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文豪だって怖くない【#推しのコミックエッセイ】
虫ギライの方に朗報。
猛暑が予想される今年の夏は、暑さに耐えきれず虫が減少する可能性が高いんだそうだ。
昨年、睡眠中にムカデに咬まれた身としては、
虫の少ない夏は歓迎である。
さて、虫が出てくる名作といえば、フランツ カフカ・著『変身』ではないだろうか。
ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
という有名な一文からはじまる、主人公がある日突然、昆虫になってしまった為、家族に疎まれ最後には…という悲劇に見舞われるお話。
全体的に重苦しく鬱々として、でも何か忘れがたい作品だ。教科書にも出てきたから、お読みになった方も多いのでは?と思う。
主人公が変身してしまう虫。
皆さんはこの虫、何の虫だと思っておられるだろう。
実は、人それぞれ違う虫を想像しておられるらしいって話、ご存知ですか?
ちなみに青空文庫、原田義人・訳では、
・甲殻のように固い背中
・何本もの弓形のすじにわかれてこんもりと盛り上がっている自分の茶色の腹
という表記があるため、私は勝手に芋虫を思い浮かべていた。
ベッドの上に蠢く巨大な芋虫。もう手も足も出ないってカンジで、私の頭の中で、うぞうぞとのたうち回っていたのである。
訳者によって使用する言葉が違うので、表現が変わってしまうのだが、そもそも著者のカフカは、「(挿し絵に)虫は絶対描かないで」と指示したんだそう。
確かに。挿し絵があると、想像力というか怖さが半減してしまうもんな。
そんな名作のプチ情報を提供してくれるのが、
久世番子・著『よちよち文藝部』。
日本文学や世界の名作のあれやこれやを著者の独自の目線で、ゆるっと面白楽しく描いたコミックエッセイである。
この本が楽しい。
漱石、太宰、芥川といった名だたる日本の文豪や、『罪と罰』や『老人と海』といった手を出しづらく感じる世界の名作たちを、かわいい絵柄と面白エピソードで紹介し、近寄りがたかった作品たちが身近に思えてくる。
作品1篇1篇が短いので、空き時間にさらっと読めるのも嬉しい。
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かつてnoteでも連載していたんですね…!知らなかった。
教科書に載ってるような名作ってね、肩がこるというか、自分のプライベートの時間にわざわざ読みたくないなぁ、なんて思ってしまう。
でもこの本は、こんな読み方もアリなんだねって、自由さを感じた。
楽しみ方は人それぞれだよね。
作品を知ってると楽しめる、知らなかったら知りたくなる、そんな1冊である。