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囀る鳥は羽ばたかない 第55話【ついに知る

【2023年12月07日】

「囀る鳥は羽ばたかない」55話の私的ネタバレ覚書。

4年後の矢代と百目鬼。

ずっと矢代メインで話が進み、
矢代の偽りない心情、仕事や身体の現状が
綴られてきたわけだけど

前回からその流れがついに百目鬼に!
待ってた!!
いや、矢代のターンはもういいとか思ってたわけではないですよ。
念のため。
矢代の本音を聞かせてもらえて僥倖です。
ただ、百目鬼強火担としては
4年後の百目鬼の心情がまったく描かれず、
ここまでホントにつらかったんです。

4年前から矢代は変わっていないと思い込み
塩で固めた態度で酷い扱いと物言いをしてきた百目鬼が
解説者・井波によって矢代の今を知る。
どうする百目鬼。

※毎度の注意事項:
 以下がっつりネタバレ含みます。
 登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
 あくまで個人の感想・妄想です。


******

目の前の矢代と
自分の知らない矢代
百目鬼の心は……

******

扉絵は着崩したラフ百目鬼。
百目鬼のこういう姿、レアよね。
素敵(声に出す初見の感想)

百目鬼の古い情報「知ってますよ あなたのことは」
ついにアップデート。

「勃たない」「使い物にならない」と言う井波を軽く殴って
「アンタが下手なんだろ」と無自覚マウント。
そりゃそうよね、自分が見てる矢代は勃ちまくり感じまくりイきまくりですもの。
それに対して即「んなわけねーだろ」と返す井波の天井知らずの自信過剰っぷり。
アレでしょ、プロのおねいちゃんに「すごぉい」とか言われて真に受けてるんでしょ。

さらに井波の矢代情報補足。

誰とやっても勃たねえんだ

それはどうして知っているのか。
矢代がそう言ったのか。
矢代が言うかな?と考えたけど
井波は矢代がEDであることを唯一知る人間だし、自虐的に言ったかも。
あるいは…自分だけに反応しないとは思いたくないとか?
俺でダメなら、誰とやっても、と思ってるとか。フッ

※前任の刑事と一緒にとかそういうのが好きなお仲間と複数でヤッてとか推測してる人もいるけど私はそれはないと思ってます。
なんていうか、井波みたいな男はそういうことを人と共有しないんじゃないかなと。自分だけの秘密の愉しみみたいな感じで。

さらっと言ったこの補足情報が百目鬼には大き過ぎる衝撃。
井波は冗談じゃなく、本当に矢代がEDだと言う。
でも自分が触れたときは――
何も言わない百目鬼の表情が雄弁。

まさかお前ん時は違うのか?

固まる百目鬼にダメ押しの問いかけ。
なんかもう百目鬼に対してはまるでキューピッドのようだよ。

俺が何をしても反応しない。
なのにこいつには。まさかそんな。
「笑えるな」と矢代みたいなこと言ってるけど、
これ井波相当ショックだったのでは。
百目鬼の動揺っぷりで
百目鬼が目の前で矢代をさらった後、矢代は百目鬼とヤッて(ヤッてないけど)勃起したとわかってしまった。
その後自分のところに来たのは、百目鬼では満足できなかったから、と思っていたけど
百目鬼で勃ったことで、EDが治ったのかそれともと試しに来た。そして井波では「やっぱり」勃たなかった。屈辱。
井波ってあんなんだけど、そういうところわりと気付くんですよね。
あっれーマジで俺にだけ勃たない?俺のが物足りない?俺って下手!?とは決して考えなさそうだけど(物足りないだろうし下手は下手だと思う)
いろいろ察しての「笑えるな」だったのかも。

その後、井波は百目鬼に
実に素直に甲斐情報を教えて差し上げる。
百目鬼が尋ねてもいない奥山情報まで。

アンタは 気持ち悪いな

いやまあ気持ち悪いけども。
百目鬼ってホント、井波に対しては言いたい放題。

殴り飛ばされ、スマホを破壊した男に甲斐の情報を詳しく語る。
組長の情報まで調べ、提供してくる。
見た目はアレだし変態だし犯罪者気質だし下手だけど
情報提供者としてはかなり優秀、伊達に組対の刑事やってない。
矢代が情報収集のためにつるんでいる理由も理解できでしまう。
それでも井波をもう二度と矢代には会わせたくない。
…そんな、感情の外側でぐねぐねうねる思いがどストレートに言葉になった感じかなと思ったけどはたして。
これ何度も読み返したり、今後の展開次第でもまたとらえ方が変わりそう。
でもまあいろいろ気持ち悪いよね。わかる。
それを誉め言葉ととらえるところもね。

