直木賞を受賞した万城目学さんにまつわる図書館の思い出
こんばんは、古河なつみです。
芥川賞と直木賞の受賞作が発表になりましたね!
明日本屋さんのディスプレイを見に行くのが楽しみです!
今回直木賞を受賞された万城目学さんのお名前を見ると、自然と図書館司書の資格取得の授業を思い出します(とある万城目さんの小説と、森見さんが映り込んでいるXでのお写真も一緒に思い出します)。
図書館の在り方について学ぶカリキュラムの中で「図書館は無料貸本屋か?」という問題提起がされた文藝春秋の記事がプロジェクターで教室の黒板に大写しにされ「作家さんからも図書館の姿勢を問われています」と併せて紹介されたのが万城目さんのSNSでの発言でした。
タイトルを指定してまで人気図書の寄贈を募るのはひどい、というのが万城目さんが発言した内容の大枠です。
下記のリンク先の記事では万城目さんの当時のツイートが原文ママで読めるようになっているので図書館愛好家の方はぜひ万城目さんご本人のお言葉に目を通していただきたいです。(こういったまとめ記事は司書としてはあまりオススメしないのですが……タイトルのつけ方こそやや煽り文調ですが、この記事の内容自体は万城目さんの主張をひどく誇張したり、情報を曲げているようには感じなかったので参考としてリンクを貼っております)。
私が実際に司書になり、図書館を取り巻く「人気図書の予約」の実態を知った時、本当に作家さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。予約数400件……10冊以上の複本所持……司書である前に本が好きで、作家さん達のファンである私にとって、この事実には大変ショックを受けました。
リンク先の記事を全文を読んだ方は分かると思いますが、万城目さんは決して図書館の複本(同じ本を何冊も買う事)そのものを否定している訳ではありません。何冊も所蔵して貸し出すのは構わないけれど、タダで(寄贈で)仕入れようとするのはよくない、という非常に真っ当な主張をされています。
万城目さんがこういった意見を発信してくださったおかげか、私が勤めたいくつかの職場や、私の地元の図書館から「タイトルを名指しした寄贈のお願いのポスター」は徐々に姿を消していきました。中には、利用者さんから「万城目さんの話を知らないの?」とご意見があって取りやめになった館もあったらしいので、当事者である作家さんが声を上げてくださった事が大きな力となったのだと思います。今でも頓着していない図書館も悲しい事にまだあるようですが、全ての図書館でもう少し作家さんに配慮をした取り組みがなされるように願うばかりです。
最後になりますが、万城目さん、直木賞受賞本当におめでとうございます!
記事の冒頭でちらっと書いていた万城目さんのお名前を見ると真っ先に思い出すとある小説というのが『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』です。
私にとってこの本は、特別な思い出の一冊です。
初めて図書館のYA担当(中高校生向け)になった時に図書館だよりでこの『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』の紹介文を書きました。
そして、おたよりと一緒に本を展示をしたところ、なんとその日の内にどなたかが借りてくださりました。自分が初めてオススメした本が誰かの手に渡った嬉しさと興奮を今でも覚えています。
※紹介した時はちくまプリマー新書として出版されていたはずなのですが、同じ表紙のものが見つけられなかったので角川文庫から発売された書影を紹介しています。
ページを捲る度に「おやおや? 不思議な所に来ちゃったなぁ~?」とフィクションの楽しさを教えてもらえる万城目さんワールドをこれからも応援しています。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。
古河なつみ