1994年に発表された論文の、動物の初期進化の模式図に心打たれて、殴り書きを残す。
30年近く前に発表された論文だが、私がこの論文を見つけたのはつい最近だった。当時オーストリアの大学に所属していた研究者が、自身の無脊椎動物の研究や当時発表されていた後生動物の進化の仮説などを総合して、動物の初期の進化を想像したというものだった。無脊椎動物では小型の浮遊幼生と大型の固着生活の成体という二相の生活環があること、細胞外マトリックスの成分は原初より変わっていないということ、から、立襟鞭毛虫の群体生活から、組織間の相互作用に伴う細胞の運動などが起こり、運動・食餌・生殖などの組織の分化が活発に行われたと考えたようである。
https://www.jstor.org/stable/3883857
著者は、立襟鞭毛虫の群体から成体の形態完成に付随して幼生の形態が出来上がったと考えているようで、許可が無いので掲載できないが、この上なく完結で美しい図2にも、このことは表現されている。体腔を持った動物は海綿のような動物と並行して成立したというのが持論のようである。
<進化の経路①-1>
・立襟鞭毛虫の群体
➡Phagocyella(幼生)【内側に数個の浮遊細胞を持った多細胞、繊毛で覆われている】
<進化の経路①-2>
・立襟鞭毛虫の群体
➡海綿のレベル(成体)【だ円形の多細胞の中に細胞質があり、内側への陥入が随所にあり】
<進化の経路②-1>
・立襟鞭毛虫の群体
➡プラヌラ, ガストレア(幼生)
➡ディプリュールラ・トロコフォア(幼生)【現在定義されている幼生と形は同じ】
<進化の経路②-2>
・立襟鞭毛虫の群体
➡体腔を持った動物のレベル(成体)【扁平な多細胞に凹凸のある触手が分化、外側に繊毛のある組織とない組織がある】
➡左右相称動物のレベル【扁平な多細胞だが複数のポリプや他の器官が出来上がっている】
これらの過程には、ヘテロクロニーや幼生生殖の現象も必要だったと、著者は考えている。30年前の想像にすぎないが、細胞外マトリックスの成分を重視し、この相互作用による分化誘導という考え方は面白いと思った。何よりも、掲載できなくて申し訳ないが、図2は簡明かつ想像力をかき立てる秀逸さがあると思う。あくまで個人的な感想にすぎないが。一つよくわからなかったのは、直接発生と間接発生の関係性がつかめなかった。幼生を得て、失い、また得る、といった道筋はどうだったのか、ということである。
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