6/4 箱〇古本市にて
6月最初の日曜日、筥崎宮の参道でおこなわれた箱〇古本市に参加しました。
参加の経緯
先日別件の打ち合わせをしていたところ、詩のソムリエ『渡邊めぐみ』さん
https://note.com/poezio_shokudou
から、筥崎宮で古本市が開催されるというお話を聞きました。
「まだ参加者を募っているみたいだけど、もしよかったら一緒に出ませんか?」とのお誘い。
実は私も大量の本があり、手放し方を悩んでいたところでした。とくにムスメが小さなころから読んでいた絵本や児童書、小説、年齢が上がっていくとともに、読みたいものも変わっていく、成長を嬉しく思いながらも手放す寂しさもあり、段ボールに詰め込んで保管していたのです。
めぐさんもまだ参加を決めかねていたそうで、1歳のお子さん連れで一人参加は大変です。私もこういった催しに出店するのは初めてで不安。お隣同士の区画にしてもらえたら一緒に店番ができるし、もしぐずった時も二人参加ならなんとかなる。またとない機会だと、参加を決めました。
子どもと本
今回、出店時から内々で決めていたことがあります。
それは子どもが自らお金を持って買い物しているときに、金額が合わないようであれば値引きするというもの。
もともとはムスメが読んでいたり、使っていたりしたもの。
当時は寂しいときのお供であり、楽しい世界を想像、創造するきっかけになってくれた本。興味の幅を広げてくれたものであり、学習面で大変お世話になったものたち。
捨ててしまうには忍びないけれど、もう年齢が高くなり今は必要としていない。でも新しい出合いがあり今からの子どもたちが読みたいと思ってくれるならば本の命を全うさせるためにつないでいきたい、と。
子どもたちが気になっていた本と出合い、目を輝かせてくれたらいいなと願いを込めて、キャリーケースや段ボールにぎっしりと詰めました。
果たして、その願いは叶うのでしょうか。
参加当日
当日は、いいお天気!そうなると熱中症対策を万全にしなければ。
ペットボトルのお水や梅干し、おにぎり、ウィダーインゼリー、念のための保険証とお薬手帳、諸々を準備して早々に会場へ向かいました。
9時30分ごろ到着し、車から荷物を降ろして受付に向かうと、ちょっとしたハプニングが発生。
でもそのおかげで新しいテントを一張立ててもらい、なんと筥崎宮に一番近い場所で出店できました。
テントの下はなかなか快適。周りの方はもうすっかり準備が済み、時間前にもかかわらずお客様が立ち止まり、本を眺めています。私も心地よい風が吹き抜ける中、日差しをよけながら本を並べ始めました。
会場には約80ほどの出店者。みなさん棚や引き出しなどを使ってオシャレにディスプレイして、何やら慣れている様子。
初出店の素人は段ボールしか持ってきていません。1日いても2~3冊しか売れず、全部持ち帰る羽目になるのでは?そんな弱気が頭をよぎります。
とりあえず分野ごと、作家ごとなどといった感じで見やすいように並べてお客さまを待ちます。
しばらくするとめぐさんも到着し、準備を始めます。
詩だけの古本屋さん、ムードもいいんです。まだ一冊も売れていないくせに、詩の本がほしくなる。減らないのに増やしてはいけないと言い聞かせ、我慢、我慢。
お店の前で立ち止まってくれた方にこんにちはと声をかけ、どんな本に興味があるのかなと想像して、ゆるやかに流れる時間。本を介してこんな会話ができるだけでも参加した意味があります。
そしてめぐさんのご両親、お子さんともはじめてお会いし、ご挨拶できました!
お母様からは筥崎宮で開かれる骨董市のことを教えてもらい、興味津々。鉄古の部屋という錆びた鉄製品ばかり扱っているお店のお話や、比較してはいけないようなものがなんでも均一価格のお店などなど。
人と人が顔を合わせると挨拶ができて、会話が生まれて、やがて心がほどけていく。
何年かぶりの感覚を取り戻していくような、やわらかい時間を過ごしました。
印象深い出会い
お天気も良く、あじさい苑の開園や満開の菩提樹も影響しているのでしょうか、大勢の方が足を運んでくださって、想像以上の盛況ぶりです。
おかげさまでたくさんの方が私のところで足を止めてくださいました。
しかけ絵本を試して楽しそうに声を上げる方、座り込んで見ていかれる方、中身をずっと読んでいるので、そのまま立ち読みで終わるのかなと思ったら、ほぼ読んだその本をお買い上げくださった方。
少し前のしいたけさんの本を手に取られたので、「明日からしいたけ占いが読めなくて寂しいですね」と声をかけると、毎週月曜のお昼、しいたけさんに励まされてたんですよ」と言って買っていかれた方。
かいけつゾロリの本を見つけ、持っていないのだからほしいとおばあちゃんに言ったものの、ほかのお店も見て回ってからにしなさいと言われ、再度戻ってきたときに「あった!」と声を上げ喜んで買っていった少年。
たった数時間に、本を通じてたくさんの出会いがありました。
その中でも印象深い出会いがありました。
ペネロペのしかけ絵本
最初のページから大事そうにそっと動かしてかわいらしい声を上げている女の子、12~13歳くらいでしょうか。
たくさんの方が手に取って矢印部分を動かしたり、引っ張ったりしていましたが、こんなに大事そうに扱っていたのはこの子が初めてです。
子どもに限らず大人でもハラハラするような扱いをする方も見受けられました。この子ならきっと大切にしてくれるだろうと確信し、彼女から「いくらですか?」と声をかけられたときに1000円の値札を書き換えて800円にしました。
「大事にしてくれそうだから800円でいいですよ」と伝えると、
「見た時から気になって、かわいくて、本当に欲しかったんです。ありがとうございます」とそれまで以上に顔がパッと明るくなり、喜びを満面で表現してくれました。
大好きだったペネロペは、きっとまたあの子のところで新たな思い出を作ってくれるはずです。
寝る前5分ハンドブックなど3冊
お店の前に立ち止まること3回。4回目にしてお友達と一緒に来店してくれました。
手に取るのは参考書ばかり、パラパラと中身を見はじめました。何冊か見て1冊を選んだようでした。
値段を気にしているのかな?と感じたので、「実はね、うちのムスメがこの参考書を使って〇〇高校に合格したから、これは縁起もの。さっき見ていた2冊と合わせて300円でいいよ」と伝えました。
すると、「そんな、悪いからいいです」と遠慮するんです。うちではもう使わないから、気にしないでと言うと「それなら400円払います!」と彼女から申し出が。
それならと私も400円を受け取り、3冊の参考書を手渡しました。
あの参考書できっとあなたも志望校に合格するよ、間違いない!