車内の運転席は百目鬼の考察スペース。
井波が語る矢代。
自分が見た矢代。
あまりにも違い過ぎるのはなぜか――
百目鬼の目に光が灯る。

ここの流れが6巻終わりの「飛ぶ鳥は言葉を持たない」の百目鬼とそっくりで
これまでの矢代の記憶を並べて考えて考えて、なにかしらの答えが出た時の表情なんですよね。
「はっ つまり俺は上手い…!?」キラーン
ではないと思うけど、いやなんか相当上手そうではあるんだけど。
何かに気付いた描写。

場面変わって甲斐パート。
矢代(と七原)の身バレしてるー!
百目鬼が同席してたこともバレてるー!
ここで甲斐、そして綱川の過去が。
ざっくりまとめると、

綱川の名前は玲司です。
甲斐の左目の傷も、左手の小指も、若綱川がやりました。
でも悪いのは甲斐です。
甲斐の面倒を見ている奥山が冷静にとりなそうとしていますがその冷静さが怖いです。

って感じでしょうか!
(桜一家サイドへの興味の無さ)
その奥山が、井波情報によると最近姿を見せない。

百目鬼が綱川邸に戻り、報告。
綱川から奥山を探ること、元共生会の残党を探し出すこと、そして
矢代に手を引かせることを命じられる。
矢代にはもう見張りもいらない、三角(呼び捨て)にも話をつけると。

車に戻った百目鬼は、井波から渡されたSDカードを見つめる。
眉間に滲む、苦悶の表情。

その後、百目鬼は矢代の部屋に。
夜中にいきなり訪ねても奥に通す。
玄関先で話を済ませたりしないんですね。
超不機嫌な顔の矢代は寝ていたのか、上半身裸に黒スウェット。
なにも羽織ることなくそのまま迎え入れる。
矢代はソファに座り、その正面に百目鬼が立ち、綱川からの伝言と報告を伝える。
矢代たちが身バレしたことを聞いて驚く百目鬼。
矢代は自分たちと百目鬼・桜一家とのつながりはまだ気づかれていないと踏んでいる。
矢代にしては珍しい読み間違い。

手を引いて静観しとけってことか
そうです
俺の監視もお役御免か
そうなります
話はそれだけか
それだけです
じゃあもう行けよ
失礼します

淡々とした会話。
部屋を出ていく百目鬼。
固定カメラで長回しの映画のようなコマ割り。

ひとりソファで煙草を取り出す。いつものガラムではない?
うつろな目で、うつむきながら煙草をくわえる。
口元がアップになっていく。
百目鬼とキスした唇。

黒手袋がその煙草をそっと奪う。
部屋を出たはずの百目鬼が戻ってきて、顔を矢代に近づける。

…返せよ

嫌です


******

井波が百目鬼に矢代の現状を告げた前回。
今回はさらに詳しく掘り下げました!

自分以外の人間では反応しない。
自分が触れたときは激しく反応する。
その意味。

矢代と出会ったころ、百目鬼がEDだった。
でも矢代に出逢い、矢代を愛し、矢代を欲したことで治った。
父親と対比して自虐する百目鬼に矢代は
「おまえは綺麗だからインポになった」
と言った。
綺麗だから、父親の汚い姿に衝撃を受けEDになったと。
それを矢代は自分が汚してしまったから、と言ったけれどそうじゃない。
汚されてなんかいない、むしろ。

矢代はずっと汚れた、歪んだ性行為しかしてこなかった。
レイプが入り口だったから。
惚れた相手と、優しくて普通のセックスをしたことがなかった。
百目鬼はきっと、優しくて普通のセックスをするだろう。
未知の領域。足を踏み入れるのが怖かった。
そして抱かれたら、優しいセックスに、思いの外身体が反応した。
痛みがなければ、酷く扱われなければ感じないと思っていたのに。
私はこれまで、このとき矢代の鎧が壊された、みたいなこと言ってきたけど
壊された上に、なんていうか…高圧洗浄機で一気に何もかも洗い流された感じ
心を守るために作り上げた鎧を壊され外され、義父をはじめとした大勢の男たちに汚された心と身体を洗い飛ばされたというか。
汚れが落ちて綺麗になった矢代はもう、これまでの汚れた行為ができなくなった。
矢代が47話でつぶやいていた「因果応報」ってこれにもつながるかな。
勃たなかった百目鬼を勃たせた
→綺麗だった百目鬼を汚した
だから罰として自分がEDになった。
自分が綺麗になったから、とは思ってなさそうだけれど。

百目鬼はEDになった身体が矢代を欲して復活した。
では矢代は?
百目鬼以外には無反応、でも百目鬼にはあんなにも反応する。
なぜなら?
そもそもどうして矢代は勃たなくなった?
――百目鬼は答えにたどり着けただろうか。
たどり着いたとき、それまでの己の言動を顧みて、自分が良かれと思って敢えてした酷い言動で矢代を深く傷つけたことに気が付いただろうか。

だとしても、変な方向に落ち込んで矢代の前から姿消して旅に出たりしないでね、という不安もあったけど
ラストでわたくし激しく心が前のめり。

「それだけか」「それだけです」のやりとりは
45話の車内での会話を連想させる。
あの時、ホントに?と念を押した矢代に対して
塩対応を頑張っていた百目鬼がホントにそれだけですけど?みたいな返しだったので
今回矢代は念も押さない。
それだけ、と言ったらホントにそれだけなんだろうなと会話を切り上げる。
でももしかしたら、という淡い期待もドアが閉まる音で断ち切られる。
ひとりになり、視線を落とし、煙草をくわえる。

で、あのラスト!!(腹から大声

毎回毎回甘々な次号展開を妄想しては思てたんと違う展開にきりもみ状態になるわけですがどうなるんでしょう!!
もうすでに甘々妄想で頭いっぱいですけど!

