IKEUCHI ORGANIC 先駆者であり続ける
池内計司さんトークイベント「僕とオーガニックの20年間」
雨の6月14日、中洲川端にあるイケウチオーガニック博多店4周年記念イベントに参加した。
IKEUCHI ORGANIC 代表である池内計司氏から直接お話を聞けるチャンス。
noteを見る限り、随分とイケウチオーガニックのタオルを愛するコアなファンが多く、工場見学を行うといえば、予約が殺到し全国各地からタオルファンが集まる。皆名指しで職人の話を聞きたがり、代表や社長はガイド役に徹するほどとのこと。またタオルを愛用している方を紹介していく「イケウチな人」では、さらに新たなつながりを見せている会社。また社名にオーガニックとつけているにはやはり心構えが違うのであろう。
申し込み時には初の来店であること、そして正直まだタオルを手にしたことがない、noteの記事を読んで興味を持ったと書き込んだ。
イケウチオーガニックのタオル初心者の私が何を感じたか、そんなイベントレポートを書いてみることにした。
モノがあり結果としてストーリーが生まれる
「最近はストーリーのある商品という言い方をされることがあるが、そうじゃないんだ。モノがあり20年の歳月を経て、結果としてストーリーが生まれる。ストーリーは後からついてくるものなのだ。」
とIKEUCHI ORGANIC代表の池内計司氏は話す。
井上店長による代表紹介の途中で、ストーリー性のある商品という言葉が出た瞬間、それまでのにこやかな笑顔から一転し、ピリッとした雰囲気に変わった。井上店長の「すみません」で会場に笑いが起き、また穏やかな雰囲気を醸し出した。
そういえば最近ストーリー性を前面に出した商品が増えている。まかり間違えばストーリーを利用する形で付加価値として過分な価格をつけているものもある。ただそれでは話題として一度は購入したとしても継続利用は難しい。代表はそういったものとは一線を画したい様子。であるとしたらイケウチオーガニック初めてのオーガニックタオル「オーガニック120」が誕生してから20年、代表にとって商品とは一体どのようなものなのだろうか。
大手、松下の係長から無名の人に変わる瞬間をどのように捉えたのか。行ってみれば会いたい人には必ず会える手形のようなものを失い、そこからどのようにして信頼を得ることができたのか。そしてこれほどまでに愛されるブランドになったきっかけは?
作品
池内氏は松下のオーディオ部門「テクニクス」に12年携わり、それなりに有名な存在で自負もあったと言う。辞めた時にはヤマハやパイオニアから声がかかると思っていたがあてが外れ、その時点でタオルに専念しようと肚が決まる。
商品名についたナンバーの説明をする際、池内氏は作品と言い、すぐに商品名と言い直した。些細なことだが、商品一点ずつを作品として捉えているからこその言い間違いだ。趣味の分野、感動を与えるオーディオを作り上げてきたのと同じようにタオルにも作品としての愛情を持ち、向き合っている様子を感じた。
また品番のつけ方といい、よく知るお客様から「イケウチはテクニクスそのものだね」と言われる所以はここにあるそうだ。
環境に無知だった会社が
先代の社長亡き後会社を継ぎ、こんなタオルを作ってみたい、そう話すと
「お父さんが泣くよ」
理想のタオル像を訴えても、タオルの持つ既成概念を崩そうとすると反対される。変化を求めると叩かれるのはどの業界においても起こりうる。それでも先駆者でい続けるのはなぜか。
社長就任後、1999年のしまなみ海道開通に向け、特産品をPRしたい。
みかん、タオル、造船、生魚
この中で一般客に訴える意味でも今治タオルの持つ意義は大きい。
目玉になる良質なタオルを作るために新しい染色工場が必要。80年代瀬戸内アセスメントにより新規の廃水施設は15ppmの基準をクリアする必要があった。施設の廃水を流すと川の水がさらに透明になるほどの高基準であると言われる。
環境大国デンマークのNOVOTEX社ノルガード氏の突然の来訪。日本でこの品質を作ることは無理だと告げると、より高度な染色工場が日本にあると知り、やって来たのだった。
ノルガード氏との出会いが合理的かつ安全性のデータに基づき環境に配慮した商品を生み出すきっかけになった。
「天の恵 ”綿” に枯葉剤を使うべきではない」
当時枯葉剤という言葉を使っていたのはイケウチタオルとパタゴニアのみ。
広大な土地を利用した綿花栽培を効率のため枯葉剤で一気に枯らして刈り取りを行う手法。環境に関心のある方には覚えのある悪名高い商品名が出てくる。許可なく誰もが購入できるのは世界広しといえども日本のみ。
それだけに日本は大国に弱い環境後進国ともいえるのではないか。
