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今年の読書の秋は、「朝ベラ」で。
9月に入って間もない朝、ベランダに出てみたら「秋」でした。
ジリジリの太陽からポカポカの太陽に変わり、背筋がしゃんとする少しひんやりした空気。すきっとした青い空。
うん、やっぱりそうだ。これはきっと、秋!
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暑くもなく寒くもない気持ちのよい朝の空気をあじわえるのは秋の特権。
春の朝は意外と寒く、夏は朝から30度超えの暑さ。冬になればそもそも布団から出られなくなってしまう。
そんな秋の限られた時間を思うと、なんだか家の中にいるのがもったいなく感じてきて…、
よし、今日の朝はベランダで過ごしてみよう!
と思い立ったのである。
そして、秋と言えば「読書の秋」。
ということで今回の朝の工夫は、今の時期がまさに最適な「ベランダで読書をする」です。
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***
ベランダ読書についてきた「偶然の産物」
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本だけでもよかったけれど、せっかくなら、と軽めの朝ごはんも用意して、スツールを机代わりにしてみた。道具でもなんでも普段とは違う使い方をすると、もうそれだけで無性にワクワクする。まだ朝のベランダ読書は始まっていないのに、すでに浮かれてしまっている。
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秋の朝日と風を浴びると気持ちがよくて、読書が進む進む。
ベランダで読書をしていると、外の気持ちいい空気のほかに、ちょっと嬉しい「偶然の産物」がついてきた。
リンリンリーンとどこかの家から聞こえる風鈴の音。これは思わぬやさしいBGMだった。
しばらくすると、タッタッタッタッと家の前の道をスニーカーで走る音が聞こえてきた。なんだなんだと立ち上がって見てみると、中学校のジャージを着た男の子がカバンを背負って走っていた。
そうか、夏休みが明けて学校が始まったのか。
今日は月曜日だし寝坊でもしたのだろうか。
すると今度は「おーーーし!」というおじいさんらしき人の声が聞こえた。わたしがいる場所からは姿は見えないけれど、自分に気合を入れているのかもしれない。
月曜日の朝は気合が必要だ。
そんなことを勝手に想像していると、自転車が走る音と小さな女の子のかわいい歌声が聞こえてきた。
あまりにもかわいかったからベランダの柵から顔を出してみると、女性が自転車に女の子を乗せて颯爽と通り過ぎて行った。
親子かなあ。これから幼稚園やら保育園やらに行くのかな。
ベランダ読書をしていると、そんな思いもよらない暮らしの音が聞こえてくる。
飛行機が飛んでいる音。鳥の鳴き声。近くの学校のグラウンドから聞こえる生徒のかけ声。窓をガラガラと開ける音。玄関の鍵を閉める音。誰かのくしゃみ。誰かの足音。
わたしは室内で読書をしているとき、テレビやラジオの音が聞こえてくると本に集中できなくなるけれど、自然の音や誰かの生活が感じられる音は読書の妨げになるどころか、むしろ心地よかった。
テレビやラジオが「本の内容に重なってくる音」だとしたら、外から聞こえてくる音は「本の内容の後ろで流れる音」のような気がした。
今、「朝」を過ごしているのはわたしだけじゃなくて、みんなが同じ「朝」という時間を過ごしている。
きっと、いろんな気持ちを抱えながら同じ時間を過ごしている。
ベランダで読書をしていたらそんな当たり前のことに改めて気づいて、不思議な心強さを感じた。
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本は40ページほどすいすい進み、ブルーベリーは完食。コーヒーは残りわずかで、ハーベストは残り1枚。いつまでもここにいられそうなほど心地よかった。
***
「家の中」と「家の外」の中間であるベランダの魅力
朝のベランダ読書は、空気が気持ちよく、何気ない暮らしの音も楽しめた。ただこれは、ベランダに限らず、公園などの家の外であれば同じ感覚を得られるのではないか。
わたしはそう思っていた。
が、実際にはそう単純なものではなかった。
この日、わたしは駅で電車を待つ間、秋の日が差すホームのベンチで本を読んでみたのだ。
「外でする読書は気持ちがいいんだよね~」と思いきや、あら?なにか物足りない。
広々としていて、風も感じられてたしかに気持ちはいい。
でも、ベランダにいるときに比べると感動は小さかった。
きっと、「完全な外」は外の空気を感じるのが当たり前なため、その気持ちの良い風に特別感を感じにくいのだろう。
一方、ベランダは外とはいえ、家の一部なので、「家にいるのに気持ちいい風が吹いている!」という特別感とお得感が感じられる。
だから、あんなにも心がときめいたのかもしれない。
そう!
「家の中」と「家の外」の中間のような空間であるベランダでしか得られない喜びが、そこにはあるのだ。
次のベランダ読書では、どんな「偶然の産物」に出逢えるだろうか。
いつのまにか天気予報の晴れマークに、いつもより心を踊らせている自分に気づく。
寒い冬の朝がやってくる前に、本をお供に秋の朝をたくさん感じておきたい。
どうかみなさんも、今年の読書の秋は、朝のベランダで。