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会社を動かす人事は何をやっているのか?(カプコン社編)

目次を見ていただければ分かるが、とんでもなく長い記事である。文字数にして1万文字となってしまったが、内容は相当濃いものになったと思う。目次を見て、気になったところから読んでいただけるとありがたいです。


現在、様々な組織課題の分析系コンテンツは普及してきているが、実際に社内で人材育成・マネジメント施策を推進している人からすると「実際、他社はどういうことをやっているのか?」の方が気になるのではないだろうか。

坂井自身、自分のプログラムの導入先の企業の「その後」をお伺いすることで、「何が成果創出の分岐点になるのか?」について考えてきた。

また、「組織はナマモノ」であるために、人材育成・組織マネジメント施策が「打ち上げ花火的なもの」になっても意味はなく、「どのように仕組み化していくか」の方が重要である。

本記事の位置付けとして、今まで坂井は「空中戦より地上戦が大事」という話をしてきたが、「地上戦を機能させるとはどういうことなのか?」を考察
していきたいと考えている。

理由としては、「プログラム受講後・プログラム受講外の取り組み」が重要であり、そこのノウハウまで体系化した方が、より本質的な支援ができると考えているためでもある。

今回取り扱う企業は直近、日本の人事部「HRアワード2024」を受賞されていたカプコン社であるが、今後も他企業の「その後」の取り組みを分析し、知見を蓄積していきたいと考えている。

”破茶滅茶”に泥臭い、人事・組織改革

CAPCOMといえば、『バイオハザード』『モンスターハンター』『ストリートファイター』など様々な大ヒット作を生み出してきた、日本を代表するゲーム会社であり、直近の業績も絶好調である。

坂井としても、上記のシリーズだけでなく、『ロックマン』『逆転裁判』などをプレイしていたので、お声がけいただけた時は正直とても嬉しかった。

ただ、下記のプレスリリースにもあるように『事業拡大に伴うゲーム開発の大型化・長期化等を背景に、新人・若手の早期戦力化や持続的な育成システム確立への課題』となっていたようであった。

この課題に対して、カプコンの人事担当者の方は、「ロジカルに課題を整理・分析した上で、”破茶滅茶”に泥臭く改善施策を実行しきっている」のが特徴であった。破茶滅茶と書いているのは誇張でもなく、「よくここまで泥臭く淡々とできるな…」と思っている。

※参考記事
カプコン、日本の人事部「HRアワード2024」企業人事部門で入賞!
~ 人材投資戦略の一環として、チーム全体で組織基盤を作る取り組みが評価 ~

カプコン社の人事施策の3つの工夫

特徴的なものは、下記の3つであるために、それぞれ解説していく

  1. 人事担当者による「泥臭い内製化・仕組み化」

  2. 新入社員の並行参画による「マネジメント民主化モデル」の実施

  3. 「成果が出るか」ではなく「成果が出るまでやる」

①人事担当者による「泥臭い内製化・仕組み化」

社員3000人中900人が参加!?

元々、坂井はここ3年くらいカプコン社をご支援していたが、「カプコン社のプレスリリースの内容」には正直驚いた。

というのも、坂井のプログラムを受講していたのは300人弱であるが、「すでに900人がプログラムに参加」しているとのことだった。

2022年にメンタートレーニング研修を開発社員に導入、その後、現場の対話を重視する「全員参加型のピープルマネジメント」を実践し、現在までにのべ900人のクリエイターが本取り組みに参加しています。

出典:カプコン、日本の人事部「HRアワード2024」企業人事部門で入賞!

ただ、ここに研修というか、「人材育成・組織マネジメント整備で成果を出す本質」が詰まっていると考えている。

カプコン社では、本プログラムの推進担当者の水戸さんという方が、1年で100回ほど坂井の研修を内部講師として実施してくださっている。

これが重要であり「組織内で理論を元にして、組織課題を解決できる人」がいることが、何よりも重要なのである。

「理論を元にして」というのが肝心なのであるが、現場で組織課題が発生した時に、人事が介入しても、大体の場合は「まぁまぁ定期的に話しましょうか」で終わってしまう。

ただし、組織内にプロフェッショナルがいる場合、仮にマネージャーAとメンバーAの関係性が悪化した時には、「今はこの理論で考えると、こうなっていると考えられますが、どうでしょうか?」で介入することができる。

