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建築・暮らしのこと

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古今東西の建築の話、暮らし一般の話、いろいろ書いていきます
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#建築

「地域社会圏」は”パリピ”の集い?

「パリピの考え方だね」 山本理顕+仲俊治『脱住宅』を読み、夫(建築とは関係ない仕事をしているが、同じ藝大出身)にその概要を話した。 ちょっと端折りすぎかもしれないが、こんなふうに説明した。すると返ってきたのは、 という反応だった。 「パリピ」。言い得て妙である。 ずっと建築の設計をしている私でも、この本に書かれている暮らし方に若干の気恥ずかしさやためらいを覚えてしまう。確かに自分はできる、でも、誰もができる暮らしなのだろうか。そう疑ってしまう。 夫は、話を聞いて瞬

『窓と建築をめぐる50のはなし』から考えた3つのこと

前回のエントリーで書いた「窓展」に行った際に、ミュージアムショップで買った本。 YKK ap(サッシメーカー)が主催している「窓研究所」が編集に関わっているほか、複数の建築家も寄稿している。窓に関する現実的な話(性能や工法など)と、風土・歴史・社会・芸術といった視点でみる窓の話の、両方が楽しめる。 なかでも個人的に興味深かった話題を3つ、ピックアップしてみます。 窓辺での通話 「窓学アーカイヴ3|五十嵐太郎・窓の歴史と表象文化」 において、19世紀ロマン主義の絵画には「

「窓展」|窓の大切さ

昨日、東京国立近代美術館で開催中の「窓展」に行ってきました。 明日2/2(日)まで開催中。かなり駆け込みになりますが、興味深い展示だったので気になっている方……特に建築関係者の方はぜひ行ってみてください。 ・・・ 今さら言うまでもなく「窓」は私たちの生活にとって大切な存在ですが、個人的にもその重要性を痛感する出来事が、つい最近ありました。 年末年始にスリランカを旅行したときのこと。 ジェフリー・バワの設計したホテルに泊まりたい!という目的がメインでした。その詳細は後

アールトとバラガン|家具と建築

アルヴァ・アールトの作品集を眺めていて、既視感に襲われた。 「最近、どこかで同じような感覚を抱いたな……」 悩むほどのことでもない。それは、ルイス・バラガンの建築に抱いたのと同じものだった。 バラガンと同じく、アールトの建築写真も美しい。 理念や思想を飛び越えてまっすぐ目に訴えかけてくるような、わかりやすい美しさがある。庭や緑を大切にし、鮮やかな濃淡をつくり、強い形態で語りかける。 しかし…… しばらくページをめくっていると、やはりどこかが違う。アールトとバラガン

建築と言葉

今日もつらつらと建築の話です。 ・・・ ある日のこと。 乃木坂ギャラリー・間で開催中の展示「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展」(覚えられないし打てない……)を観てからいくつかショールームを巡り、歩いて表参道のAppleストアへ(おまけ)。 (ギャラリー・間展覧会概要) ADVVTの展示。 展示の意図はわかったと思うのだけど、結果として見えてくるものがあまりなかった。これは私の理解力不足なのかもしれないのですが、やっていること自体というより表現方法

借景

今回の投稿は、TOTOの発行している建築情報誌「TOTO通信」2019年夏号を読んでの感想です。 TOTO通信はいつも面白く読ませていただいています。事例が4軒と、浦一也さんのホテル話などなど充実した内容で、無料。1000円の雑誌ぐらいの価値はありそう……。 設計事務所などは登録すれば冊子が送られてくるらしいですが、私はウェブで読んでいます。PDFとHTMLが両方用意されていて親切。 ・・・ 2019年夏号のテーマは「借景」。 ・「桃山ハウス」中川エリカ ・「川」横

南青山の蔦珈琲店(山田守自邸)

南青山にある「蔦珈琲店」に行ってきました。 今回、なんと!写真を一枚も撮っていない! ……実は、写真を撮るのが苦手です。なんのこっちゃという感じですけど、一人でも友達とでも、店内や人や食べ物を写真に撮るのが恥ずかしくてうまくできない、街を歩いていてもパシャパシャ撮れない、という悩みがあったりします。(打破しなければいけない!) 写真は他所からお借りしました。 蔦珈琲店へ青山学院大学と骨董通りの間、「アイビー通り」という細い通り沿いにある蔦珈琲店。 建築家・山田守の自

ルイス・バラガン|フォトジェニックな建築

「フォトジェニックな建築をつくる」と人に言われたら、設計者は「それって褒めてるの?」と戸惑ってしまうんじゃなかろうか。 なんとなく「チャラい」という意味にも聞こえるし、「建築としては今ひとつだけど写真としてはいいね」ということかと勝手な深読みをしてしまうからかもしれない。 私がルイス・バラガンの建築にあえて「フォトジェニック」という言葉を使ったのは、そのどちらでもない。最も敬愛する建築家バラガンに対して、そんな悪口を言うはずがないのだ。 ルイス・バラガンとは ルイス・バ

「建築をやるために生きてるんじゃない。生きるために建築をやっているんだ」

建築学生になったばかりの私は、それまでの回り道を取り戻さんと必死でした。 そもそも、建築学生というのは必死な生き物です。ハードに学ぶのが当たり前、徹夜は当たり前の世界でした。たぶん今も。 始めたばかりの大学一年生の頃は、疑問を持つことはなく、それ自体を楽しんでやっていました。みんなと大学に泊まって徹夜でトレースしたり模型を作ったりする日々が、充実していたのです。 いや、そんなに深く考えてなかったな。当たり前だと思っていたし、みんながやっているからやっていた。 でも、も