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甘いは正義

おとーさんは、甘いものが好きだ。お団子やべこもちはひとりの時も買い食いしているようだし(残っていたレシートで確認)、プリンやチーズケーキなどおいしそうに食べる。スーパーに行けばさつまいもやかぼちゃをカゴに入れ、コーラをチョイスする。

でもわたしがこどもの頃は、おとーさんが甘いものを口にしているところは見たことがなかった。ジュースも飲まなければ、わたしたちのお誕生日のケーキもひと口付き合い程度に口にするくらい。勤め先でもらったお土産のお菓子は、わたしたちのおやつだった。かぼちゃやさつまいもも、好んで食べているという感じではなかったと思う。

そんなおとーさんがいつの頃からか、甘いものを口にするようになった。今思えば、認知症を発症した頃と重なる気もするのだけれど、どうだっただろう?それにしてもはじめてコーラを自ら買って飲むのを見たときには、びっくり仰天したした。「甘いものは女こどもが食べるもんだ。」って言ってなかったけ??と。それからというもの、おとーさんが甘いものを食べているのをたびたび目にするようになった。

かぼちゃやさつまいもは、こどもの頃に畑でおじいちゃんとおばあちゃんが作っていてくれていたらしく、「おいしいなぁ」と思って食べていたということをよく話してくれる。歳をとると味覚がこどもに戻るのかな?とにかく甘いものは喜んで食べる。

そんなおとーさんの一番のお気に入りは、杏仁豆腐。だから帰省したときには、おやつに作るようになった。「きょうのおやつは杏仁豆腐だよ。」というと、パッと顔を輝かせて目を細めながらおいしそうに食べる。まるでこどもみたい。認知症だからか歳を重ねたからなのか感情の表現がストレートで、わたしもうれしくなって、また作ろうと思う。すごくいい循環。

きっと、甘いは正義。

あの笑顔が見たいから、帰ったらまた杏仁豆腐を作ろう。

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