特に、この時に資料を元にして話を進めていけば、お互いがフラットな状態で「まぁ確かにこういうことが起きているね」となる。※坂井のプログラムの資料も、そのまま組織で使って欲しいと思って作成している。

サーベイとコンテンツの一体化

また、カプコン社の場合は、本記事にもあるように、研修とサーベイの一体化を図ることで、「どこの部署でどういう課題が起きているか」⇒「だから何をした方がいいか」のアクションに繋がるような仕組みを整えている。


サーベイを運用したとしても、読み解いた上でアクションを考えられる人材が社内にいない場合、ただの「医者なし人間ドック」が行われているだけである。もしくは、外部のコンサルタントに「あれもこれもやりましょう」と提案されるが、「提案されるアイディアがふわっとしすぎてよく分からな
い」
という話もよく聞く。

また、様々な理論を理解したとしても、「いつ誰に使うか?」が分からなければ「宝の持ち腐れ」であり、知識も知恵も沈殿してしまう。「サーベイをトリガーとして、アクションにつなげていく」という本質的なことを、しっかりとやりきっている点が、カプコン社の優れた点であると思う。

加えて、この前、水戸さんに聞いた時に「企画とプログラマー組織は、メンター陣が運営してくれてる」とさらっと仰っていたが、じわじわと輪が広がった「草の根活動」になっていることが、「派手さはなくても、地に足ついた組織改革」なのだと感じる。

また、副次的な効果として、自分がレクチャーをすることによって、理解も深まる上、そこで質問が出たところを再度資料に追記していけばいいので、「実践知の循環」が起きることも、また重要である。

組織は小宇宙であるからこそ、まずは出塁する

また、カプコン社の場合は、最初から坂井も300名規模でご支援はしていない。最初は特定の部署で120名規模からはじめており、そこから横展開を行っている。

いきなり全社展開を狙ってしまうと、ステークホルダーが増えすぎるために、それだけ摩擦は大きくなる。「最初からホームランを狙うのではなく、最初は一塁に進むことを考えること」が重要である。

カプコン社の場合でも、最初の部署で検証をしたあとに、次の部署に展開してくださっているが、最初から「全社展開」をしていたら、そもそも出塁できなかったのではないかと思う。

ただし、いわゆる大企業の場合は、そこに「他の部署に展開してくれそうなキーマン(部長層)」を混ぜておくことが重要である。

その人が「あのプログラム良いらしいぞ」と広めてくれれば、段々と横展開ができるためである。

また、カプコン社の場合は人事担当者が推進してくださったが、必ずしも人事から推進する必要はない。

人事の場合、担当者によっては「他の事業部の説得が…」という壁にぶち当たるために、特定の事業部に入れてから、他の部門に展開していくことが重要である。

「私は全社を変えるんだ!」という気概は素晴らしいと感じるが、まずは現実的な突破をしていく方が大事であると、他の企業を見ていても思う。

内部で泥臭くやっている人事の方が評価される世界へ

こういった「面倒くさいけど本質的なことを愚直に実行すること」が、最も大事だと思う。

踏まえて、「SNSで目立っているか否か」よりも、「内部で泥臭くやっている人事の人が評価される世界」になるといいなと坂井は思っている。

現在の立場上、坂井のような外部の人間がピックアップされがちであるが、おそらく次の段階で必要なのは、「内部の人がどう変えていったのか?」という話であろう。

今回のカプコン社の施策においても、坂井が作ったプログラムを執念で内製化しているのは、カプコン社の担当者である水戸さんという方である。

②新入社員の並行参画による「マネジメント民主化モデル」の実施

「弱音を吐くこと」と「余白を示すこと」は違う

以前の記事にも書いたように「中間管理職の過剰負荷問題」が発生している中では、ピープルマネジメントまで一任するのは難しい。

ただ、誤解なきようにしたいが、「マネジメントを民主化・分散する」というのは、「マネジメントの責任を放棄すること」とは違う。

「管理職は罰ゲームなんですよ」と言って、開き直っている管理職を見ると、「そういう背中を見せても、逆にみんながマネージャーになりたくなくなるから、別に合理的な言動ではなくないか」と正直思っている。現象を理解すること自体は大事だが、「弱音を吐くこと」と「余白を示すこと」は違う概念である。

