短歌賞落ちて元気出た
数日前に短歌賞の結果が発表されまして、見事に予選の段階で溢れ落ちました。✌︎ピース。
一種の恋のような呪いのような感情で、短歌を5年続けた。正直色んな歌集を手に取る度に、敵わない人が沢山いることがわかって、痛かったの。勿論楽しいけれど。
小さな小さな望遠鏡を通して、星々を眺めるような日々だった。短歌を他人に初めて見せて、ハタチになって、やっと辞める決心がついたよ。未熟さを受け入れたことで、成熟したような気がして。嬉しい、わーい。
↓
流れ星さえ綺麗事患えば雨も躑躅も湿疹である
クローンに思える多摩の団地にてパステル色の二輪交わる
夜を裂く車窓に映る半月と同じ原理の社会人達
始まりは嘘で溢れる新年度交番に死者0の看板
告白で抱えた花と同じ種を棺に納め二十歳始まる
ひ弱さを見かねた父が枝豆の莢に産卵促している
よく笑う二十歳の母の胸元にシャンパンゴールドの偽の花
原色の化粧室にて口紅はセクシャリティに沿ってはみ出る
人体は螺旋に記録され君が髪を編むのに釘付けになる
肺癌で去る直前の日記には一言晴れとあり救われる
生まれつき赤緑色弱の君の濃淡だけがあるクリスマス
不純物混じる心象ほど強く砕けた君の結晶とがる
息をする証に斬首されている椿と自然流産の兄
奇抜さが現代の美というけれど手も口も無いヒゲナシの群れ
高校生男女二人が道塞ぎ四本足と四輪で行く
幸せは光り輝き透き通る流体としてありふれている
二枚貝閉じる重ねた手の下で色艶秘めた爪大人しく
鏡台に散らばる翅の暖かな破裂を理解せずに兵器は
大衆は人ひとりより短命と戦火に染まる前に気付けず
マルメロの憎い産毛よ体中剃って女は女だろうに
儚さと強さを海に抱くのは拒絶する血の補色から来る
天井に頬から触れて凹凸は潰れた夢の瘢痕に似る
数学の甘さと23時半粧しを解く間のトワレ
没年が連なる詩集抱えると藤の憂いも陶酔に見え
虫叩く音から子守歌までの差に表れる母の強さが
十字架と花で溢れる北西を眺める数億人と数年
失恋も爆発も無く編み物の終盤赤い毛糸の始末
ゆっくりな呼吸或いは循環を或いは痙攣する数字達
真っ白な矮星如く病室の花瓶の側に伏すカスミソウ
純白の胡蝶蘭から成る海の旅路できっとビール零れる
装飾の凝ったサブレの空き缶にリボンを溜める母は少女に
我が父が実父の介護する途中気にも留めない濡れた靴下
美術展襲う嵐の群青と橙鮮やかなブルターニュ
終わりから始まりが来る重圧で浴室中が発汗しだす
天国の白溢れ出す駅ビルのトイレに溶ける紙が散らばる
夢想家と乖離している科学者の貴方は恋を指折り数え
湯灌終え白装束を纏う祖父生前植えた桃は眩しく
色彩を家屋の窓が透過して反転してもホワイトローズ
走馬灯掻き分け初夏を通勤し満員電車に傾くPARCO
もしも蝶ならば等しく降る雨に羽を濡らして諦めただろう
増えてゆく墓石磨いた帰り道我が子が選挙カーに手を振る
降雪を体で受ける国に来て母に僅かに重い背向ける
蝋燭の火を吹き消して祝うほど人を照らせる命だろうか
か細くて強いが刹那弾け飛ぶ恋の真っ赤な断面を知る
黒鉛の短繊維らを撓ませて平らな愛を贈るときめき
水に濡れ初めて透けるすりガラス同様傷を負う女学生
眼球は涙の脱ぎ着繰り返す赤子の瞳忘れぬように