
社寺検分のすゝめ-北野天満宮・本殿-
前回に続きまして北野天満宮さんの第2弾、
本殿をご紹介してまいります(*’∀’)
今回、ちょっとはしゃいでおりますので
お時間のあります時にどうぞ('∀')
ただただ装飾を熱く語る、おひとりさま社寺検分はこちらより▽▽
それでは今回も
独特かつハイクオリティな北野さんの彫刻を見て参りましょう(*’ω)

北野天満宮・本殿
本殿正面はこのような感じです。(厳密には拝殿)

廻廊でぐるりと囲われており
吊り燈籠の整然とした並びがまた上品。


外側には彫刻欄間がずらり

落ち着いた雰囲気が素敵
装飾には
目にも鮮やかな丹塗り、工芸品のような漆塗り、
豪華絢爛な錺金具、
そして緑青・群青・朱色のあでやかな彩色などがあります。

ツヤピカの黒に金、
これでもかの原色・赤青緑がバンバンバン。
さながらそこは
極楽浄土かな、といった具合。

日光などと比べると
北野さんは一見控えめにも見えるのですが
細部が本当にこまやかなんですね(*’∀’)
例えば柱の灯籠。

こちら御宮殿タイプのもの、
上部の屋根装飾がまた細かい。

そこまで珍しいタイプではありませんが
なにかこう、目にするもの全てこうしたこまやかさが感じられましてね。
唸るところではないのに唸ってしまうこと多々(’∀’)
特に梅の意匠はさりげなくもたくさんありました。
そちらは次で載せようかと思います。
立ち牛
ではお待ちかねの彫刻をずらずらと(*’∀’)
まずは何と言っても正面中央の牛。
道真公の逸話から「撫牛」は境内にたくさんあれど、
中央におわしますは「立ち牛」(’∀’)!


動きを感じる素晴らしい彫りです。
周りには松ともちろんの梅。
奥に紅、手前に白。

本殿正面中央はメインの中のメイン。
彫刻も由緒にひもづく題材かつ、立派なものが多いわけですが
天満宮さんに関しては姿形・謂れともに、文句なしですね。
脇を固める霊獣たちにヒケをとらない凛々しい立ち牛、
本当にあっぱれです(*’∀’)
霊獣たち
さて、周りも独特で素敵なものばかり。
まずは獏。
夢も鉄も食べちゃう穏やか霊獣、たまにゾウと間違われる(’∀’)
前回の三光門では柱の木鼻彫刻になっていました。


阿吽のペアかなと思います。
石清水八幡宮・本殿だとこんな感じの獏が。

鼻の長さなど、ユニークさではこちらに軍配があがります(*’∀’)
続いて、龍。
「霊獣といえば龍・龍といえば霊獣」
鉄板の代表格、ここにも健在(’∀’)

左下にちらりと見えている尾の先のくるんと感がオサエテル!
のびやかな口元も時代を感じさせてくれます(*’∀)
そんな龍に中央をはさんで対峙するのはこちら、竹に虎。

ということは昭和修理では
彫刻欠失の補いはしなかったということかなぁなどと考えたり(重箱スミ目線)
この雲が横に広がるのも北野さんらしいなぁと思っています(*’ω’)
龍虎で天と地、あるいは風と雲、
2つの強大な力などの意味合いでしょうか(*’∀’)
個人的には中央はさんで
「東に虎」「西に龍」を配しているのが面白いなと感じました。
「東の青龍・西の白虎とは違いますよ」という意思表示なのか
はたまたクロスさせることに何かしら意味をもたせたのか(*’ω’)ウーム
さて、
本日の目玉はこちらですね(’∀’)


うーん、この形容しがたい表情(’∀’)イイ!!
あんまり言わないんですけどね、
見た瞬間
「やばいな」
と。
まぁヤバイのはお顔だけではありませんで、
結局この子がナニなのか、ちょっと確信が持てません。
ここまで「阿吽の獏」「龍虎」となんとなくペアできてますから、
おそらくこの子はこちらとペア。

こちらはまごうことなき麒麟(と思う)。
いえ、9割9分が麒麟なんですけれど、さっきのやばい子のことを考えるとこちらもだんだんゲシュタルト崩壊みたいな気分になります。
麒麟はビールで有名なあれで、
社寺彫刻だと見慣れたスタイルはたとえば本願寺さんのですね。