マネジメントにおいて、ワークマネジメント(方針/戦略/計画の”最終決定”)は、マネージャーの仕事である。

この時に、「多様性の暴走」や「悪しき相対主義」を発動し、「みんなの意見」を伺いすぎると前に進まなくなる。「意思決定」を誰かに集中させないと、歪み・遅滞が発生するからである。

ただ、そもそもマネージャーが現場情報を拾ってない or 自己保身で仕事をしている場合、権限集中させると危ないわけであるが、そもそもそういう人を選ばない方がいい。そういう課題を解決するための採用・登用基準のツールは別で作っている。

「マネジメントという肩書」に、役割を詰め込みすぎている


ピープルマネジメント(=組織成員が目標に向かいやすくするためのソフト部分の取り組み)
においては、マネージャーだけが役割・機能を担う必要はない。

「マネジメントという肩書」の中に色んなものが詰め込まれてしまっているために、「マネージャー”だけ”がピープルマネジメントを担う」のようになっているが、実態としても乖離しているはずである。

例えば、どの部署でも、「知らぬ間に新入社員に声がけをしている人」がいるし、「朝会で明るい雰囲気を作ってくれている人」がいる。

「組織は水槽」であるために、ひとりひとりが水槽内を整備する役割を果たす必要がある。みんなグッピーであり、カクレクマノミである。

カプコン社の場合、新入社員に対して、プログラムを内容を変えて提供していたが、「これは自分にもできそうですね」「こういうのって言語化されてるんですね」という感じで理解が深かった。

また、マネージャー向けプログラムにも、新卒2年目の社員の方が入っていたが、毎回のコメントとアクションが立派すぎて、本人がさらっと発言するまで気付かなかった。

そもそも、新卒社員といっても、20数年の中で「組織」というものには向き合ってきている。「人と組織の扱い方」をピープルマネジメントとすると、縁遠いものでもない。

部活やサークルで経験している訳であり、そこで繰り広げられるゴール設定や人間関係は、それなりに複雑である。

むしろ、誤学習の方が起きている方がしんどい

むしろ、坂井としては、本屋にある謎理論系のマネジメント本を手にとって「このマネジメント理論が絶対だ!」と言っている人の方が、「誤学習」が進んでいるために、「まずはバイアスを取らないとまずいな」と思っている。

マネジメントに正解はない。正解と決めつけた範囲があるだけだ。

マネジメント関連の書籍において、過去の書籍を読むのは大切だが、「おいおい、それ何年前の理論なんだよ…」と思うこともある。体育でいえば、「うさぎ跳びが大事」「運動中は水に飲むな」くらいの過去の迷信を信じているケースも見る。

また、「有名企業出身の自称スーパーマネージャー」よりも、マネジメント理論は未学習だけど、「普段から人と集団について素朴に考えている人」の方が変なクセがないし、とんでもなく本質的かつ理論的にも正しいアクションをしていると感じる。

だからこそ、「結局は愛だよね」「結局は人格だよね」などがまかり通ってしまうが、そこまで抽象的だと属人化がかなり進んでしまうので、理論によるローコンテクスト化が必要となる。

組織は川上から腐る

もちろん、「組織の川上が汚れているとすべて台無し」なので、マネージャーが「あとは任せた」「自分は知らん」では困る。

例えば、マネージャーが「は?お前何言ってるかわからないんだけど?」「私はこうやってきたんだけど?」などの発言している場合は論外であり、川上から悪しきマネジメントをどんぶらこっこされたら川下の状況は悲惨である。

ただし、「全員が組織という生態系の一部」という立場に立てば、「自分の職場は自分でより良くするもの」であり、マネージャーとして成果を上げている人はマネージャーになる前から、マネージャーのような振る舞いを勝手に上げていたはずである。なので、マネージャーでなくても「自分を起点に組織を良くすること」は諦めてはいけない。

