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「謎の大王 継体天皇」を読んでみる。

 一度読んでしまいっぱなしの本を改めて発掘して読む自分キャンペーンを実施中。論文はちょっと休憩中。今回は、水谷千秋氏の『謎の大王 継体天皇』(文春新書)です。そもそも継体天皇って誰?という方も多いでしょう。音だけ聞くと「ケータイ天皇?」と、古代の髪型した人が携帯で話してるシュールな絵面が頭に浮かんで離れません。

謎多き継体天皇

 この方は古代史です。応神天皇五世孫で越前三国(福井県)に住んでいた男大迹王。後継のいない天皇家に急遽迎え入れられ、即位して継体天皇となったものの、しばらく大和の周辺に留まり、20年近く経ってようやく大和入りした、という経歴を持つ人です。
 この経歴を読んで、スッキリしない人の方が多いのでは?
 五世孫って、それはもはや親戚と言えるのか?、なんで福井県に住んでるんだ?、なんで大和にすぐ入らないんだ?と、謎のオンパレード。すんなりと後を継いだようには、とても思えない。誰しもそう思う訳です。一体、継体天皇って何者?という謎への文春砲が本書です。

王朝が交替した?

 あまりにも不自然な継体天皇の登場により、様々学会でも論争になっており、福井の豪族がそれまでの天皇家を倒して王朝が交替したんじゃないか?と、言われてたようです。
 武烈天皇に跡継がいなかったので継体天皇が登場するのですが、この武烈天皇というのは朝廷によって編纂された『日本書紀』によれば、
 妊婦の腹を割いて中の胎児を見た!
 人の生爪を抜いて山芋を掘らせた!
 人を木に登らせてから切り倒して墜落させて楽しんだ!
 女性を馬と獣◯させた!
まさに文春砲。いや書記砲か。中国の王朝が交替する時、前王朝の皇帝が悪逆無道なので倒した、と書かれることが多く、武烈天皇のエピソードは、そのエピソードの焼き直しのモノが多いことから、継体天皇が縁遠い人であることと相まって、王朝交替説に繋がっているようです。

継体天皇がなぜ登場することになった?

 天皇家の血統が途絶えたので継体天皇は登場しますが、では、なぜ血統が途絶えたのか?それは雄略天皇に要因があると本書では指摘しています。雄略天皇は有力豪族に連合体であった大和王権において、専制君主として君臨することに成功したようです。その際、自分の地位を脅かしそうな親族を成敗しまくったことで皇位継承者が減ってしまったようです。漢の劉邦が皇帝になったのちに親族やら有力者やらを成敗しまくって不安定になってしまったのと似てますね。ライバルを消したくなるのもわかるのですが、結局途絶える原因になる。もっとも、途絶える頃は自分は生きてないので良いのでしょう。

で、継体天皇はどんな人?

 越前の豪族だったんじゃないか、いや、皇族じゃないかとか、大和朝廷と揉めたとか揉めてないとか、様々論争が分かれる中、著者の水谷氏は状況証拠を積み上げて継体天皇の素性を明らかにしていきます。この辺りは量も膨大になるのでぜひ本書をお読みになってください。古代史は自由すぎてとっつきにくいところもありますが、自由が故に様々な妄想を巡らすことも可能になる。
 歴史好きって妄想するのが楽しいので、なかなか興味深い時代だと思います。興味のある方はぜひ👇

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