泳ぐ磁石、ネオンテトラはかく語りき|ふあんクリエイターの推理日誌
ネオンテトラ好きの進路
「ネオンテトラ」という名の、光沢のある青と赤のコントラストが美しい熱帯魚がいる。体長数cm程度の、小さな魚である。
先日、店の入り口に置かれた50cm四方程度の水槽に、たくさんのネオンテトラが泳いでいるのを見つけて、しばらく眺めていた。数十匹は入っていたと思う、光を受けた魚たちにより水の空間がチラチラとしていた。ふいふいっ、とヒレを揺らして身を交わし合う様子がなんとも言えない。
そして、わたしはそのからだの色味から、ネオンテトラを「磁石魚」と呼んでいる。理科を思い出しながら。
ある個体の赤い部分に、別の個体の青い部分が近づくとうれしい。N極とS極が引かれあっているな、と納得感が高まる。
逆に赤同士、青同士が近づいていくと、磁石のもつ法則を考えたときに、ちょっとした混乱を感じる。しかし、同じ色の部分が触れ合いそうな瞬間に、互いの魚がふいっ!とあさっての方向に散ったときはたのしい。そうそう、磁石的には反発し合うのよ、と静かなよろこびを見つける。
ネオンテトラが互いに近づいたり、寄り添ったり、自分の思うような方向に身をしならせて進む様子は、それぞれの方位磁石を持っているようにも見えた。
わたしの方位も定まったらいいのに、と抽象的な思いを抱いたが、多少針がクルクルしていてもいいではないかと考え直して、その場を後にした。具体的になにかを想像したわけでもなかった。
とりあえず、好きな魚を観察した、という事実だけで十分であった。哲学はしなかった。
[つづく]
いいなと思ったら応援しよう!
うさぎのおやつ代になります。(いまの季節は🍎かな)