青春の記憶との重なり ~ 少女は卒業しない ~
高校を卒業して20年以上たつのが、今でもふと「あの時」の自分に出会うことがある。
友人、部活、恋愛、家族。
あの3年間で繰り広げられたどのドラマも色濃く、そして深い。
だからこそ、刻まれた記憶も温度も色褪せず残っている。
古本屋に立ち寄ったところ、書店員のおすすめコーナーに朝井リョウの「少女は卒業しない」が置かれていた。
最近は娘の読書用になにかよいものはないかと探していることが多いからなのか、それが目に止まった。
物語は明日で取り壊しが決まっている高校の最後の卒業式の1日が様々な少女の視点で描かれている。
朝からはじまり、卒業式の夜中まで、同じ時間軸で描かれるそれぞれの物語がときに交わりながら、進んでいく。
当たり前だが、私が卒業したあの日も私の物語があり、同時に卒業した300人以上の人の物語があったのだろう。
小説に描かれるそれぞれの物語のどれもが、自身の物語の記憶を刺激し、あの頃の自分が顔を出す。
それぐらい、朝井リョウの書く「青春」は誰もが経験するありきたりで、平凡だけど、細かいディティールまで自分の青春と重なり合っている。
こうして呼び起こされた自分があの時見ていた風景や感じていた温度、あのときの感情、どれもが懐かしいと同時に、今の自分が大切にしていること、大切にしなくてはならないことは、あの頃と何も変わっていないことに気づく。
間違えなく、あの3年間が私を形作り、私を生かしている。
あの頃よりも当然身体は衰え、顔にも皺ができ、白髪も目立ち初めているけども、変に大人のふりをして、気持ちを抑え込み、わかったふりをしていてはいけない。
何かに夢中になり、全力でぶつけ合ってたあの頃、あの濃密な時間が大人になったからと言ってなくなることはない。
朝井リョウの小説を読むといつもそんな気持ちで溢れてくる。
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