******

その他諸々。

〇お仕事関係
甲斐が首謀者っぽいことが判明したので、桜一家的にはもう身内のいざこざメインにシフト。山川や金のことも含めて。
だから矢代には手を引いてもらう。見張りももういらない。
と、綱川は言うけど、身バレしてるからね矢代たち。で、桜一家と関係してることもバレてる。
てことは矢代も当然危険なわけで、もうがっつり巻き込まれちゃってるし、見張り兼護衛続行でいいと思いますよ綱川組長。重戦車専属で。

で、このときさらっと「三角(呼び捨て)には俺から言っとく」って言ってたけど、
話の流れで三角さんに百目鬼のこともペラっちゃったりしないよね?
天羽さんに口止めされてたよね?ね!?

〇若綱川
若いころから右耳ピアスだった。
カフェの怪しい店員と左右分けてる説は無しか~(まだ言う

○井波の情報(矢代依頼のほう)
今回矢代を阻止して百目鬼が情報を聞きに行ったわけだけど
対価の支払いってどうなったんだろう。
矢代には「金と身体持ってこい」とか言ってたから会ってその都度支払ってた感じかなと思ってたけど。
「百目鬼と会っておしゃべりすること」が対価?
殴られてスマホ壊されて気持ち悪い言われてもおつり来ちゃったりする!?

○対価と言えば
矢代は井波に、情報提供の見返りに金と身体を使っていたけど
三角には「体はもうない」と言っていた。
つまり井波との行為は矢代にとって「セックス」ではないということ。
拘束されてむりくり突っ込まれてるだけ。
(井波が愛撫するとは思えない)
そもそも矢代は井波に何されても痛みしか感じないしね。
井波を使って体罰を食らってるという認識しかないのかも。
井波は自分のテクに矢代が溺れてるとか思ってそうだけど。
(今回その自信もばっきり折られたけど)
感じないっつってんのに。誰か井波のなめこをつぶしてくれ。

快楽はないからといってがっつり身体使わせてるのに「体はない」と言えちゃう矢代が哀しい。

○あの後矢代は
井波と連絡とったのかな。
「あいつに余計なこと言ってないだろうな」とか。
あ、井波のスマホ壊されてたわ。
井波が公衆電話とかで「あのガキにスマホ壊された、弁償しろ」とか
「これから来てヤらせろ(百目鬼相手には勃ったらしいじゃねえかこのやろう)」とか言いやがったら私がそのなめこ踏みつぶす。

○それより気になったこと
顔見られて襲われて暴力沙汰にもなった後の矢代をひとりにしておく七原ってどうなの!?
たとえ矢代が大丈夫だから帰れと言ったとしたって傍にいるべきなんじゃないの。
そういうとこだぞ(毎度の定型文)
せめてマンションの傍に車止めて監視とか。それもしてないだろうし!
(してたらごめんね七原)

まあ…部屋にいなくてよかったけども。

〇アレの表現
今回、「ED」と表記してみました。
47話で矢代が「何も感じない体になった」と言っていたし、
ED=勃起障害 とは違うかもしれないですけど。この辺詳しくない私。
「インポ」は本編の表記がそれなら使用する(セリフとか)、ていう感じ。
「勃起障害」と迷ったんですけど、字面が妙に強く感じたので「ED」で。
(次回からまた変わるかもですが、とりあえず今回はこれで)

〇矢代のあれこれを思い出し、何かに気付いて決意する。
「飛ぶ鳥は―」のこのシーンってその後なんの説明も回想もなくて
百目鬼が「何に気付いて」「どう決意したのか」はっきりとはまだ明かされてないんですよね。
今のところ、読者のそれぞれが様々な考察・深読みをしている。

私もあれこれ深読みしてるけど
今現在での深読みをちゃんとまとめたいな。自分の覚書として。
(話が進むたびいろいろ変化したりしているのでとりあえずここまででの深読み)
言うだけ番長、自分を追い込む感じで。

******

過去と現在がリンクする。
どうか、どうかふたりが歩み寄りますように。
いきなりふたりとも素直になって、
とろとろに甘い展開になっても大歓迎派です。
「そんなの囀るじゃない」とか全然思わない。
(少数派の自覚はあります)

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