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囀る鳥は羽ばたかない 第53話【大きく動き出す】

【2023年08月03日】

囀る鳥は羽ばたかない」53話の私的ネタバレ覚書。

52話を読んでから2か月、
なんとなくずっとふわふわしていました。
51話でようやくわかり合えて、心が近付いてキスして、矢代も受け入れてしがみついて、わあああやったーついに!
とか思っていたらアレ。
わかり合えてもいなかったとは。

ふわふわしているのは私の期待が大きすぎたせいです。
(「思てたんと違う」©笑い飯 を便利に使い過ぎる私)

「性欲処理」「こいつには女が」「今も複数の男たちに」
「嫌われてる」「自分を曲げてでも」

数々のフィルターがふたりの冷静さ・観察力・洞察力を鈍らせる。

七原からの電話で「仕事」に引き戻されるふたり。
ふたり時間差で、熱の残る百目鬼の部屋を後にする。

※毎度の注意事項:
 以下がっつりネタバレ含みます。
 登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
 あくまで個人の感想・妄想です。

******

本当に望んでいたものは…

******

47話のあおり文
「欲しいものは 何なのか――」
から、ついにここまで来ましたよ。

今回いつも以上に長くなったため、本編のネタバレ感想と細かいところを深堀する感想を分けました。


一足先に部屋を出た百目鬼は車内で連に連絡。
矢代についてくぎを刺され、「今はただの客人です」と答えて電話を切り、
「よく言うな」
と独り言ちる。
ひとりごとすら珍しい。
よく言うな。つまりただの客人なんて思ってない。そらそうよね。
その時に思い浮かべたシーンは
矢代に「深い」と言わせたイく直前の屈曲位。
なるほど~。百目鬼ったらホント…

そして久々、百目鬼の回想シーン!

荒い攻めで気を失った矢代を見つめる。
描写はないけどおそらく体は拭いてあげたんだろうな。
腰まで布団をかけ、うつぶせで眠る矢代が美しい。
見つめる百目鬼の表情は毎度のことながら読みにくいけど、冷たくも険しくもなく苦しげでもなく、当然だけど嫌悪のひとかけらもない。
ただ見つめてる。眠る矢代を。
そこに4年前なら詩的な美しいモノローグがかぶるんだけどな、とは思ってもうるさくクレクレまでは思わなくなってしまった。慣らされる私。
見つめる百目鬼の顔も美しいんだ。

矢代の携帯が鳴る。
画面を確認し、おもむろに電話に出る。
七原とのやり取りは超事務的で、ごくごく最低限の言葉で淡々と進めていく。
苛々する七原が七原で安心するw

山川のこと、場所、向かう旨を伝え合った後、
百目鬼が七原にたずねる。

矢代さんはどこか悪いんですか

七原は一瞬黙り込み、「なんでだよ」と問い返す。
冒頭で観察力等を鈍らせてる、と綴ったけど私が甘かった。
百目鬼の矢代に関する観察力、まったく鈍ってなかったよ。
しっかり見てた。綱川邸の風呂場でよろけた矢代、鍵穴にうまく鍵を差し込めない矢代。きっとほかにも。
七原はお前に言うわけないだろ、的な物言いでにごしたけど、それはつまり「そうだよよく気付いたな」と同義語。なにもないなら即答で否定できたはず。
おそらくその隠された答えに百目鬼は気づいた。

助手席に矢代が乗り込んでくる。
自分から助手席を選んだのね。てことは45話でもそうだったのかな。
後部座席じゃなくて隣。
矢代は髪を下ろしたまま。整髪料がないと上がらないよねさらっさらだし。
その髪型に百目鬼が難色を示し、

俺以外の前ではやめた方がいい

タメ口で咎める。タメ口で!俺以外にその姿を見せるなと!
その意味がわからない矢代は百目鬼の抗議を流し、
百目鬼に軽い口調で聞く。

井波以外の奴とヤんのも怒んのな

また塩回答で売り言葉買い言葉になるのはもうイヤー!、と思っていたけど百目鬼の答えは

怒りますね

なんで?と聞く矢代に
腹が立つのに理由がいるのかと答える。
独占欲隠すつもりならもうちょい言葉選んでよとは思うけど。

いるだろふつー、とつぶやきながら矢代はその後黙り込み
そっか
本当にコイツは俺に腹が立ってんだ

と言葉通り受け止めて納得してしまう。

だから
あの時みたいには
抱かないんだな


あの時とは。
4年前のあの時。
俺しかいらなくなるように
俺しか欲しくなくなるように

と「呪い」をかけられたあの時。

矢代はあの時のように百目鬼に抱かれたい。
繰り返します。あの時のように抱かれたい。
矢代がセックスのことを
やる、でも寝るでもなく、ぶち込まれるでも掘らせるでもなく
「抱く」という表現を使ったのはこれが初めて。
どうでもいい男との行為では使わないし、考えたこともなかっただろう。
ということは、矢代が百目鬼にかけられた「呪い」と思っているものは、それ以前の義父から与えられたトラウマから救い出した破邪の呪文
まともな恋愛なんてできるわけがない、と思い込まされていた矢代がまともな恋愛をしたいと思い、セックスを「抱かれる」と認識しなおした。
もちろんそれも百目鬼に対してのみで。

