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魯肉飯のさえずり、舌の語り
外国で暮らすということ。
文化の異なる人と生活を共にするということ。
そうして生まれた子どもたち。
台湾人の母と日本人の父との間に、日本で生まれ育った桃嘉は、学生時代に付き合っていた彼からのプロポーズそのままに若くして結婚する。美男で優しい理想の夫・・・のはずが、桃嘉は持病の頭痛が取れない。
台湾のおばあちゃんの家へ行けば毎回たらふく出てきた魯肉飯、日本で手に入る材料で日本風にアレンジしていた母の魯肉飯。台湾の代表的な家庭料理とされる魯肉飯、自分も大好きな桃嘉が新婚家庭でチャレンジすると、夫は「日本人の口には合わない」と言う。
(えええーっ?なんでー?魯肉飯、おいしいのに???・・・という心の声はさておき。)
そう、これは「魯肉飯」に限ったことでも、人種や国籍の話でもなく、人と人とのお話なのだと気づく。妻と夫、母と娘。友人同士。
自分の育った環境や大好きなもの、言葉や外観、習慣や服装、文化、そして大切なものは、それぞれが違って当たり前。同じ日本人同士だって、お料理の味付けが違うことはいくらだってあるだろう。違うことをまずはお互いに尊重し、関心を持ち、違いを受け入れること。
その桃嘉自身もかつては、言葉のつたない母を疎ましく思うこともあった。あまり溢れる愛情を娘にはねつけられる母の悲しみに涙し、わかっていながら行き場のないイライラをぶつける桃嘉にもまた深く心を痛めた。
私は残念ながら自分の子どもを持つ機会に恵まれなかったけれど、外国に暮らして結婚して子供を持つ、そこにほのかな、いや確かな憧れがあったことは否めない。現実には、いいこと、楽しいことばかりではない、むしろ、ほんの小さなうちから自らのアイデンティティを問うことになる子どもたちにとっては、決していいことづくめとは言えないだろう。
それでも、さまざまな葛藤を抱え、悩み、苦しんできた桃嘉ちゃんの、凛とした美しさに惚れ惚れとした。
とりあえずは、魯肉飯を作ってみようか・・・。
魯肉飯のさえずり
温又柔 著
中央公論新社
https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/08/005327.html
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Fumie M. 01.06.2021