火炎が脇から出ている子。雲との組み合わせがほとんどです。
ここにビール麒麟のイメージを重ねて頂くと
先の子は「麒麟だな」とある程度確信がもてます。

麒麟は「麒」と「麟」、雌雄で呼び名が分かれるとも言われる霊獣。
この2つは阿吽の組み合わせともとれる表情なので、
この子も麒麟かなと言えそうですが…

上向きの大きな牙がどうも気になる。
1本ツノで、火炎で、一見波のような雲に囲まれていて、蛇腹でヒヅメ。
一応もう1体の麒麟と要素は一致するんですが、
牙がねぇ…
ギラっとした牙の麒麟がいないわけではないんです。
ただ、もう1体とのギャップが強い!
気になって眠れません。
好事家の間では北野さんのこの子を「龍馬」と仮定されている方もいて、
そちらにも傾きかけたんですが
いや、龍馬はもともとややこしいからあまり軽々に飛びつきたくない。
それこそ「サイなのカイバなの河図洛書なの神馬なの」と泥沼の未来が見えます(’ω’)
沼は沼でも身動きとれる沼からはまっていきたい。
なんか手がかりないかしらと手持ち資料でウンウン唸っていたところ、
やってみるものですね。
発見。
石清水八幡宮・本殿の木鼻の麒麟ペア(’∀’)!


2025年2月25日、
『麒麟のペア・片方だけ上向き牙ある説』
誕生です(私の中で)
この画像、真横から撮ったものがなくて説明しづらいですが、
どちらも麒麟だと思っています。
そして形状の違いは牙のみ。
とするとですよ、
麒麟、「麒」と「麟」は牙の向きで区別するのかもしれません。
人のやることなので
「こっちは上向き牙の気分でした」というのも
もちろん可能性としてあります(’∀’)アルアル
しかしそもそも麒麟は
体が鱗なのか毛なのか、お腹は蛇腹なのか馬っぽいのか、
ツノは1本なのか2本なのかもろもろ、
ちょっと幅が広いというか種類が豊富というか
端的に申して
設定がアヤシイ
と思っていましたが、ここにきて牙も加わりました。
大興奮です。
まぁ大穴で
「麒麟と対になるのは龍馬とかで麒麟そっくりだけど牙だけ違う」というのもあり得ますね(’ω’)
いずれにしろ既に失われた設定である気配濃厚。
ゆえに時代特定まで出来ると非常に面白い視点かと思います。
考えてみると牙の上向き下向きは、不動明王さんですよ。
天地眼と一緒でかなり謂れの深い造形かもしれません(*’∀)
これはハマりがいのある沼と見た(*’ω’)!
ちょっとはしゃぎすぎました(誰かに話したくて仕方なかった系)。
ということで
私の推測では立ち牛を中央に置いて
「獏のペア、麒麟のペア、龍虎のペア」かなと思います。


次回の修理で根拠が見つかれば、この子も豹になるかもですね(*’ω’)
仙人たち
麒麟で紙幅を要しました(’ω’)
三光門に続いて斗の彩色についても触れたかったのですが
オイトイテ、
精緻な仙人たちを紹介せねば終われません。
仙人さんたちの表情のこまやかさにご注目(*’∀’)
「こうかな?」の仙人名を添えています。

霊亀と呼ばれる不思議亀、雰囲気が出ております(*’∀’)

さっぱり楽しそうなお顔がなんともイイ

衣に描かれた龍がおしゃれです(’∀’)

弟子に肉体を焼かれてしまった悲しいエピソードあり(’ω’)

老人の悩ましげな顔が秀逸です(*’∀’)

石の羊を本物にできるスゴイ人

独断ながら「日本の社寺彫刻トップクラス」に整ったお顔立ちと思っています
いや、麒麟の牙がネックでした(’∀’)ナガカッタ
おまけで彫刻配置図をどうぞ。
本殿・拝殿を上から見下ろした略図です。

配置図には手を出さないハズが誘惑に負けました(’ω’)
昨日、アトリエでカタカタ打ちながら考えていたんですが
気付いたら麒麟のことで3時間。
牙の違いがある石清水ペアを見つけた時は
思わず声が出ましたねぇ。
またきちんと見に行ってこようと思います(*’ω’)
そうそう、正面は仙人の彫刻脇に鏡が取り付いていまして。

私はこういう「意味の深そうな」装飾、本当に好きですね。
豊かな感じがします(*’∀’)
さて、次回は廻廊外側の彫刻欄間と、
その他・境内でグッときたこと。
耳をそろえて3000字でお送りいたします(*’ω’)!
麒麟はじめよくわからないテンションにお付き合いくださいまして
ありがとうございます。
それではまた次回の投稿で。
おまけ


いいなと思ったら応援しよう!
