大人の「まちたんけん」をしようじゃないか
小学生のころ、「縦割り授業」があった人、いるんじゃなかろうか。
「そんなのなかったわ!」って人に説明すると、私の通ってた小学校では「縦割り班」という1年生から6年生で構成されたグループで、花壇の花を植えたり、給食を食べたりする活動をしていた。
「縦割り班」の中で一番のイベントが「まちたんけん」。
学区内の町内を回って、ミッションを達成するイベントだったと思うんだけど……(なんせ20年も前のことなのでうろ覚え)
そのイベントにそんなに思い入れはないけど、私は今も「まちたんけん」が大好きだ。上京してからますます好きになった。都内の街は、みんな空気が全然違って、その街のカラーが強いなあ、といつも思う。
目まぐるしく変わる渋谷や新宿のような街もあれば、なんだか落ち着く高円寺や神保町みたいな街もあって、飽きない。
私は、別に建築に詳しいわけでもないし、歴史が得意なわけでもない。ちょっと地理と買い物が好きなくらいでごくごく普通の会社員だ。それでも「まちたんけん」は面白い。
ある日の「まちたんけん」
仕事の日にぼんやりと、「休日、どっかに行きたいなあ〜」と思い始める。思った時が行きどき。
行ってみたいエリアをだいたい決めておく。行き先ははっきり決めない。
当日の気分と、星だらけのグーグルマップが頼りだ。
頭がくるったような、私のGoogleマップ。
とりあえず気になったところには星(保存済み)をつけることを10年近く続けた結果、地元も都内も星まみれになっている……喫茶店のマッチングサービスとかできそう(笑)
休日の朝、少し早く起きる。街に行くのは少し気合いが必要。いつもよりちょっとだけ丁寧にメイクをして、とっておきの服を選ぶ。
「まちたんけん」のときは、基本的に1人だ。
友人が一緒の時もあるが、大概、自分が歩き回りすぎてなんだか申し訳ない気がするので、1人で黙々とたんけんする。(もちろん、同行者がいるのは大歓迎なので、誰かがいるのが嫌というわけではないのでそこは誤解しないでいただきたい)
今日、向かう先は「蔵前」。
蔵前は、お気に入りの文具店「カキモリ」がある。でも、あまり巡ったことがなくて面白そう。ということで、今回のターゲットに。
「蔵前」に降り立つ日
蔵前駅に上陸。この懐かしいような、生活が根付いている空気、下町らしくていいな。
まずは「カキモリ」に向かう。
「カキモリ」のウリであるオリジナルノートを、実は作ったことがない。
私は、万年筆のインクを入れられるローラーボールペンがお気に入り。オリジナルのインクの色味が好き。いつかほしいと思っているカキモリオリジナルのガラスペンを眺め、店内を30分ほどうろうろする。
満足したので、外に出てなんとなくぶらついていたら、マスキングテープの専門店「mt lab」を発見。
圧巻、壁いっぱいのマスキングテープ。勢いで、店舗限定の暗闇で光るマスキングテープをゲット。
またあてもなく歩き出す。
(ここからは心の声)
これ小学校かな? 私にとっては知らない街でも、ここで生活を営む人もいるんだよなあ……
あの本屋、傾いてない? よく維持できてるな、いや無理矢理維持してるだけか?
細い路地、工場みたいなところも多い。生活と仕事が一体している感じ、いいなあ。
こんな街中でも自然があるのいいなあ。
隅田川で見つけたボート。
さらに歩いていたら、川に出た!
この川って、隅田川? 川の遊歩道を歩きながら、このまま歩いて行ったら浅草に出る?
