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西門。夕暮れに極楽を思フ。

個人的にすすめたい、京都や日本文化をより味わうためのキーワード。
そのひとつが「西門(さいもん)」だ。

名前の通り、仏教寺院で西に向かって建つ門のことであり、中世から“西方極楽浄土”につながる門として信仰されてきた存在だ。西に沈む夕陽を見つめ、極楽浄土の教主である阿弥陀如来の御心を感じる【日想観(にっそうかん)】という修行が行われてきた聖域でもある。

日本で一番有名なの西門といえば、大阪・四天王寺。春分と秋分の日に、門の真正面に夕陽が沈んでゆく神秘的な場所として知られており、両日とも日想観の法要が行われている。

四天王寺の西側に位置する石鳥居(手前)と西門(奥の朱塗りの門)。石鳥居の扁額には「ここは極楽浄土の東門(=入口)」という意味の文字が刻まれている。(写真:photoAC)

四天王寺は聖徳太子が593年に創建した日本仏法最初の官寺。今でこそ、西門の先は住宅地として埋め立てられているが、かつては西門のすぐ先は大阪湾の海だった。西門から眺める夕日の神々しさは、今とは比べものにならないほどであっただろう。

なお、四天王寺は創建以来、仏法修行の場のみならず、薬局や病院、身寄りのない人たちをケアする施設も兼ね備えた“一大福祉センター”であった。それもあって、西門は病者や貧者、乞食などが救済を求めて集まり、極楽浄土への往生を願う場所となっていたと伝わっている。

そして、なぜ京都旅で「西門」がキーワードなのかといえば、世界遺産・清水寺にも西門があり、こちらもまた日想観の聖地として知られてきたから。といっても現在は、西門の石段を登ることも、門をくぐり抜けることも禁じられている(これすごく残念! )。背面からは門に近づくことができるので、閉門近くに訪ねる機会があれば、ぜひここから夕日を眺めてみてほしい。

余談だが、阿弥陀如来を祀るお堂は基本、東向きに建っている(参拝客が西=極楽を向いて拝めるように)。清水寺しかり、浄土宗総本山の知恩院もしかりだ。もちろん、ご本尊が阿弥陀如来の平等院鳳凰堂も。鳳凰堂は真西の方角に位置するため、春分・秋分のにはお堂の上に夕陽が沈んでいく。

仏教に興味があろうがなかろうが、夕日を眺めるひとときは誰にとっても特別な時間。ちょっと寂しくなったり、切なくなったり。でもとても綺麗で、明日への活力が湧いてきて。日々忙しくしていたり家のなかにいると、夕暮れや日没の時間をしっかりと感じることは少ないのだけど、きれいな夕日をじっくりと見れた日は、“一日がちゃんと終わっていく”ことを実感できて、なんだか「生きてる」って感じがするのは、自分だけだろうか。

できれば毎日、日没の時間は手をとめて日没を心ゆくまで眺めてみたいけれど、これがなかなかむずかしい。でも、できれば月1回くらいは、暮らしのなかで夕日を感じられたらいいな、と思う日々です。

好きなもの 2/100

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