百目鬼には前みたいに「抱いてほしい」し、女もいるし自分を嫌いな百目鬼はもう俺を優しく「抱かない」んだろうと思いこむ。

呪いにかかったままの俺は
昔のお前ばっか探してる


嫌われても、女がいても、ひどい扱いを受けても。

かわいい百目鬼。
嘘の下手な百目鬼。
いつも付き従い、そばを離れないと言った百目鬼。
見た目も中身も全部綺麗だと言い、優しく矢代を抱いた百目鬼。

ことあるごとに「昔は」「昔のお前なら」を繰り返す。
自分で捨てておきながら、4年間ずっとあの頃の百目鬼に縛られ続けてた。
車の窓を開け、紫煙を吐き、下ろした髪をなびかせる矢代。
寝てる矢代、前髪を凝視する百目鬼に気付く矢代、すべてがなぜか泣きたくなるくらいに綺麗で儚い。

七原と合流し、百目鬼は七原にこれ以上ないくらい小さくておざなりな会釈をし、
3人は山川が潜伏しているビルの向かいのビルのカフェに。
状況判断もそこそこにひとりで乗り込もうとする百目鬼を止めてわーわーやっているときに、49話で登場した甲斐がやってきて向かいのビルに入っていく。
甲斐を知らない3人。
七原が甲斐の写真を撮り、矢代と百目鬼にも渡す。
このとき、百目鬼の携帯番号が4年前と同じであることがさらっと明かされる。

矢代が「ちょっとションベン」と言って席を立つ。
便所やらションベンと言って席を立つときは誰かとコンタクトを取る時。
トイレで矢代は井波に電話し、送った写真が誰か調べるように指示し、井波は調べてやるから取りに来いという。
矢代はしばらく黙り込んだのち、行く、と言いかけた時
スマホを百目鬼に奪われる。

俺が行く

なぜか満面の笑みで喜ぶ井波。ホントにどうして。
お前じゃ会っても旨味がないと言う井波に俺にはある、と返すと井波は

いい動画があるんだ
鑑賞会しようじゃねえか


隠し撮りしていた動画。
…どう考えてもハメ撮り。
矢代を脅すためにと撮ったけど矢代には脅しにならない。
それを百目鬼に見せる?…なぜ?

百目鬼も了承し、スマホを矢代に返し(矢代の手を両手で包んでスマホを渡す百目鬼の触るチャンスは逃さない感)、ひとり出掛ける。

プンスカしながら矢代は七原の元に戻る。
百目鬼の文句を言う矢代に七原も同調するけど、矢代の体の異変に気付いたことが以前の、矢代を慕っていた百目鬼を彷彿とさせてちょっと安心していた七原はヤブヘビ的な矢代の怒りを買うw

給仕していた店員がそんなふたりの様子をうかがっている。
左耳にピアスの怪しい男。
給仕。そう、ふたりは食事をし始めたのです。
矢代の食事シーンも激レア!!スパゲティ食べてるよ矢代が;;
七原はカレー食べてるけど、結局七原もステーキ食べなかったのかしら。

食べながら、百目鬼は変わってないのかも、と七原が言うと
どこがだよ刺青まで入れやがって

・百目鬼の背中を見た
・寝起きかシャワー浴びた後のような髪型
まあ七原も察しますよね……

場面変わって
三和会系の会合かな?終わって出てきた綱川に連が、百目鬼から送られてきた甲斐の写真を見せる。

やはりそうか

甲斐とは過去に何かあったらしい。
不穏な気配。

******

大きく大きく動いた。
百目鬼の独り言と回想。
はっきり言葉にし行動に移した百目鬼の嫉妬。
矢代の百目鬼への、深い恋情。
百目鬼と井波の接触。
山川とその周辺。

冒頭の百目鬼の噓、独り言、そして回想。
今まで諸々耐え抜いた私へのご褒美第一弾ですか
(前のめり)(もっと貰う気)

怒りと嫉妬と誘惑に翻弄されながらの不本意なセックスだっただろうけど
事後の百目鬼が自分を偽り切れなくなっているのがとてもいいです。
前回の「わりと離れて立っていたのに矢代がよろめいた瞬間そばに来て身体を支える」から始まり
嫉妬を隠さない言葉(しかもタメ口だったり)
矢代の「席を外して誰かと連絡とる」サインを察知して後を追い電話の相手が井波とわかればスマホを奪いふたりの密会を阻止。
もう、もう待ってた!!
そういう百目鬼を待ってたの!!!

ありがとう本当にありがとう

一方で矢代はまだうつむいたまま。
あんなにわかりやすい百目鬼の変化と感情を出し始めた言葉に気付けない。
もともとそういう感情には疎い人だし(竜崎かわいそう)(でもしょうがないね竜崎だもんね)好意に気付けば吐き気を催して排除してきたし。
でもこちらももうちょいのような気配も…しないでもないような…

お仕事パートも動き出したけど、
思ったより展開が早くてドキドキします。
不穏な新キャラ、再登場のイカゴク、そのイカゴクを知っている綱川。

そしてついに井波と百目鬼が対決!?

******

さて
話が大きく動いた上に
数々の答え合わせも行われはじめた53話。

正座が中腰になるくらい興奮して読み進めたけど
怒涛の展開に
物語の「終わり」がついに近づいてきたんだな、と思ったりしました。

サイン会でヨネダ先生がおっしゃられていた「物語は今、マラソンで言ったら30km台後半」(情報を共有してくださった方々に感謝)がずっと頭の中にあって。
矢代と百目鬼、進行中のストーリー、何巻も前から散りばめられた数々の伏線、
それらを進めたり回収したりしつつ終わりに向かっているのが今回感じられて心がざわざわしています。

次号予告に名前もあったしあと2か月弱で続きが読める!
最後まで全力でのめり込んで楽しむ所存です。

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