卒母の日までは 〜とびきりのミルクティーを淹れてちょうだい
期末テスト中のムスメにとって、楽しみは食べることとセカオワを歌うことに限られている。早起きして朝食前にも勉強しているくらいだから、切羽詰まっているのは確かだろうし、せめてそのくらいはわがままを言われても、、歌が半音ずれてるのを忠告したくてもじっと堪えて。
はっきりとした性格のムスメがまさかセカオワにハマるなんて思ってもみなかった。深瀬くんについてあれこれとリサーチし、曲の書かれた背景を教えてくれる時は、私に見せている部分よりもずっと奥深くに隠された心理をぶつけられたような気がして、多くを語らない彼女の中に膨らむ疑問や生き方をセカオワの歌詞から学ばせてもらった。
親なんて、高校生まで大きな問題もなく無事に成長したムスメに対して、本当に限られたわずかなサポートしかできないものだと、常々思っている。きっと彼女の中にはたくさんの葛藤があったはずだけれども。
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『お昼は何?』『そろそろおやつの時間だけど』
仕事と勉強、お互いに別のことをしているわけだけど、せっかく家にいて時を過ごせるのだからできる時には希望を叶えたいと、なるべくリクエストに応えるようにしている。
考えてみたら、あと1年強で宣言していた卒母の時期を迎えるのだから。
ムスメの第一志望は家から通える大学のようなので(実はどこが本命なのか詳しくは知らない)ひとり暮らしをする予定はまだ現実的ではないけど、いざどんな時でも独り立ちできる人間になってほしいという私の願いを込めて、卒母は彼女が幼稚園に通っている時から言い聞かせてきたことば。
本人もそういうものだと受け止めて、あと1年はしっかり甘えておかないとね、といって、歯の矯正といった金銭面でかかりそうなものは早々に親にプレゼンをして、高校卒業までに終わる計画。運転免許は大学生になってからか、高校3年の春休みに行くかと目下考え中らしい。
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『お母さん、とびきりのミルクティーを淹れてちょうだい』
どこかのお嬢様に話しかけられたのかと思ったら、ムスメからのリクエストでした。
はいはい、いくらでも淹れますとも。
お疲れの頭と体をほっこりと休ませてくれるロイヤルミルクティーを淹れましょう。
今日は丸みのある甘さのアッサムCTCを使おう。
粒々のCTCは封を開けると辺りを包み込むような香りが広がります。よくアッサムはモルティ―フレーバーと表現されるけど、私にとってはぽってりとしていて一瞬では消えない黒砂糖のような、大地の香りのような印象なのです。
濃厚なミルクたっぷりのロイヤルミルクティー
【手順】
①小鍋に200ml弱のお湯を沸かす
②茶葉を耐熱容器に入れ、熱湯をかけて開かせる
③先ほどの小鍋のお湯に、次は400ml程度の牛乳を足して沸かす
④ここで砂糖を入れるのがポイント!牛乳の膜ができにくくなります
⑤鍋の牛乳とお湯がふつふつと泡立ってきたら、火を止めて茶葉を入れ、ふたをして5分ほど蒸らす
⑥茶こしで茶葉を漉しながらポットに移し替える
⑦完成
茶葉を直接鍋に入れてしまうと、牛乳に含まれる「カゼイン」が茶葉の表面に膜を張り、抽出しにくくなってしまいます。
また脂肪分も茶葉に絡むため、こちらも開きにくくする原因です。
そのため、先に茶葉をお湯に浸し、開かせるひと手間が必要です。
ブルー系が好きなムスメに
ロイヤルアルバート(Royal Albert) Enchantment
私は
ロイヤルアルバート(Royal Albert) Sweet Violet
にしてみました
ロイヤルミルクティーを飲み終えて
『カップもかわいい❕お母さんさすが』
気分だけでも盛り上がっていきたいから、楽しんだもの勝ち。
ムスメも私の操縦方法をしっかりと分かっている。お互いに笑顔が生まれる方法で接したい。
この笑顔を見られるだけで十分。
最近、特別なことをしなくても笑顔で美味しいと言える時間を少しでも多く共有したいと思うのです。
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さあ、あと1日でテストも終わり。残る科目は数学と化学で、『先生、マジで馬鹿じゃないのって思う。なんで最後に重いのを二つ一緒に組むんだろう』
さっきのお嬢様言葉はどこへやら。それでも頭を抱えながらも挑戦する姿は、高校生の鏡だね。
これが済んだら、もう受験生になるのね。中学3年の時は先の見えないコロナ禍に突入した最初の年。誰も彼もが不安に飲み込まれ、前例のない受験におびえながら過ごしていたのを思い出す。
本当は不安なんてすべて取り払って、万全の状態で受験シーズンを迎えたいけれど、コロナ前に戻ることはできないから。
私が不安顔を見せるのはやめて、ただただサポートをしていこう。
卒母前の大仕事、しっかりとやり遂げよう。
お互いに1年で卒業できますように、いや、きっとできる。そう信じて。
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でも、本当は知っている。
卒母と言ってきたのは、私がムスメに依存しないように、空の巣症候群になってしまわないために、ずっと自分に言い聞かせてきたんだって。
私自身がムスメの足枷にならないために。
親の生きてきた時代よりもはるかに速いスピードで流れていく今を生きるムスメが、私たちの古い考え方に縛られず、するりと親元から飛び立っていけるように。
私には私の人生があると、そう考えて前向きに生きられるように。