この世のすべての組織批判はブーメラン

その意味で、組織批判をしている人は、勝手に水槽から出てわめいているだけであり、「この世のすべての組織批判はブーメラン」だと思った方がいいのかもしれない。

「うちの会社は変わらないんで~」「上の考えた古いので~」という事業責任者・人事責任者でろくな人を見たことがない。

そういう責任者が喋っている時に、よくよく他の担当者の顔を見ると、顔が曇っているが、この類の責任者はそれすら気付いていないのだろうと思う。

いわゆる「風通しの悪い会社」を作っているのは自分の何気ない一言なのにも関わらず、その構造に気付いていないのだろう。

下記の図のように、自分も「組織の生態系の一部」であるので、「どうせうちの会社は変わらないので~」と言っている人は、組織の重さに無自覚で加担している。

「うちは大企業病なので~」と他人事のように言っている人は、自分が病の一部であることに気付いていない。自分の「推進力のなさ」と「事なかれ主義的な性格」を棚に上げているだけである。


そうして、その背中を見た人が同じようなセリフを吐く。「変えようと藻掻く」よりも「変わらないと嘆く」方が簡単だからである。

ちょっとづつ変わっている人の姿を、ちょっとづつ良くなっている組織の状態を見ずに、「相変わらず」という言葉を簡単に使う人は、自分と相手に呪いをかけているだけである。

尊大な自尊心と臆病な羞恥心から生まれた「どうせうちの会社は変わらない」は「未来の呪い」に繋がるが、変わらない会社を作っているのは、自分自身であることに気付いた方がいいのだろう。山月記から何を学んだんだろう。

「自己保身」や「どうでもいい理由」でプロジェクトの推進を簡単に諦める人は、将来は「自己保身」や「どうでもいい理由」で人のアイディアを潰す側になる。

かつてなりたくなかったものに、いつの間にか成り下がってしまう。そんな悲劇が組織に諦めの連鎖を生む。

ちなみに、冒頭のカプコン社の水戸さんが組織の不満を言っている姿を見たことがないが、「諦めの連鎖を断ち切ること」がリーダーシップなのではないのだろうか。

「VS構造」ではなく「With構造」で問題を解決しよう

また、マネージャーとメンバーがどちらも理論を理解していることで、「VS構造」ではなく「With構造」で問題を解決できる、という効果もある。

図解すると、共通理論・共通言語がない場合、左のような無駄な思想対立が起きるが、共通理論・共通言語がある場合は、「この理論で考えると、こういうことが起きてたのでは?」でより建設的な議論ができる。

組織課題は「抽象的な感想会」になりやすいために、現象を調理するための理論が必要なのである。

「なぜ組織マネジメント理論を双方が学ぶ必要があるか?」と聞かれたら、「VS構造で話している時間が無駄だから」である。

「無駄な組織忖度タイム」による膨大な機会損失

人材育成・組織マネジメント理論の成果は見えにくいとされるが、冷静に考えて、この無駄な議論によって、どれだけの機会損失が生まれているんだろう?と実体験からも思う。

「この方針に切り替えたいんだけど、その説明に時間がかかっていて…」「この人とこの人の関係性を考えると…」などの無駄な組織忖度タイムによって、平気で3-6ヶ月は方針が歪み、転換が遅れていく。忖度で生まれたポジションと施策は、着実にお金と時間を蝕んでいく。それは自分のお金だとしてもやる施策なのだろうか。

加えて、「あいつ/あの部署には言っても無駄だから」で距離が遠くなると、情報共有が徹底されず、しれっと退職者が出てきて、その補填にまた半年かかってしまう。「組織施策の成果は見えにくい」と言われるが、「組織課題による機会損失」は、いま目の前で発生している。

坂井は前職が「コトに向かう」を掲げていた企業であったので、ことさら「コトにせっかち」なタイプであると思うが、このあたりをメンテナンスしておかないと、「全然前に進まないじゃないか!」となり、その圧によって、さらにみんなが萎縮する。その悪循環が、ダニエルキムの成功循環モデルが警鐘を鳴らしたいことなのだろうと思う。

