見出し画像

影響は波紋のように。 ~ 桐島、部活やめるってよ ~

朝井リョウという小説家が話題になったきっかけといえば「桐島、部活やめるってさ」という小説だろう。

映画化もされ、瞬く間に朝井リョウという名が世間に広がり、今や一流の小説家である。

これまで読書は好きだったもののほとんどフィクションを読まなかった私。
今年になって小説の読む量が一気に増えてきたが、恥ずかしながら朝井リョウの小説を読んだのは2023年、つまり今年が初めてである。

この「桐島、部活やめるってさ」という小説はそのタイトルこそ知っていたものの内容は全然知らず、なにかスポ根的な青春小説だと思っていたが読んでみるといい意味で期待は裏切られた。

少しネタバレになってしまうが(もう結構古い小説なので許していただきたい)そもそも桐島君が物語の中に出てこない。
斬新すぎる。

桐島君が部活をやめたことによって生じる波紋のような影響がまったく関係のない誰かに少しずつ影響して、それぞれの物語が動き出す。

それが圧倒的にリアルなディティールで表現されているため、自分が高校生のときに見ていた風景かのようである。

自分が中高生のときに感じていた「あの感じ」がちゃんと言語化されており、作者の観察力と言葉の扱い方には非常に驚かされる小説であった。

これを読めば、すべては偶然のような奇跡の上に成り立っているのだと感じる。
今の自分があるのは誰かのいろんなことが影響し合った結果であり、そのどれもが少し違っただけで、もしかしたらまったく違う人生を歩むことになったのかもしれない。

そう思うと、この奇跡に感謝するとともに、私自身が誰かに影響を与えているのであればもっと大切に生きなければならないように思う。

#読書 #読了 #朝井リョウ #桐島 、部活やめるってよ #推薦図書

この記事が参加している募集

サポートいただけたら今後の活動の励みになります。 頂いたサポートはnoteでの執筆活動費、参考図書の購入に使わせていただきます。