屋形船、人乗ってるな〜! ここにいるのは、カモメか、それともウミネコ?とんびじゃないよね。
そよぐ風が気持ち良くて、ずっと歩いてられるわ……
川から一旦離れて歩いてみると、立て看板が。
蔵前は江戸幕府の御米蔵があったところらしいぞ。ここが米蔵だったのかあ。
米蔵が並ぶ光景を想像して、ふと山形県・酒田の「山居倉庫」を思い出す。昔はこんなかんじだったんだろうか……
おそらくわからない方がほとんどだろうから、これね。
文字数の関係で省略するが(笑)そんな感じで、考えをめぐらせながら、1日を贅沢に使うのが私の「まちたんけん」。
大人の「まちたんけん」の醍醐味
大人の「まちたんけん」の面白さは、
・街の歴史や地理を知ると妄想が膨らむ
・未開拓の地を開拓するワクワク感
・人間ウォッチング
・自由を実感する
・夜散歩も面白い
だと思っている。
・街の歴史や地理を知ると妄想が膨らむ
写真は山形県米沢市の駅前と香川県琴平町琴平駅前。
それぞれの街には、立て看板やマンホール、そこらじゅうに歴史や地理に関するヒントが散らばっている。昔の人たちの暮らしの姿、土地の様子を想像することで、その土地の深みを味わえる。
歴史を知ると、その土地の住人たちの生活や文化にさらに興味が湧く。
電車にスイカで乗れなかったり、知らない食べ物が売っていたり、自分の知らない文化がそこにあることが愛おしくて、ほっこりする。自分では人見知りだと思っているけど、多分、案外人好きなんだろうな。
帰ってから調べると、誰々の出身地とか生活に元々の地理的特徴が生かされているとか、そんなことが判明して、さらに深みにハマる。自分が住んでいる姿を想像しちゃったら、妄想が加速して、ブワッて広がって、そしてズブズブに浸る……
・未開拓の地を開拓するワクワク感
開拓の地、北海道の小樽運河。
「まちたんけん」の日は、さながら「開拓民」になったかのよう。
知らない土地を開墾しにいくんだぜ、げへへ……あ、開墾したら農民か。
新しい土地で一発当ててやるぜ! これだとゴールドラッシュか。
まあ、でもそんな感じの心持ちで向かうから。
ワクワクもあるけど、この街と対峙してやるぞ、っていう挑戦的な気持ちかも。
・人間ウォッチング
井の頭恩賜公園(通称イノコー)は人間ウォッチングが捗る。
昔から人間ウォッチングが好きで、趣味悪い趣味だね、って酷評されてる。
それでも、その土地の人間の営みをみるのが好きでやめられない。
カフェの窓辺に座って、「あの男女はまだ付き合ってない微妙な関係そうだぞ」とか「男子大学生の集まり元気だな、酒には飲まれるなよ」とか考えちゃう。うーん、本当に趣味悪いな。
つい街の人の年齢層や活気、お店なら客層をチェックしてしまいます。やっぱり街の雰囲気を形成するのは人なので。でも、この街だからこそ、一定の層がやってくるってパターンもあると思う。
街が人を集めるのか? 集まる人が街を作るのか?
・自由を実感する
故郷、秋田県秋田市。知らない街とは正反対。馴染みの土地。
知らない街に行くと、自分を知っている人が誰もいない、自分の存在を証明してくれる人がいない。
よその街にお邪魔して、歩き続けて、その街に溶け込んだとき、「ああ自由だなぁ」としみじみ思う。誰も私を知らない、でも確かにこの街に馴染んでいる。いろんなしがらみや物事を一旦全部下ろして、身軽になれる。
・夜散歩も面白い
夜の喧騒が楽しい街、下北沢。
子どもの「まちたんけん」じゃこれはできないからね。笑
夜の景色を見るのもまたオツなもので。
街は、昼と夜で異なる景色を見せる。
観光地だと9時くらいで店が閉まっちゃって真っ暗になったり。夜の住宅街の灯りが人の営みを感じさせたり。ネオンがまぶしくて、夜こそいきいきする街では、つい自分もテンションが上がったり。
気持ちが落ち込んでいる日は、夜のひんやりした空気が心地いい。落ち込むだけ落ち込んだら、あとは上がるだけ。だから、落ち込むときはとことん落ち込んでおく。夜の空気は、落ち込む気持ちにじわじわ染み込んでいく。
仕事で落ち込んだ日は、仕事帰りに夜の喫茶店で過ごして、夜のざわざわ感を思う存分感じてから帰宅することもある。
大人だからこそできる、夜散歩、私は好き。(くれぐれも安全面には気をつけて)
大人の「まちたんけん」はこれからもつづく
大好きな鎌倉の街にいた、なんだか狂気を感じるやつ。
コロナ禍で遠出するのも少し躊躇するけれど、2021年の春は今しかないから、ちゃんと対策しつつ、「まちたんけん」を楽しみたい今日このごろ。
「まちたんけん」は、別に遠くに行かなくても良くて。
知らない街も楽しいけど、何度も行っている街で新たな発見をするのも、それはそれは幸せなひととき。
そんなこんなで、これからも、私の「まちたんけん」はつづくのです。
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