未来を育むネットワーク、フルノと生産者とこども食堂の『つながり』
フルノのネットワークを駆使して、こども食堂に魚を ー
そんな取り組みがフルノ社内で動きだしました。
こども食堂とは、地域住民や自治体が主体となって無料、または低価格で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場です。この5年間で約20倍に増加しているこども食堂ですが「食材の調達」は課題となっています。
その中でも特に魚介類は食堂への提供量が少ないと言われています。
そこで全国の漁港に拠点を持ち、漁業関係者と深い繋がりを持っているフルノではこども食堂への支援活動の検討が進んでいます。こども食堂と生産者をつなぐ推進チームの活動に密着しました。
掲げたキーワードは『会社存立の原点』、推進チームの想いとは
フルノではこれから会社の中核を担うであろう人材が集まり、業務における課題解決に実践的に取り組むという活動があります。今回は「つながり」が生むエンゲージメントの向上をテーマにこども食堂への支援活動を行うチームに話を聞きました。
ー どのような想いでこのチームの活動が決まったのでしょうか
石野さん「フルノの経営理念にある『会社存立の原点は社会の役に立つことである』を踏まえ、私たちは"社会貢献"をテーマに掲げることにしました。
フルノの事業を通して様々な社会課題を見ていく中で、魚食文化離れやこども食堂の現状などを知り、こども食堂への支援をしたいと考えるようになりました」
まずは漁協などに対して未利用魚の有無や鮮魚の提供が可能かのコンタクトを始めていったそうです。またこども食堂の現状も調べるために古野電気の本社がある西宮のこども食堂へコンタクトをしたところ「魚は高価なのであまり提供例がなく、もし利用可能となれば嬉しい」といった声をいただき、活動の方針を決めていきました。
「調査をしていくと、各県の漁協・漁連さんごとに未利用魚の実態や取り扱いが異なり、一概に『必ず提供いただけるものではない』ということが分かりました。輸送費や鮮度を保つための作業など、魚以外の費用も発生しますからね。ただ、フードロスの観点からも獲った魚を捨てるということは極力避けたいという声もあります。その有効活用のひとつとして『こども食堂に提供する』が選ばれる、そんな活動にしていこうとチームで話し合いました」と樋口さん。
小和田さんは「こども食堂に魚を届けたい、では自分たちが何ができるだろうと考えたときにフルノがこれまで培ってきたネットワークがキーになると思いました。つまり全国の漁港と密接に関わっているからこそ、こども食堂と生産者を繋ぐことで支援の道が出来ると考えました」と話してくれました。
ただ貰うだけではない、水揚げの現場を見て感じたことを子供達に届けたい
様々な漁業関係者さんとコンタクトを取る中、フルノの新規事業のひとつである養殖支援事業にも着目。養殖関係者さんにもヒアリングをさせていただけることになったそう。
その中の一社が鯛などを養殖している三重県の長栄丸水産様。今回鯛をいただくだけでなく、その水揚げの現場を取材させていただきました。
普段は沖の方で飼育している鯛ですが、水揚げのタイミングでは専用の生簀に移し替えて港の中まで移動させるそう。一度に数千匹を出荷するそうで、その作業だけでも大変さが想像できます。
港まで移動させた後は重機なども活用し、生簀の中の鯛を水揚げ。一匹一匹状態や傷の有無をチェックしながら、テキパキと専用のケースに魚を入れて輸送用のトラックに格納していきます。
黒瀬さん「養殖場に何度か訪問させていただいて、関係者の皆さまが手塩に掛けて育てられているのを実感しました。そんな苦労を子供たちに知ってもらうことで、魚食文化への興味や魚を大切に食べることを考えてもらえたらそれは漁師さんにとっても嬉しいことだと考えています。
