長江ありて
「この仕事に誇りなんてない。さっきも馬鹿にされただろう」
重慶のベテラン荷役(バンバン)がカメラの前でこぼす。
が、その双肩は頑強であり、苦もないように長い階段を上がる姿は若々しい。棒一本で妻子を養ってきた事実が、静かだが生きる原動力になっているように思えた。
竹内亮監督のドキュメンタリー映画、『再会 長江』を角川シネマ有楽町で観た。
竹内は長江を上海からさかのぼり、沿岸に暮らす人々との再会を果たしていく。
開発が進んで生活が豊かになった村もある。住民はもう10年前には戻れないと言う。当事者であればだれもがそう思うであろう。
水位が上がり激流が静かな流れに変わった場所もある。そこまでの力を人は手にしているのだと改めて思う。一方で汚れていた流れが清流に変わるまでに美化政策の結果も出していた。どちらも人の手によるものである。
変化は今も続いているし、さらに加速していくだろう。映像が映す人々の豊かさは千差万別だった。その中で人々は案外タフに生きている。
巷間たまに耳にする「勝ち組」という言葉がある。私も案外それを今更ながら追っていたのかもしれない。かの言葉を、長江の悠久の流れに比すれば、その浅薄さが見えてくる。一時的に「いいポジション」をとったにすぎない集団。
チベット族の少女は10年前に描いた夢を、きちんとかなえていた。それは素直に嬉しかった。
さて、来年の私は……
うむ、とりあえず中国を旅しよう。
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