堕ちていくスピード
二日酔いになっていないことが不思議なくらい、たぶん浴びた。焼酎だったか、ときどきウォッカもあったか、でもビールは避けた、それだけは覚えていた。それ以外は記憶がないし、後味の悪い恥ずかしさに包まれていて、いつもより布団が重く感じた。なんだろうか、毎度、酒に酔った日の、この、勝手に昔のアルバムを見られたような感覚は。
二次会のカラオケ部屋の景色はなんとなく浮かぶものの、財布の中にぐちゃぐちゃに入れられた領収書を見つけて初めて、ちゃんとお金を払う意識だけは残ってたんだなと憶う。そして、腹が立つ。
「自分はなんてカッコつけしいな性分なのだろう、酒を飲めば私の財布は常に万人に開かれている。もはやお金も持ち主を忘れているだろう、ならばもう去ればよい、金に未練などあるまい。」と強気になった矢先に、「もういい加減辞めたい、酒を。いや、人間を。」と心の中で独り言を呟く自分がもう一人居た。酒のせいで覚えていないのか、はたまた心の底から忘れたいが故に、今ものすごいスピードで防衛本能的にあらゆる会話をゴミ箱にせっせと運んでいるのか、脳みその不思議を憶う。
本当は早く吐き出したいのに、世間の評判、専門家の見解、常識だ慣習だという外圧のせいで、無理やり喉を通す薬みたいだ。この日々が、本当に人間らしい日々なのか、人付き合いはかくあるべき、なのだろうか。人間として自分が堕ちていくスピードは、日に日に加速しているような気がする。