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太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第26話 REAPER's LOVE TRYANGLE ATTACK

浅荷を追いかけることも、声をかけることもできず、ただその場に立ち尽くしていた。

「いや歩きながらでも話せんだろ!行こうよ」

その通りだった。

「まーたよくわからん気持ちになって止まってたんだろ」

その通りだった。

「で、なんで携帯持って出かけたくないんだっけ?」
「落とすから」
「あ、そうだ」

だから俺は自転車で道に迷ってもマップがわからなかった。でもわからないならわからないなりに人に聞けば良かったりする。

「へえ~~~~~~~。あんた知らない人に話しかけれんの」
「背に腹は変えられないというか……」
「そりゃそうか」
「でも、俺より強そうな男には話しかけられないかも」
「んだそりゃwwwww」
浅荷は見えてるのか隠れてるのかよくわからん今日の朝日に向かって吹き出した。

「だってなんか忙しそうに見える。彼らの時間を奪うことは日本の暗黙の了解的なモラルで禁じられているかのようだ」
「あー……わかった。あんたがそういう連中を見えないとこで相手してるから、自然とそういう連中のイメージ像が固まってるんだね」
「……なるほど………」

だからって女の人のリーマンぽい人にも話しかけられはしない。今ってリーマンて言わないんだよな。

「パーソンていうのか。公民でやったっけな」
「リーパー……」
「ゾンビみてーだな」
「サラリーパーソン?ビジネスパーソン」
「さあなぁ」

とにかくフォーマルに身を包んでる奴に話しかけるってなんとなくできない。他の奴はできるのだろうか?

「あんたに言われたことでできなくなりそうだ。でも言ったように背に腹は変えられない時だったらできるかもな。新幹線乗り場わかんねえ!あと5分じゃねえか!目の前にリーパー!みたいな時」

リーパー……

「何だよ!あんたが言ったんやろがい」
「新幹線乗り場はみんな目的が一緒だから、俺も躊躇いなくできるかも」
「目的が一緒?」
「そう。だって一度入ったら出ないことが前提だろ。その目的の電車が来るのを待ってるという行為をその場にいる人は全員している」
「おぉー」
「だから別にどんな格好の人がいようと『急いでる人』とは認識しないことになりそうだな……と」
「ものすげえ露出度の女とか」
「それは別に新幹線じゃなくたってできないんじゃ……」
「あたしもできないな」
「でも、それでもリーマンと私服のおじさんだったら私服のおじさんに聞いちゃうかなあ。気難しそうなおじさんだったらリーマンに聞くのかな」
「あたしは断然女の人に聞くだろうな」
「俺もそれかも」
「女好きか?あっしまったまたノンデリだった」

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中村風景
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