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瀬尾まいこさん『私たちの世代は』感想
相変わらず、瀬尾さんは優しい世界を描いてくれる。でも、今回は優しいだけじゃなくて、コロナとか、誰かの心ない言葉とか、そんなことに苦しむ人たちの葛藤が描かれていて、だからこそ刺さる部分も大きかった。
冴ちゃんのお母さんが究極にかっこよくて、蒼葉くんの才能を人のために使う優しさと逞しさに唸って、冴ちゃんみたいな先生がいてくれたら皆どれほど救われるだろうと思って、心晴ちゃんとお手紙の相手の関係性があまりに素敵で。
瀬尾さん作品の登場人物は、いつだって魅力的で、会いたいなと思わせてくれる、そんな人たちです。
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「俺は大事なものも未来も何にもないから、何でもできるよ」
蒼葉は「さ、食べて」とパスタを出してくれた。生クリームと胡椒だけで味を付け、大葉がたくさん載ったパスタ。わたしは蒼葉が作るこのパスタが大好きだった。
「イメージで決めます。清塚くんはさっぱりしてるのでオレンジ、冴はのんびりしてるのでリンゴ、私は美しいのでブドウ」
私にとって、小さいメモでのやり取りが、唯一の会話で、学校生活のすべてだった。
わたしはなんだって楽しくしてしまうお母さんが、眠そうなのに「いってらっしゃい」の時だけしゃきっとした声を出し、「おかえり」の時にすごくうれしそうな顔を見せてくれるお母さんが、大好きだった。
泣いていても時は進む。どれだけ悲しい出来事が起きても、大事なものを失っても、止まるものは何一つないのだ。
教師になったら、わたしは子どもたちに、「しんどいなら学校くらいいくらでも休んでいいよ。だけど、来たら何かいいことがあるって、誰かが待っててくれることは知っておいてね」と伝えたい。