といっても、「関係の質が大事だから、まずは対話からはじめよう」は大概上手くいかない。ダニエルキムの成功循環モデルはそれらしい示唆を与えてくれるが、しっかりと調理しないとポエム止まりで終わってしまう。

ちゃんと説明すると、下記の流れが起きていることが重要である。

STEP1:共通言語化によって、組織課題を外在化・具象化させる
STEP2:「お前が悪い!」ではなく、「理論で考えると、こうすればいいのでは?」でフェアに解決に向かっていけるようにする
STEP3:「事業に向かえる時間に集中できる仕組み」になっていること

この状態を作るためには、新入社員・メンバー側も理解していることが重要であるが、本記事のコドモン社の工夫のように、直接研修を受けなかったとしても、資料+動画で展開する方法もある。

いずれにせよ、下記のような現象は克服しなければならず、「マネジメント民主化モデル」が大切であると考えている。※マネジメント民主化モデルはこちらのUniposさんの記事が凄い図解してくださった。

③「成果が出るか」ではなく「成果が出るまでやる」

上手く事業部や決裁者を巻き込めませんでした⇒本当?

基本的に人事・組織施策の推進は、費用対効果の説明難易度が高い案件である。

ゆえに、担当者や現場のニーズが高くても、決裁者に理解してもらうことのハードルは高い。

この時に、「上手く事業部や決裁者を巻き込めませんでした」と言って、ドアを1回ノックしたくらいで帰ってしまう場合もあるが、ガッツ系営業会社で3年間くらいインターンシップした方がいいと思う。

そして、カプコン社の水戸さんは「簡単に諦めてしまう人」ではなかった。

元々、様々な人事施策を試行錯誤してきた中で「まーた、人事がよく分からない研修を提案してきたぞ」という空気感があったようであり、坂井も初期の初期は現場のマネージャー陣の方々にプログラムの説明をしていて、そういう雰囲気を感じていた。

ただ、結局は導入できていたので、「どう説明したのか?」を後で聞いてみたら、「成果が出るまで自分が責任を持ってやります」という一言を水戸さんがちゃんと伝えた、という話であった。

坂井はこの話を聞いて、「めちゃくちゃ仕事の本質だな…」と思っていた。

「リスクを取れという割にリスクを取らない人」になってはいけない

坂井の前職はロジカルカンパニーであったが、結局、新しい施策はケチをつけようと思えば、ケチをつけられてしまう。

どれだけロジカルに説明しても、「多角的視点を持っている風の人」が放つコメントひとつで遅々として進まないような場面を見てきた。「そもそも」「とはいえ」のあとに続く言葉が、全体影響度は極めて少ないどうでもいい論点のこともある。

※自分も昔はそうだったし、今も自分にその性質は残っているかもしれないが、「周りにバカと思われたくない」「ボロを出した発言したくない」という自己保身的な人の密度が高い会議は何も進まない。

「リスクを取れという割にリスクを取らない人」になってはいけない。

そういった環境だと「真理に至ろうとする人」よりも「説明が上手い人」が重宝されるようになり、組織の熱量も奪われていく。

水戸さんに内部の導入提案資料を見せてもらっていたが、現状分析⇒打ち手の部分について、ロジカルな整理をされていた。それは前提である。

ただし、「人事施策に対する感情的な懐疑」は誰の心にもあるわけで、それを打ち砕くのは「感情の一押し」である。

そこに対して、「自分が成果出すまでやるんで」と言いつつ、ちゃんとやりきっているのが、水戸さんの素晴らしいと思う。

やるべきことを見極めた上で、恥と汗をかいて物事を進めること

最近、「組織の強靭さ」とは何かを考えていたが、結局は「やるべきことを見極めた上で、恥と汗をかいて物事を進めること」が大事なのだろうと思う。

逆に言えば、「やるべきことを知っているのに、恥と汗をかける範囲が極めて狭いスマート風な組織は、結局あんまり成果出してないな」と思うようになっている。こういった組織では、自分都合の制約条件が発生しているので、行動が鈍くなり、打ち手も少なくなってしまう。

近年、「叱った方が良い論」も出てきており、それは神経科学的には違うわなと思っているが、その論調の中にあると思われる「恥と汗をかいて進める範囲の重要性」については同意である。

