読書の際の「読者」・「作者」・「登場人物」三者間の一体感について
今回は、たとえば小説などを読む際に生じる「読者」「作者」「登場人物」の三者がどのように「一体感」を生み出し、読書体験を豊かにするのかについて考えていきます。
1. 読者と作者のつながり:時空を超えた対話
読者と作者の関係は、読書体験における最も特異なつながりです。作者が書いた文字を読むという行為は、一方向的に見えるかもしれませんが、実際には、読者の解釈や感情が加わることで「対話」に近いものが生まれます。
時間的・空間的隔たりを超える
書かれた作品は作者が生きていた時代や背景を反映しています。読者は現代に生きていても、その作品を通じて、作者が暮らした時代の空気や考え方を共有できます。
例: シェイクスピアの戯曲を読むことで、16世紀の価値観や人間関係を理解するだけでなく、現代でも通じる普遍的なテーマ(愛、葛藤など)に触れる。暗黙の共感と想像力の共有
作者が明確に書いていない部分は、読者の想像力によって補われます。この想像力を駆使する過程で、読者は作者の視点や感情に寄り添おうとします。
例: 三島由紀夫の作品では、美的表現や心理描写が豊富ですが、それをどう解釈するかは読者の自由です。こうして、作者の思想を読者が自分の内側で咀嚼し、新たな感覚を得ます。
2. 読者と登場人物のつながり:物語世界への没入
登場人物は、物語世界の住人でありながら、読者にとっては「自分自身の一部」と感じられる存在になることがあります。このつながりは、読者が物語に没入する重要な要素です。
共感を通じた感情の共有
登場人物が経験する出来事は、読者自身の体験や感情と重なり合うことがあります。これにより、読者は物語の中で「自分もその世界にいる」と感じるようになります。
例: 宮部みゆきの推理小説では、登場人物の細やかな心理描写により、読者は事件の被害者や加害者、探偵の感情を追体験できます。自己投影と自己理解
登場人物はしばしば、読者が自分を見つめ直す鏡となります。読者は登場人物の選択や葛藤を見ながら、自分自身の価値観や行動について考えるきっかけを得ます。
例: 『吾輩は猫である』の猫という視点から人間社会を観察することで、読者は自分の行動や人間関係を新しい視点で捉えることができます。
3. 作者と登場人物のつながり:創造と投影
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