陰暦七月の異称「文月」について
Ⅰ「文月」の語源と意味
陰暦七月の異称:
文月は陰暦の七月を指す言葉であり、読み方は「ふづき」または「ふみづき」です。
語源についての諸説:
農耕との関わり:『大言海』では「稲の穂のフフミヅキ(含月)」として紹介されています。これは、稲の穂が実る時期に由来するという説です。稲の穂が重く垂れる様子が、月を含むように見えるためとされています。この時期は農作物が成長し収穫を迎える重要な時期であることから、農耕との関わりが深いと言われています。
文(ふみ)との関わり:七夕の行事や文(手紙)との関連があります。七夕は、織姫と彦星が年に一度会う日とされ、書道や手紙を書くことが奨励される行事です。文月は「文ひろげ月」や「文ひらき月」とも呼ばれ、文を書くことや読書が盛んになる時期という意味があります。この時期には手紙を送ったり、詩歌を詠んだりする文化があったと考えられます。
Ⅱ「文月」の歴史的な記述
古典文学における使用:
『色葉字類抄』(1177-81):平安時代末期に編纂された辞書で、文月の語が見られます。
『大鏡』:平安時代中期の歴史物語で、文月の記述があります。
これらの古典文学において、文月は季節や月の名称として使われ、当時の文化や風習を反映しています。
江戸時代の歌謡や俳諧:
俳諧:井原西鶴や松尾芭蕉などの俳諧師が詠んだ句にも文月が登場します。俳句や連歌の中で、文月は季節感を表現するための重要な言葉でした。
歌謡:江戸時代の歌謡にも文月が使用され、庶民の間でも広く親しまれていました。
Ⅲ「まとめ」
文月(ふづき、ふみづき)は陰暦七月を指す言葉で、その語源には農耕や七夕、文(手紙)との関わりがあるとされています。具体的な語源は明確ではないものの、稲の穂が実る時期や文を書くことが盛んになる時期という説があります。文月は古典文学や歴史的な文献においても広く使用されており、日本の季節感や文化を反映した言葉であることが分かります。
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