科学漫画サバイバルシリーズ 実験対決
びっくりするほどの量のポテトを手にして現れた女の子。さっきの参考書の子と一緒に来てくれました。
来るなり、「おーっ!実験対決だー、これ持ってない、ほしい!いくらですか?」と一気にまくしたてる。
「それね、500円。でも…」
こちらが続きを言おうとする前に「あー無理だあ、全財産270円しかない。ポテト買っちゃったからなあ」と落胆の声。
「それなら250円でいいよ」と言ったものの、全財産に近い金額を払わせてしまうのはいけないと、もう少し値引きを考えていたら「マジですか?そしたら270円払わせてください」と言って、マスクの空き袋に入れた小銭を全部出し、私に手渡します。
「お金全部使ったらまずいんじゃない?」と聞き返すと、「大丈夫です、あとは帰るだけだから」と。
本当にいいのと念押ししても、大丈夫だというので、彼女の全財産270円を受け取り、本を手渡しました。
すると、さっきよりもはるかに大きな声で「この人めっちゃいいひとー、ありがとうございます!!!」と言って周りに聞こえるようにお礼を伝えてくれました。
これにはめぐさんもお母様も大笑い。
ポエジオじかんのおともだち
めぐさん主催のポエジオじかん(毎月のテーマに沿った詩を読み、参加者が感じたことそのままに話す会)で一緒のお友達も来てくれました。みなさん、紅茶の会にも参加してくださった方々です。
美味しそうなクレープを食べながら、いつのまにか店番を変わってくれていたキドさん、自転車でさっそうと駆け付け、たくさんの本と出合ったオオノさん、別のイベントで知り合った方と誘い合って来てくれたおはるさん、本だけでなくあじさい苑やお宮もたっぷりとみられて大満足だったたづこさん。違う場所で会うと、それぞれが楽しそうに生き生きとしている姿を見られてまた新鮮な気持ちになります。わざわざ予定を合わせてきてくれる気持ちがとてもうれしいんです。
最後に
今回、箱〇古本市に出店して、感じたことを書きました。
実は、小学生の頃、図書館司書に憧れていました。大学時代には一般企業に就職する意思を持ちながら、資格まで取得したのだから、やっぱり本を通じて何かを伝えたい気持ちが大きかったのかもしれません。
今回はほぼ子どもと子育てに関する本を並べていたので、ほかの出店者とは違った客層の方の目に留まったのかもしれません。子どもに限らず大人も絵本を開いて笑みを浮かべる。不思議そうな顔をする。子育て本のタイトルを見て驚いた顔をする。
本を介して表情や会話で見知らぬ方と交わり、楽しい時間を共有できました。とても清々しい気持ちになれたのは、足を止めてくださった方、本を手に取って、さらには買ってくださった方たちの心が感じられたからだと思っています。
隣のめぐさんのブースにも多くの方が訪れて詩の本を手に取り、めぐさんの活動に興味を持ってあれこれ質問する姿を見られました。
詩に興味を持っている方、好きな方がこれほどたくさんいるんだと、対面する方々を通して実感でき、私も大きな気づきが得られました。
今回、驚いたことがあります。それは、値切り行為を誰一人としてしなかった点です。
みなさん、「見てもいいですか?」と声をかけて本を手に取り、パラパラとめくったり数ページ読んだりして判断していきます。まるまる立ち読みをしてそのままいなくなってしまうような人はごく僅かでした。
それだけ、本を好きな方が集まっていたんだなと、暖かい気持ちになりました。
以前某フリマサイトに出品し、見知らぬ相手からの度重なる値引き交渉コメントや〇〇円なら買いますといった自分本位な態度に辟易していました。
このイベントを知り、申し込みから参加まであわただしいものでしたが、それも本が好きな方たちとの出会える機会を逃してはいけない、気になったときは行動だという今年の抱負にもつながっていたようです。
大切に読まれてきた本がまた次の人の手に渡っていく場を作ってくださった箱〇道実行委員会の皆様、本に敬意を払い価値を感じながら手にしてくださった方々に感謝しています。
きっと皆さんの住む場所でも、このような市が開かれていると思います。
本好きの方が集まる古本市に出店、または遊びに行ってみてはいかがでしょうか。
きっと良き出会いが、出合いがあるはずです。