便秘、胸焼け、消化不良に役立つお腹マッサージ:内臓モービリゼーションについて
前置き:NYのWhole Foodsサプリメントコーナーでの出来事
NY FuncPhysio代表の 高田洋平です。
今日は胸焼け、消化不良、胃もたれ、便秘などに有効な内臓モービリゼーションのお話をしたいと思います。
先日行った Whole Foods で熱心にプロバイオティクスのサプリメントを探している方を見かけました。
プロバイオティクス(Probiotics)とは、人体に良い影響を与える微生物(善玉菌)、または、それらを含む製品、食品のこと。
「この二つは以前試したけど効果がなかったから、今度はこっちのを試してみよう!」みたいな感じで、ありとあらゆるサプリメントを物色していました。
なんだか数々のサプリメントを色々と試したものの結果は変わらず、また新しい物を買って、試そうとしているといった感じでした。
確かに腸内細菌を整えることも消化不良や便秘などの対策には大切なことです。(本文の最後にプロバイオティクスに関しての私見を書きました)
しかし、私の専門分野(理学療法)からみるとそれと同様に大切なのは、
臓器の動きをきちんと保てているか?
膨張・収縮を各臓器がキチンと出来ているか?
各臓器の開け閉めをする筋肉は硬直していないか?
またストレスがかかっていないか?
ということの方がより大切だと考えています。
そもそも内臓組織を形成しているのは?
そこで今日は内臓モビライゼーションについてお話していきたいと思います。
あまり知られていないことですが、臓器(胃、小腸、大腸、膀胱など)を形成しているのは筋肉組織です。
ポパイの筋肉である上腕二頭筋や腹筋などの筋肉(骨格筋)とは違う筋肉のタイプで平滑筋と呼ばれます。
またその臓器の管の開け閉めをしている括約筋も同様に「筋肉組織」です。
例えば胃を例にとってみますと、胃の外側は平滑筋、そして内側が消化に必要な粘膜組織で出来ています。そしてその入口と出口は括約筋でコントロールされています。
要するに内臓の大部分が筋肉なのです。
小腸や大腸にしても同じです。
平滑筋も括約筋も骨格筋とは多少細胞構造などは違いますが、同じ筋肉組織であることは間違いありません。
この筋肉組織が収縮したりリラックスしたりするおかげで消化物を混ぜ合わせたり次の臓器に送り出したり、消化物の逆流などを防いだりすることが出来るわけです。
内臓が硬くなる?「肩コリならぬ内臓コリ」
さて筋肉組織ということは、肩コリと同様、硬くなったり、凝ったり、癒着したりすることも当然あります。
そのために組織の動きが悪くなり、血流が落ち、本来の臓器機能を失ってしまうことが少なくありません。
具体的には消化不良、便秘、下痢、食道炎、ポリープ、ガスが溜まるなどなどです。
便秘になったり、慢性的な便秘の方のお腹を触診すると内臓組織が硬く凝り固まっていることが多いです。
また、胸焼けなどの逆流性胃腸炎に悩む方の胃の下部食道括約筋や横隔膜が硬かったりすることも大変多いですね。
肩コリならぬ、「内臓コリ」と言うのでしょうか。
「呼吸」は最強の内臓モビライゼーション
本来であれば呼吸や動作を通しして自然と「臓器マッサージ」などが行なわれ、その組織の恒常性を保っています。
呼吸を行なう横隔膜は、その1日2万回以上行なわれる呼吸のなかで内臓を常にポンプのように「マッサージ」し続けています。
「通常時の呼吸で吸気から呼気の運動で横隔膜が収縮すると腎臓の下縁が43mm動く」
Schwartz LH, Richaud J, Buffat L, Touboul E, Schlienger M. Kidney mobility during respiration. Radiother Oncol. 1994 Jul;32(1):84-6. doi: 10.1016/0167-8140(94)90452-9.
通常の呼吸だけで腎臓は1日600m以上も動ごかされているわけです。
ところが過去の呼吸先生の「呼吸」の記事でも触れましたが、昨今その普通の呼吸が上手く出来なくなってしまっている人が多いです。
その記事で触れたように普通の呼吸とは“横隔膜が主体となって胸郭全体が広がる呼吸”が正しい呼吸です。
しかし、横隔膜をうまく使えなくなってしまうと横隔膜ポンプが使えず、内臓への「マッサージ」がうまく行なえず、血流の低下や内臓組織の停滞が起こりやすくなってしまいます。
よく足がむくんだりしますが、内臓も動きが止まるとリンパ液や体液などが停滞し、むくんだ状況になります。当然、通常の内蔵機能にも障害が出てしまいます。
正しい呼吸が出来ていないということはこうした内臓器官にも影響を与えていることもあるのです。
運動も内臓に取ってすごく大切!
さらに歩いたり体を捻ったりという運動も良い「マッサージ」効果を内臓に与えています。
「正しい歩行は体幹の回旋を使いながら重心を左右に移しながら進みます。この時に生じる骨盤底筋、横隔膜、などのインナーマッスルによって内圧の移動が歩行時に内臓マッサージを生じさせます。詳しくは歩行の記事を参照してください。」
呼吸と運動を通して内臓は常に芋洗されてるみたいですよね。
しかしながら、現代人は慢性的な運動不足に陥っていますので運動からくるマッサージ効果もほとんど無くなってしまっています。
例えば座っている時は当然こうした運動による「マッサージ」効果が無く、臓器の停滞が起こりやすいです。
職場、学校、家などで1日の大半を座って過ごす方は要注意ですよ。
New York Timesや他のメディアも頻繁に「座ることは喫煙と同様に悪い習慣」「一日中座っていることは癌の死亡率をあげる」等々の記事を頻繁に出してますよね。
呼吸や運動ではどうにもならない癒着の怖さ
手術後、外傷、胃炎や腸炎などによる繰り返しの炎症によって出来る組織の癒着などがある場合、瘢痕組織(はんこんそしき)と呼ばれるものができ、臓器の動きは著しく制限されますので特に要注意です。
例えば、盲腸炎(手術したしないにかかわらず)、帝王切開、子宮筋腫などの疾患が過去にあった場合、この瘢痕組織の形成は避けられないと考えています。
この様な場合、我々のクリニックでは、内臓組織の動きに制限がないか?または筋肉や筋膜組織へ癒着がないかなどを触診して、(必要であれば)治療を必ずします。
なぜなら呼吸や運動だけでは瘢痕組織のリリースは出来ないケースがほとんどで、また年数を重ねると瘢痕組織が周りの組織を巻き込んでしまっているケースが多いからです。
こうした癒着や内臓の凝りなどに有効な方法として内臓モビライゼーションという介入があります。
内臓モビライゼーションって何?
内臓モビライゼーション、内臓マッサージと言うとちょっと怪しい感じがするかもしれませんがそうではありません。
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