あえてキャッチコピーに鋭さをいれた理想のタオルは、日本ではほとんど売れることはなかった。
注目が高まったその時
海外での評価は高く、2002年 ニューヨーク・ホームテキスタイルショー2002スプリングでは最優秀賞受賞、当時の小泉総理方針演説内にも登場、続けてニュースステーションで取り組みが取り上げられ、国内でも大反響。
話題、期待感が最高潮に達し、新規取引も広がり、さあこれからだという時にまさかの主要取引先破産。
話題になる自社ブランドIKTのオーガニックタオル、それはOEM商品による売り上げがあってこそ。屋台骨が揺らいだ今、会社の方向性を決定しなければ。
そこで自社ブランドIKTを中心にした会社再生を目指す。
メッセージ性を持つお客様は困るんだよな ~頭取談~
「何枚買えばイケウチは存続できるのか」
商品は店を離れお客様の手元に渡ってからもなお育ちストーリーを作り続ける。売っただけでは終わらない、それが他のタオルとの違いだ。
メインバンクにもファンから電話がある。
日用品、消耗品の枠を超え、家族と共に暮らしに溶け込む、家族の歴史に刻み込まれたイケウチのタオル。
失ってからでは遅いと行動したファンの思いに応えたのがイケウチオーガニックだ。
こだわりのある商品作りが環境問題につながる
環境のためなら使い勝手は我慢、それがオーガニック精神?
そうではない。水を吸わない、洗濯すると水に浮かんでしまうタオルでは本末転倒、生活に根付くわけがない。
私たちが環境に優しいと思っている商品は果たして本物のオーガニックなのだろうか。
自然っぽい生成りの色が実は化学染料で染色された色であることなど、当時のオーガニック信者にはどれだけ伝わっていたのだろうか。
見てくれだけの偽りのオーガニックでは本当の環境保護にはつながらないのだ。
嘘をつかない
赤ちゃんが食べられるタオルを作る
この意味が分かる人はそうそういないはずである。
現時点でイケウチオーガニックが扱う全ての商品が、赤ちゃんが口に含んでも安心、タオル産業では初めてのISO14001取得を目指したあの日から、この精神は変わっていない。
さらには2073年までに赤ちゃんが食べられるタオルを作ると宣言する。きっと赤ちゃんがパクパクと食べてしまっても大丈夫なタオルがそのうち話題になるのだろう。
先駆者であり、成長し続けるイケウチオーガニックを愛し、私たちユーザーも同じ思いを持って進んで行けたら、小さな輪が広がり、ひいては環境保全につながるのであろう。
偶然
これまで幾度となく池内氏の口から現れる偶然という言葉、何かに導かれるように、困難であれども道が開けていく。本気でぶつかる人のもとには惹きつける力があるのか。
お客様の心にしか答えはない
お客様と話し、次に何を望んでいるかを察知する。メールはどれも必ず見ている、ハッシュタグの付いたものにもすべて目を通している。常にどんなものを欲しているか、次にどうあるべきかを考えている。
10月には毎回大人気の工場オープンハウスを開催予定。全国のファンが一堂に会し、お目当ての職人さんに質問し、さらにイケウチオーガニック愛が深まる。乞うご期待。
また、福岡店の次回イベントは
8月25日 日曜日
タオルドクター 阿部社長による タオルメンテナンスのワークショップ
こちらもお楽しみに。
最後に
一つのものを長く継続使用することは一番環境に負荷をかけないことでもある。日常に溶け込むモノに宿る命を大切に全うする。イケウチオーガニックのタオルにはこの心がある。
消費が美徳の時代から現代のインスタ映え、見栄えだけではない本質を求める意識が必要な時代。生きているだけで環境を汚している事実に気づき、人間の傲慢さを少しでも解消するために、大切なものを思い出をより大事にする気持ちでイケウチオーガニックのタオルを使っていきたい。
最後にじゃんけんに勝ち、開発中のタオルを頂戴した。まさかと思っていたので驚きを隠せなかったが、さらにすごいことに当選3名のうち2名がnoterであった。
忌憚なき意見を聞かせてほしいと直々に名刺も頂戴した。イケウチオーガニック初心者の私がこんな大役を仰せつかってよいのだろうかと恐縮したが、これはまたとないチャンスであるため、しっかりと使用感、改善希望点をお伝えしたい。
***
先日、友人に子どもが誕生した。授かるまでには相当の苦労があったと聞いている。遠く離れているためなかなか直接会うことは難しいが、イケウチオーガニックのタオルに手紙を添えて送ろうと思う。家族の一員に加わった赤ちゃんのそばにいる存在としてタオルも共に育っていってほしいと願っている。
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