「変なクセ」がつく会社には入らない方がいい

余談であるが、この前「大手企業 vs. ベンチャー企業のどちらに入る?」というテーマでの動画収録があった。

「この二元論は、正直エンタメだし、どっちでもいいかもな」と思いつつも、ひとつだけ思っていたことは、「変なクセ」がつく会社に入らない方がいい、ということだ。逆をいえば、「真っ当な背中」を見せてくれる会社に入った方がいい。と個人的には思っている

真っ当な背中とは、「事業や顧客のためにやった方がいいことは、愚直に真面目にやりきる背中」である。

逆にいえば、「自己保身で仕事をする」「顧客価値を考えず、内向きの評価ばかり気にする」「程よく手を抜くことに慣れている」ような企業、一言で言えば、「事業/顧客価値」よりも「自分のキャリア」を優先させる先輩が多い組織に入ることは微妙だと思っている。

一見凄そうな会社でも、「この会社出身の人に仕事を依頼すると、”こなし仕事”で返ってくるな…」という経験を味わったことがある人もいると思う。

ワークライフバランスは大事だが、「こなし仕事に慣れること」「顧客価値より市場価値を考えること」が初期フェーズで血肉化されてしまうことは、危険なのではと思う。

そういう会社に入ると、「変なクセ」がつくので、個人的にはあんまりおすすめしない。

「成長したいです!」という意欲は大切だが、「異常や不誠実への適応」を成長と錯覚してしまうこともあるので注意である。

「頑張ってくださっていた担当者の成功」が大切である

その点、坂井に伝えていない部分でも、水戸さんは泥臭く推進・実行してくださり、心から感謝をしている。

そして、導入が進んだ結果、元々懐疑的(?)であった部長の方が、受講後に逆に好意的になってくれて、別部署での展開が進んだ時は、坂井としてもと
ても嬉しかった。「頑張ってくださっていた担当者の成功」が一番うれしいかもしれない。現に今プロダクト開発をする中でも、あのお世話になった人たちに喜んでもらえるものを作ろう、と思うと、やる気が漲ってくる。

「未来への責任」を果たす

最後に「なんでこんなに泥臭くやりきってくださったのだろう?」と疑問に思い、水戸さんに聞いたら「10年後くらいに感謝されればいいから」と仰っていた。

人事・組織施策は簡単には説明ができない。ただ、自分の怠惰や無策によって、「10年後の社員が挑戦しにくい環境」を作ってしまう、そういった事態を避けなければならない。

「今の世代がよければよし」の政治を批判する一方で、会社では同じようなことをしている社会人が日本には5000万人くらいいるのかもしれない。

実際、様々な会社の人事責任者・担当者と話していても、「そもそも、この人は組織がどうなろうがどっちでもよくて、自分の立場が守れて、何かをしたというアリバイが作れればいいと思っているんだろうな」という空気感は正直分かるものである。たぶん、坂井が感じ取っているということは、現場の社員も「この人事は、自己保身以外は興味なさそうだな」「やりやすくて説明しやすい仕事しかしないんだろうな」が分かっているんだと思う。

そういったことも踏まえ、「未来への責任」を果たそうと泥臭くやっている人が評価される世の中であって欲しい、と『プロジェクトX』世代の坂井は強く思っている。

💡カプコン社から学べる5つのポイント

①研修を受けたら、内部講師で運営してみること
②サーベイとコンテンツを一体化して、アクションを明確化すること
③トラブルが起きたら、理論が書かれた研修資料を元に話してみること
④新入社員にも理論・手法を展開することで、建設的に解決できる体制にすること
⑤「今の面倒さ」よりも「未来への責任」を果たすために動くこと

補足:カプコン社の取り組みは下記に簡潔にまとまっています!
※そして、明日の8月5日(月)の17時に投票締め切りということだったのですが、カプコンの取り組みがいいなと思った方は、ぜひご投票をお願いします!

また、今回長すぎて書けなかったので、別記事に切り出すことにしたが、下記のコドモン社・理学ボディ社の記事は、「具体的な仕組み化のHow」まで書かれていて、とても参考になります。あと、Cloudbase社、bagie社も素晴らしいです。(どこかでまとめます)


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