未来を読み解くための「ヒトー文化共進化」モデル
●「ヒトと文化」の共進化モデル
「ヒトー文化の共進化」のモデルを、未来を読み解くために利用しようというお話し。
ヒトと文化、集団規模とコミュニケーション能力は相互に影響し合い、その複合的な共進化のサイクルがヒトを世界中に拡散し、さまざまな文明を誕生させた。
ヒトが集団で獲得し継承するものを総称して「文化」と呼ぶ。
詳細はこちら。
「ヒト」は内外の環境に適応するために、新たな「文化」を創造する
「文化」が進化すると、それに依存する「ヒト」も進化する
生存競争に優位な「文化」を持つ「集団」は、ヒトが集まりそれを維持できることから「集団規模」を拡大する
「集団の規模」が大きく、「コミュニケーション能力」が高いほど確率的に高度な「文化」をうみ、それを伝搬して維持できる
「集団の規模」が大きく高度な「文化」を持つ集団は、より高度な「コミュニケーション」能力を獲得する
モデル化すると以下のように記述できる。
従って、
「集団規模」を拡大する「文化」の創造、
「コミュニケーション能力」を高める「文化」の創造が、「ヒトー文化の共進化」サイクルを加速してヒトの生活を激変させる
つまり、ヒトにインパクトが大きい「未来を読み解きたい」場合には、
『「集団規模」にも「コミュニケーション能力」にも影響を与えない(影響が少ない)文化やテクノロジーは棄却してよい』
とみなすことができる。
●文化遺伝子(ミーム)による共進化
そして、ヒトは遺伝子によらない、後天的な進化の手段を獲得した
文化に能力や脳力をアウトソースして文化遺伝子(ミーム[2])として継承することで、10年、100年単位での急速な進化を可能とした
ヒトは「文化」へと能力や脳力をアウトソースすることにより、当該「文化」に依存することとなり、
「ヒトと文化の協調」により、新たな能力や脳力を獲得するとともに
「文化」にアウトソースした能力や脳力を失う(減じる)
この表裏一体の能力・脳力の変化を念頭において、何を失い、何を獲得し、それによって今後何が変化するのかを明らかにしながら、未来を読み進めることが肝心だ。
●サンプル:ヒトと「言葉」との共進化
「ヒトー文化の共進化」モデルを使って、ヒトと「言葉」との共進化について、過去、現在、未来を読み解いてみる。
〇「声の言葉」と「書く言葉」への転換
ヒトと文化の共進化においてヒトの思考に大きく影響を与えたのは「言葉」であり、「声の言葉」から「書く言葉」への転換だ。
表音文字であるアルファベットが登場した直後から、哲学や数学に代表される論理的な思考法が誕生する。
「声の言葉」と「書く言葉」の転換期に論理的な思考法を手に入れたが、同時に多くの能力を失った。
さらに「活版印刷」により文字を読む習慣が大衆のものとなり、多くのヒトが近代的な思考法を手に入れた。
〇未来の思考法と支援サービス
WebやSNSという新しいメディアの創造によってヒトは長い文字を読むことが困難となり、ヒトの思考法が未来に向かって大きく転換しつつある。
その先にある未来を読み解き、新しい思考法=非線形思考をささえる「文化」の創造が思考の変化を加速する。
「ヒトー文化の共進化」モデルは、過去から現在への共進化の流れから、現在おきている変化に気づき、そこから生まれる未来を読み解く際に活躍する。「小さな流れ」と「大きな流れ」を読み解き、統合して、未来を見定めることを意識するようにしたい。
参考書籍:
[1] ジョセフ・ヘンリック(2019), "文化がヒトを進化させた :人類の繁栄と<文化-遺伝子革命>", 今西康子, 白揚社
[2] リチャード・ドーキンス(2006), "利己的な遺伝子", 日高敏隆, 岸由二, 羽田節子, 垂水雄二訳, 紀伊国屋書店
- Richard Dawkins(1976/1989), "THE SELFISH GENE(30th anniversaty edition", Oxford University Press
[3] M.マクルーハン(1986), "グーテンベルクの銀河系 :哲学人間の形成", 森常治訳, みすず書房
- Marshall McLuhan(1962), "The Gutenberg Galaxy: The Making of Typographic Man", University of Toronto Press
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