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フランク・ロイド・ライトの傑作「落水荘」に行ってみた 〜滝の見えるテラス〜
滝の上に家を建てた理由とは?
リビングの先にあるテラスへ出てみる。前回の記事でも書いたが、リビングの天井が低いので(実際には広さがあるからそう感じるだけだろう)テラスに出たときの開放感が半端ない。
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テラスに出た途端、岩にたたきつけられる水の音が間近で聞こえる。そう、あの滝の真上に立っているのだ。
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ここで冷静になって考えてみる。はて?なぜ滝の上に家を建てたのか。普通であれば滝を眺められる場所に建てないか。実際、依頼主のカウフマンもそう考えていたようだ。でも、そこは天才ライト。考え方が違う。ライトは設計について、こう説明している。
「この家は滝の音を聞くのが好きな人のために考えた」
もともとカウフマンファミリーが水泳や日光浴などを楽しんでいたのが、まさにこの滝の上だった。確かに、リビングから階段を降りれば川で泳げるし、リビングにいれば滝の音も聞こえる。自然との結びつきが強まり、他では得られない唯一無二の体験ができるだろう。
というわけで、結果的に滝の上しか、ライトの中で答えはなかったというわけだ。とはいえ、凡人では考えつくまい。恐るべしライト。
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テラス自体はそれほど広さがあるわけではないが、滝の上に広がるスペースがあるのとないのとでは建物の見え方や自然の感じ方も全然違うだろう。せせらぎが響く中、建物は美しい光景を映し出し、周りの自然も一層深い魅力を放っている。
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さて、テラスからは滝以外に何が見えるかというと…
中央には滝から続く小川、その両脇には緑の濃淡が美しい森が広がっている。ひかえめに響き渡る滝の音や鳥のさえずりとともに、森からの風が実に心地いい。
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つづいて、下の写真を注意深く見てほしい。
人がいるのがわかるだろうか。
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そう、人のいるところが高台になっていて、いわゆる有名なThe落水荘の姿はここから眺めることができる。
そういえば、忘れてはいけないものがあと1つ。テラスに出ると“あるもの”が出迎えてくれる。
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かなりインパクト大の仏頭だ。美しい景色をかすませるほど強烈な存在感がある。ライトはアジア美術ラバーでありコレクターだった。とはいえ、テラスにこの仏頭は違和感がないわけではない…
次回は再び室内に戻り、別のフロアを見てみようと思う。