって、BLだって、2020年以降に初めて書いたけれど、案外書き切れるものだから。ああ、それから君には才能なんてものはないよ。だから色々と苦労して書いてごらんよ。それぐらいは私にもできたから、君にもできるさ。
官能小説なんで難しくて書けないと思っていた頃の自分に言うとしたら、こんな具合だろうか。
やってみる。
やってみた。
小説を書くのは、これぐらいのチャレンジ精神がちょうどいいと私は思っている。
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