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ちゃうチュウチュウ
入社式。
新入社員紹介。
社長が壇上から名前を読み上げる。
「高橋翔太郎」
「はい!」
「商品開発部配属」
「田中楓」
「はい!」
「マーケティング部配属」
「タマ」
「ニャ~」
「資材管理部配属」
……。
……。
……。
「あいつ、ちゃんと鳴いたぞ」
「可愛い~タマちゃん。
ひとつ下の後輩になるんだよ~」
「あいつ、どうやって入社したの?」
「タマちゃん?
タマちゃんは保護猫なの。
NPO法人からの提案で、
うちに入社が決まったのよ」
「資材管理部って、
あいつ何すんの?」
「何でわからないの?
うちは食品卸の会社でしょ。
倉庫番よ」
「うん?よくわかんない」
「あなた会社のこと全く興味ないのね。
いい?うちの会社の倉庫には、
大量の食料品がストックされてるでしょ?」
「ああ」
「それがネズミに食い荒らされる被害額、
知ってる?」
「知らねえ」
「億よ!年間で億!
だからタマちゃんがスカウトされたの」
「そんなネズミなんて、
駆除業社に頼めばいいじゃない」
「あんたほんとバカね。
駆除業社って料金が、
敷地面積で決まってんの。
うちの倉庫デカすぎでしょ?
年間とんでもない出費になんのよ」
「そうなの?じゃあ、あれ…
ネズミ駆除のエサまけば?」
「あんた食品会社失格ね。
駆除のエサには、
毒性が強いものもあるのよ。
もしそのエサの成分が扱ってる商品に、
万が一でも混入してたらどうすんの?
あと出荷された商品に、
ネズミの死骸が紛れ込んでたら、
会社のイメージがた落ちよ!
あんた責任取れる?」
「たぶん取れない」
「でしょ?
だからタマちゃんは、
我が社の救世主なの。
住み込みで24時間警備。
給料はエサとおやつのちゃおちゅ~る。
しかも癒やし効果抜群!
ああ~私、休日も会社来ようかな~。
エサ当番で」
タマちゃんが入社してからは会社は、
社員の要望により休日の見直しが行われ、
希望休制度になりました。
今日もタマちゃんは、
ネズミを追い出す仕事に精を出し、
社員の皆さんに可愛がられているそうです。
めでたしめでたし。
このお話はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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