「大丈夫ですか？」と言われて

人がまばらなスーパーから出て　
空を見上げる
さっきまで夕焼け色だったのに
すっかり暗くなって
街灯が眩しく光ってる

はーっ
思わず出てしまう深いため息
いつもと変わらない日常と
疲れ切った心と何となく重い体

カートをガラガラと鳴らして
駐車場を歩く
「帰ったらやる事がいっぱいだ」
そんなことを考えていると
突然カートが止まった

そして訳も分からないまま
私とカートーは地面に投げ出された

駐車場の真ん中にある排水溝に
カートの車輪がはまったらしい
いつもは気をつけていたのに

立ちあがろうとすると
若い女性が駆け寄ってきた
「大丈夫ですか？」
「あっ、大丈夫です」
地面にばら撒いたパンとペットボトルを
拾って私に渡してくれる女性
「ここ危ないですよね」と
優しく微笑んでいた
私は何度もお礼を言った

車に乗ると痛み出す
足にできた数カ所の打撲
とりあえずエンジンをかけて
車を走らせた

そういえば「大丈夫ですか？」って
困っている人には
たまに言ってきたけど
自分自身はここ何年も
言われた事がなかった
長年一緒にいたパートナーでさえも

でも、こんな私にも
親切にしてくれる人がいるんだ

そう思ったら
温かい気持ちで一杯になった

「ありがとうございます」

世の中には優しい人もいることを
忘れていた私には
身に染みる優しい言葉だった