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村山由佳さん『PRIZE』の圧倒的な存在感!
王様のブランチのブックコーナーでのお話や、魅力的で目を惹く豪華な装丁に導かれるように購入してしまった一冊。
連休中にゆっくり読もうと思ったのに、つい一気読みしてしまった。
今もまだ、小説の中に出てきた情景を頭に思い浮かべてしまうほどの余韻を感じる。
臨場感、登場人物達の迫力、そして、
「どうしても、直木賞が欲しい」の力強さ!
その勢いで、一気に読ませるだけのパワーを感じた。
こんなに本からパワーを感じたのは、久しぶりの感覚だったかもしれない。
ストーリーの主軸が、直木賞をとりたい人気作家と編集者の話だったので、読まずにはいられなかった。
そのものすごいリアリティに、ヒリヒリしたけれど、それにも増して、得体の知れない力に引っ張られるような感覚を覚えた。
とくに私は、以下のポイントが心に響いた。
・仕事でわかりやすい評価が欲しい(承認欲求)
→幼少期に厳しい両親に育てられ、褒められず、粗探しばかりされ続けた自分と向き合う。
私も少なからず、何らかのわかりやすい評価を常に求めている。
そして、常に満たされることがない…。
人生いつも、その繰り返し。
・仕事相手との距離感(もし推しと仕事したら?)
→仕事のクライアントとは、仲良くなりすぎてはいけないのかも。適度な距離感が大切。
とくに自分の推しと仲良くなって、仕事はしない方がいいのだろう。
余計な感情が生まれすぎてしまう。
突き詰めすぎると「同担拒否」までに発展する可能性をはらむのかも。怖い…。
やはり、推しは推しのままがいいのだろう。
・価値観のアップデート
→昨今のテレビ局の話も娘と話すと、自分の感覚とのズレを感じることがあった。
主人公の天羽カインと同世代の私は、カイン側の感覚に近い。
でも娘と話すと、若手編集者の緒沢千紘の感覚を気づかされる。
年齢的に、注意してくれる人が減り、有名作家ではない自分も「裸の王様」になり得る可能性は、いくらでもあると思う。
娘の世代の感覚を教えてもらい、肝に銘じなくてはいけないと思った。
・小説の構成力と表現力に圧倒
→ここまで一気に読ませるほどの筆力。
光景を思い浮かべやすい表現の数々。
あらゆるテーマを盛り込みつつ、読書を置き去りにせず、目的地へ連れて行ってくれるような安心感と同時に、どこに連れて行かれるんだろうというワクワク感も大いに感じられた。
読み終わった直後の今も、すぐにでももう一度読み直したい気持ちになっている。
作者の村山さんのインタビューにも「何度も読みたいと思わせたい」とあったが、まさにその通りの気持ちになった。
あー、大満足。
装丁も素晴らしい!
タイトルのキラキラ文字も大好き!
世代かな…。