外伝:有望な怪物達 その7:雑種幼生との出会い
ロバートが先の海岸の階段に向かう。夕焼けの空は曇りだ。夜になった。月が雲に隠れた。
翌朝。海岸、耕地、住宅、船。港町の静かな風景だ。海鳥の鳴き声は止まない。
二人が歩いている。柵の鍵を外し、屋外の水槽のある場所を通過する。博士は、ロバートの右肩に左手を置いて歩いていく。
室内に入り、ロバートが博士の後ろでウニをいじり、博士はボールに入った液体を顕微鏡で観察する。
博士「何か泳いでいる」
博士がガラスボールを少し動かす。
博士「違う形をしたのがいるね」
球状の生物がくるくる回って動いている。10体以上見られる。
博士「見えたかな?」
ロバート「わかりません。ゆっくり回っているのが..」
ロバートは顕微鏡の焦点を調整した。動き回る球状の生き物が、はっきりと見えた。
博士「そう、それだよ」
ロバート「真ん中にいるものですか?ああ、これですね!」
博士「何かがふ化したんだよ」
ロバート「雑種..雑種幼生でしょうか?」
博士「そうであろう、と期待しよう」
二体の球状の生き物が、動いている。
博士「驚いたよ。既に10個動いている。予想外だ。その他の個体はもうふ化しているのではないだろうか。今、見つけたいね」
動く速さは様々だが、どれもが動いていた。
博士「いいね。1-2個取り出せたら、写真を撮ってくれないか?」
ロバート「ここにディッシュがあるので、入れて良いですね?」
博士「ああ」
博士「幼生を手に入れたよ!」
物静かな雰囲気の技術員が、薬品をプレパラートに塗りつけている。先の物体をスポイトでとり、プレパラートの上に静かに垂らす。
技術員「スライドグラスの上に、カバースリップで支えるようにして、生物を殺さずに押さえます」
技術員が、余分な水をスポイトで吸い取る。
技術員「グラスの縁に乗せます。中に小さい白い点が見えていますね。泳いでいる小さいやつですよ。余分な水を除きます。スライドを乗せて挟み込むんです」
丁寧に、スライドグラスをその上にかぶせた。
技術員が画像装置と連結した顕微鏡に乗せて、博士は観察した。
技術員「これで良いですか?」
博士「いいね。中空のボールの形をした、細胞だ」
拡大された映像の中で、半透明な膜状の物質をまとった白い球体が動き回っている。
ロバート「ヒトデの卵がウニの精子と受精してできたのですよね?」
博士「そうだ!どんな形の雑種が得られるかはわからない。父型か、母型か、混合型か..様子を見ないとわからないね」
技術員が顕微鏡の台を操作する。
洋梨に近い形の細胞が、同じ場所を回っている。
博士「原腸形成か、単にねじれた胚だね。球形ではないね。腎臓の形をしたのう胚..新しい科学の世界さ」
技術員「もっと良い映像を見られますよ」
博士「ああ..もっと幼生を取り出してみよう。時間のかかる作業になるがね」
博士は、よし!と声を発し、部屋を出た。技術員は監察を続ける。
技術員「見てみましょう」
別の拡大画像が出る。数個の大きさの異なる球体が集まった細胞が、写っている。
技術員「美しい!長い繊毛が出ていますね。繊毛が周りに広がっていますよ。他のも見てみましょうか?」
ロバート「おねがいします」