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中華丼と発泡酒  「ふたご」藤崎彩織

中華丼にあまりいい思い出がない。
給食の中華丼はキャベツや白菜の芯ばかりで、きくらげは固く、うずらの卵が入ってなかった事もあった。
レトルトの中華丼は絶望的に口に合わず、どうにもがっかりした思い出しかない。牛丼や親子丼もそうだけど、レトルト感がなんかダメ。具材の食感も味も死んでいる気がする。
中華料理店に入ったなら、私は炒飯か天津丼を食べたい派なので中華丼を食べた事がない。
だけど、ちゃんとした店で食べるか作れば美味しいのだろうとは思う。


「ふたご」はSEKAI NO OWARIのメンバーSaoriが書いた小説だ。
後書きに「自分の経験をベースに、バンド結成の話を書こうと思いました」と書いてある通り、主人公でピアノの夏子・異彩を放つヴォーカルの月島・常識人のギターぐちりん・脱退した矢部チャンに代わって加入したDJのラジオ4人組がデビューするまでの話だ。
彼らは(ラジオが加わる前)結成当初に元工場だった地下室を音楽スタジオ代わりに借り、そこでデビューを目指していた。
そのまかないとして作中で4人が作り食べていたのが中華丼だ。
毎月の支払いをバンド活動では稼げずバイト代で稼いでいるお金のない彼らは近所の激安スーパーで食材を購入し自炊しているが、中華丼はその中でも「人気レシピのひとつ」らしい。きっとSEKAI NO OWARIのメンバーも食べていたのであろう。中華丼に半熟卵をのせるなんてアレンジをしている辺りがそれっぽい。ただ卵のトッピングは、味が薄くなるんじゃないだろうか。

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