また私自身は普段工場で働いているので、漁業の現場やお客様と接する機会はあまりありませんでした。自分の仕事へのモチベーションにも繋がりましたね」
子供達に漁師さんの仕事や養殖がどのように行われているのかを紹介することで養殖に対して興味を持ってもらう、それも漁師さんへのお礼のひとつだと黒瀬さんは話します。
第1回の提供へ、子供達の反応やいかに
こうしていただいた魚をこども食堂に提供する準備が整いました。西宮市役所を通してフルノの活動をこども食堂に紹介いただき、第1回の提供先として西宮市山口町のこども食堂へ提供することとなりました。こちらのこども食堂では週1回提供を行っており、20名ほどの小学生が夕食を食べにくるのだとか。
こども食堂の運営をされている佐藤さんは「立派な鯛で驚きました。子供たちは普段あまり魚を食べないと言っていましたが貴重な機会なのでぜひ魚の美味しさを知って貰いたいね!」と話してくださいました。
こうして届けた鯛は次のように調理されこども食堂で提供されました。
また鯛だけでなく、橋口さんと樋口さんがコンタクトを取っていた宮崎の南郷漁協さんからも沢山のイワシが届き、こちらも煮つけにして提供。
特に人気だったのは鯛のアラから出汁をとった潮汁、子供達も大満足だったようで「出汁がおいしい!」と何度もおかわりしてくれたのだとか。
また食事前には子供たちに今回の魚はどこから来たのか、誰が育てているのか、そんな話をさせていただき、子供たちに魚や水産業に興味をもってもらえるような取り組みも実施しました。
石野さん「魚を提供くださった漁港や養殖場の話をさせていただきました。質問が想像以上にあって子供たちが魚に興味を持ってもらえたことが嬉しかったです。
『魚、美味しかった』と何度もおかわりしてくれて、皆さん元気満点でした。食堂の皆様にも多大なご協力をいただき本当に感謝しています」
プロジェクトがスタートしてからこども食堂との打ち合わせを重ねていた石野さんは嬉しそうに振り返っていました。
まだまだこれから、生産者とこども食堂のつながりを広く長く
第1回のこども食堂への提供を終えた次の日、早速打ち合わせを行い、次回の準備を進めています。今回直接会場には参加できなかった橋口さんと樋口さんからもコメントをいただきました。
橋口さん「無事に提供できてホッとしたのと同時に今回の提供にご協力いただいた水産会社さんや漁協関係者さんの顔が浮かびました。子供たちが喜んで食べてくれると良いなと素直に思いましたね!フルノとして、これまでの漁師さんや漁連さんとのお付き合いを大切にしつつ、社会貢献に繋げていきたいと考えています」
樋口さん「漁連の皆さまおよびこども食堂に関わっている方々の協力があり実現できました。小さなことかもしれませんが、子供たちの食育に少しでも貢献できたことは喜ばしいことと考えます」
また鯛を提供くださった長栄丸水産の西村社長からは「出汁まで取っていただいて無駄なく食べていただけたことは、大切に育てた生産者冥利に尽きます。今後私共でも小さな加工場を作りますが、なるべく廃棄を減らし出汁まで取るようにして、"ありがたくいただくこと"を考えていきたいと思っています。ありがとうございました」とメッセージをいただきました。
「水産業に携わる皆さんと子供たち、両方を笑顔に」をモットーに、フルノが培ってきたネットワークと地域を繋ぐこの取り組み、早速第2回以降の準備も進んでいます。
箕輪さん「こども食堂代表の佐藤さんから、今回参加してくれたお子さんの保護者の方から『鯛の塩焼きと潮汁をいただいたことを喜んで家で話してくれました』と連絡があったことを教えてもらいました。
佐藤さんからも『魚の提供を頂き、子どもたちは美味しく食してくれました。これからも機会があれば継続できればと願ってやみません』とお言葉をいただいています」
"継続的に続けられていける仕組み作りをしっかり固めていきたい"とこれから意気込みを聞かせてくれました。
引き続き、期待を込めて応援していきたいと思います。
執筆:高津 みなと