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『もう一度旅に出る前に』05 どの乗り物が良いかについて 文・写真 仁科勝介(かつお)

乗り物は旅の相棒である。どういう移動手段で旅をするのかということは、旅とは切り離せない部分だし、個性も出る。そして、簡単なようで難しい選択でもある。

乗り物については大きく、自走か自走でないかに分けられると思う。自走ではない乗り物としては、電車やバスなどが挙げられる。運転手さんがいて、どこへでも連れて行ってもらえるけれど、線路や路線の中でしか動けない。今回の旅の目標では、そういった場所以外にも巡りたいわけだから、メインの手段にするには難しいだろう。ただし、都市部においては地下鉄やバスを活用することも十分にあり得るし、それに、ヒッチハイクで日本を旅している人もいるのだから、どんな移動手段でも、道の先にはいろいろな物語があるはずだ。

そして、自動車やバイク、自転車などが、自走の部類だと思う。さらにいえば、徒歩で日本を巡る猛者もいるし、キックボードを使っている人もいるし、リヤカーを引いている人もいるなあ。ただ、何よりも自動車で旅をするのが便利だし、車内を旅仕様にカスタマイズした、ユーモア溢れる自動車旅の動画は、Youtube上にもいっぱいある。安全で風雨も凌げる。車中泊という言葉も、立派な旅言葉である。だから、自動車には憧れを持っているのだけれど、どうしても、ぼくは二輪か三輪のバイク、または原付がしっくりくる。やや安全性に欠けるし、風雨は凌げないし、車中泊ではなく、野宿かキャンプ泊になる。でも、たとえば風雨にさらされてしまうことなんかは、旅をする上で大切なことだと思うんだよなあ。向かい風を受けて、雨を浴びて、山を越えて、橋を渡って、それらの道中で、ちいさな気温や風の変化に気づくことが、ぼくにとっては、旅の大切な軸である。

と、最初からバイクに乗りたいと思っているばかりの書き方になってしまったけれど、前回の市町村一周の旅で乗った、110ccのスーパーカブにするのか、別のバイクにするのかについては、まだ迷っている。別のバイクというのは、「電動バイク」のことだ。やはり、日本に対して思いを持って巡りたいのなら、環境のことだって配慮したいという気持ちがあって、電動バイクを探していた。持久力のあるタイプで、ようやくこのバイクならいけるかもしれない、という車種を見つけて、問い合わせもさせてもらって、試乗もした。電動だから音が全然鳴らなくて、加速力があって、すごく良かった。

だけど、デメリットもある。持久力があるといっても、一度の充電で100kmほどしか走れないこと。その車体を満タンまで充電させる間に、かなりの時間が過ぎてしまうこと。充電スタンドが全国に普及していないこと。もちろん、そういったことを承知の上で探していたわけだけれど、最近になって、電力供給の問題も騒がれるようになって、自分の中での正解を、少し見失っている。その辺りの塩梅を今、相談しているところだ。だから、可能性としては、スーパーカブにもう一度お世話になる形も十分にあり得る。スーパーカブは長い間、実家でそっと休んでもらっている。実家に帰ると、車体を拭いたりするのだけれど、やっぱり乗ってこそではあるよなあ。という気持ちは、おのずと込み上がってくる。まだまだ、結論は揺らいでいる。
とにかく、旅の相棒とは、旅の伴走者である。




仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。

HP|https://katsusukenishina.com

Twitter/Instagram @katsuo247


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