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太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第28話 俺は欠損金症候群ではない

「あえて超ノンデリにいわせてもらえればさあ~」
「はい」
「男だったら男という同じ性別には負けてはならないみたいな使命感が勝手に働くんでしょ」
「かも」
「だから意図的に男を避けてる」
「うん」
「自分という男がそう思ってんだから、『俺以外の男もきっとそう思っているだろう』と思う」
「かも」
「だから平和に話せる女を選びやすい。ついでに本能とか生殖的にも女を選ぶのは合理的だ」
「うーん」
「つまり、あんたは『なんか勝手に本能が同性は敵に思え』と言ってる気がするから避ける、『女は本能がOKを出してるから行く』」
「……恥ずかしい」
「その恥ずかしさを容赦なく突っついて来る奴とかこの先出てきそうだなって思った。疲れそうだなとか偉そうなこと言ったけどさ~」
「容赦なく……」
「『へ~そうやって同性から逃げるんだ。雑魚』とか」
「うっ」
「『本能とか言い訳して女ばかり見てんのかよ』とか」
「く……」

「でも結果的に戦いを避けてるのはいいことじゃないの。平和が1番しょ」

突き放すようなすくい取るような女だと思ってしまった。だが……そんなことを言うのはこんなに真摯に話を聞いてくれてるのに失礼だと……思う。

「うーん……」

ありがとう、というべきかどうか迷ってしまう。

「そうだね。俺は戦いたくないな」
「うんうん」
「でも戦いたくないのは絶対に勝てないだろうなと基本的に思ってるからでもある」
「お?」
「勝てるいくさばかりだったら……」
「……」
「俺は……」
「同性を片っ端から叩き潰して周りそうだな、それも罪悪感だな、って思う?」
「きっとそうだよな。でもいちいち罪悪感伴うなら初めからそんなことしなきゃいい」
「うん」
「逃げるなら絶対確実に逃げれる位置に、勝てるなら残骸も見えないほどの消し炭にできる保証がないと戦いにも臨まない」
「鬼だな」
「うん……流石に鬼呼ばわりされてもノンデリとは思わない」
「ノンデリを上回る非道」
「そうです」
「そういう自分を自覚しながら生きるのはつらかろう」
「そうでもないよ。今こうして言われなければ気づかなかった」
「あたしのせいで、ノンデリなあたしのせいで気づかせちまった?」
「そんなこと思わないよ。いずれ自分の中でしなければならなかった対話だと思う」
「たっ……対話?」
「あっ」

俺はまた同級生の女に対して言うには変なことを口走ってしまったのだろうと思った。

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