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「なぜ、酒なんかのむの?」「忘れたいからさ」

【酒のみ】
国語辞典を引いてみて欲しい。
愚か者、人間のクズ、たわけ、人でなしと書かれているはずだ。書かれていない辞書は少しおかしい。何かしらの圧力がかかっているに違いないので、直ちに処分したほうがいい。酒のみの肩書をもつ僕が言うのだから間違いない。

かつて、ロシアの大統領が「しらふが正常!」というスローガンのもとに禁酒運動を進めた。言葉遊びはともかく、ぐうの音も出ないほど正しい。ぎゃふん!なぜなら1ミリも間違っていないからだ。1ミリも飲まないほうが身体にも世界平和のためにもいいに決まっているのだ。それが証拠に、酒を飲むことが立派な行為だとするならば、酒のみは職業として成り立っているはずだ。

日本中世界中から愛されて止まないこの酒のみたちは、先進国日本では合法的に動き回ることができる。週末の常磐線最終電車などはゾンビ映画さながらのロケーションであり、日本を代表する重要無形文化財のひとつになっている。
そんな酒のみが愛される素敵な理由を集めてみた。
1.からむ
2.声がでかい
3.ハラスメントをする
4.遠慮がない
5.ところかまわず寝る
(ポン太しらべ)

だが、一見無敵のように見える酒飲みたちにも敵は存在する。

【二日酔い】
もう一度国語辞典を引いてみて欲しい。
愚か者の自業自得、身から出たサビ、因果応報、と書かれていないだろうか。書かれていない辞書は少しおかしい。何かしらの圧力がかかっているに違いないので、直ちに処分したほうがいい。
もう二度と昨夜のような深酒をしない!そう固く心に誓ったところで、酒のみの脳内では、再びその一滴を迎えることによって、それらの辛い記憶をデリートするという便利なプログラムが組まれてしまっている。

今朝も往生際の悪いウォーキングデッドはベッドから這い出すと、ともあれキッチンへ向かう。水が欲しい。一億払っても今まさに水が必要だ一億ないけど。今ならバスタブ一杯飲める。レバーを持ち上げ、水道の蛇口からコップに注がれるサラサラとした透明な液体。喉元を通過する際のまさに歓天喜地。

ヘレンケラーの受けたであろう鋭い衝撃が伝わってくる。
ウォーターーー!
うまい。ただの水道水が砂漠で見つけた井戸のようにありがたい。
この旨い水道水を飲むために、僕は今日も酒を飲みつづけるのだ。


(190日)

#エッセイ #コント部 #僕なりの幸福論 #毎日note #二日酔い #酒のみ #ほろ酔い文学

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