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ほうる
2020年8月2日 02:22
一番古い記憶は,窓から見る雨の景色だ。すりガラスの向こうにぼやけて見えるのは,湿った夜の空と窓に当たる雨粒,そして,等間隔で妙にきれいに揺らめく街灯の光だった。分厚いえんじ色のカーテンと,かび臭いレースのカーテンを順番にくぐり,僕は窓の前に立つ。雨の匂いに惹かれて顔を寄せると,鼻がガラスにくっついて,ひやり,とする。とても悪いことをしているような,それでいて誇らしいような気持ちで,僕は