本を読むこと。 ~ 本家より面白いハックルベリ・フィンの冒険 ~
ハックルベリフィンはトムソーヤの冒険に出てくるトムの不良の友達です。
トムソーヤの冒険では最後にトムとフィンが宝を見つけて、お金持ちになり、ハックがダグラス未亡人の家に拾われ社会に無理くり引き込まれるところで終わりますが。「ハックルベリーフィンの冒険」はトムソーヤの冒険の後のハックがダグラス夫人の家を飛び出すことがから始まり、自由とは幸せとは何かをハックの冒険を通じて描かれています。
本書は本家のトムソーヤの冒険より人気があるとも言われており、私もトムソーヤの冒険でハックのファンになり、こちらの本を読んでみたくなり、手にしました。
ハックと黒人奴隷ジムの冒険には次々と災難が降りかかりますが、ハックやジムの知恵と勇気、素直さ、そして抗わずに流れに身を任せるといった潔良さは難しい社会を生きる(冒険する)上で大切なことだと思います。
また、この冒険で出会う人々の人種も考え方も様々で曲者揃いです。
このようなアメリカらしい多様性を味わうことができるのも本書の魅力だと思います。
今日は作品の中に散りばめられた名言の中からいくつか私がメモしたものをご紹介し、本書の魅力をお伝えしたいと思います。
これはハックとともに冒険をする黒人奴隷ジムと筏で川を下ってるときに深い霧に包まれ、ハックがカヌー筏を固定しようとしたときにハックが行方不明になってしまった際、ハックが霧のなか下流で筏を見つけ筏に乗り込みますが、そこで寝ていたジムに対しこれは全部夢だと思い込ませようといたずらしたハックに対してジムが言った言葉です。
度が過ぎたいたずらは時に深く人を傷つけてしまいます。
これはジムを匿うため、逃亡奴隷を探す人たちを騙すためにひどい嘘をついたときのハックの言葉です。
結果的にジムは助かりましたが、ジムと冒険を続けるために嘘を付き続けるハックは人を騙すことに後味が悪くなっています。
しかし、友だちを助けるためについた嘘、心の折れる作業は「正しい」ことよりも大切なときもあるのではないかと自問自答し、最後は自分の心に素直に従うことを自分に誓います。
冒険の途中ではお金持ちの家に居候させてもらったり、大きな船に乗り込んだりと様々な環境で筏の上よりも寝心地のよい場所、美味しい食事にもありつくことができましたが、色んなしがらみや人間関係によって差別や人の恨みや妬みも目の当たりにしました。
筏は居心地が悪くてもハックにとってはそんな「嫌な思い」をすることがない特別な場所だったのです。
ひょんなことから筏にペテン師と詐欺師の2人を乗せることになったハックですが、この「王様」と「公爵」と名乗る二人がペテン師と気づきながらもハックは二人に対してそれを言わずに、そのまま受け入れます。
このような人間と付き合っていく一番いい方法は、そいつらに勝手気ままにさせておくことが一番いいやり方で、筏の上に面倒を持ち込めばあっという間にそこから自由が奪われるのです。
詐欺師の公爵と王様が大きな罪をおかし、その報復を受けた惨たらしい様を見た際にハックが放った言葉です。
人の心の大部分を良心が占めているのにも関わらず、人はいとも簡単に集団心理によって良心が覆い隠され、どこまでも残虐的になれることに良心の無意味さを見出し嘆いています。
何が正しくて、何が間違いなのか、何が正義で、何が悪なのか、その確かさを問うよりも自分の心に素直に従うこと、それが気持ちよく生きること、自由に生きることではないかとハックは私たちに問いかけます。
「筏」は自由な場所、自分の心を解放する場所のメタファーになっており、筏に必要なもの、持ち込んではいけないものをハックの冒険から学び取ることができます。
ハックの冒険は自分にとっての「筏」をもつことの大切さ、そしてその「筏」を守るために必要なこと、そして「筏」の在り処を私たちに教えてくれます。
ゆっくり本を読む時間がとれる方には、ぜひおすすめしたい一冊です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の紹介図書
マーク・トウェイン著「ハックルベリ・フィンの冒険」角川文庫
この記事が参加している募集
サポートいただけたら今後の活動の励みになります。 頂いたサポートはnoteでの執筆活動費、参考図書の購入に使わせていただきます。