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〈前編〉おもしろリジェネラティブとごきげんウェルビーイング!ソトコト編集長・指出さんに聞いてみた|LOCAL 2024 公開プレゼン レポート
目の前の人と出会い、話し、読み、食べ、心を揺らし、手を動かしながら、ゆるやかにまちの未来に関わっていく「ふくしデザインゼミローカル」。滋賀高島という“教室”で「まちをゆたかにするアイデアをカタチにする」をテーマに、3ヶ月間活動する実践プログラムです。
その公開プレゼンが、2024/11/2に滋賀高島で行われようとしています。
大雨で開催の危機?ふくしデザインゼミLOCAL 公開プレゼン
だけどこの日は、朝からバタバタとしていました。滋賀のみならず、日本各地からゼミ生と参加者が集まる公開プレゼン。大雨の影響により、電車の運休が相次いだのです。
「湖西線が16時に運休予定」「新幹線が小田原で止まっています」「プレゼンに間に合いません」。
ぞくぞくと入る連絡に、運営は対応を追われます。
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それでも、会場の今津東コミュニティセンターには、つぎつぎ人がやってきます。
日ごろTAKASHIMA BASEにやってくる中高校生、高島で「ふくし」や「教育」をなりわいにする人、そして市外・県外の学生や社会人も。全員集合はかなわなかったものの、100人を超える人が集まりました。
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そのなかに、社会福祉法人ゆたか会の職員である長沖さんの姿もありました。隣には、長沖さんが働く清湖園を利用し、地域で暮らす林さん。「若い人たちの考えが聞きたくて参加したんだよ」と笑顔を見せてくれた。清湖園は、ゆたか会チームのフィールドでもあります。
みんな、横並びで話を聞きます。みんな、横並びで考えていきます。
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ソトコト編集長指出さんが話す「わたしたちは高島でゆたかさを見つける」
この日のキーノートスピーチは、ソトコト編集長の指出 一正さん。2016年には滋賀県立高島高校で授業を行うなど、以前からまちとの縁がありました。
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釣りが大好きな指出さんは、高島を流れる鴨川で、いつかます釣りをしたいと思っているそうで。
「高島といえば水。流域圏がつながっていること、つまり川上と川上の人が出会うことが、大切なんです」
トーク前にはそう話していた指出さん。実はこの日、お父さんが危篤状態のなか、高島へ駆けつけてくれました。
「ぼくの父は仕事でのお付き合いを大切にしてきた人なので、『ご依頼いただいたことはしっかり務めるように』と言っている気がします。今日のテーマである“ふくし”のむすびには、死があります。親から子へ、最後に伝えられるものが死であると、ぼくは思っています。今日みなさんからご依頼をいただいたことに、力一杯仕事をして応えたいです」
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ソトコト編集長である指出さんは、日本のローカルをかけめぐり、プロジェクトを営み、取材をして、全身で編集を行っています。福祉の話、林業の話、震災の話、若者の話… 会場へバトンを受け渡すように、日本各地で同時多発的に生まれているプロジェクトを紹介。ゆたかさとは何かを問いかけていきます。
ゆたかさのはじまりは、綴ることから。「言葉は声にしてください。聴いている人がいるんです」と紹介したのは、8歳から80歳までがまちへの想いを綴る「ソトコトペンクラブ」です。
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つづく「民宿 旅の途中」は、徳島県阿波市で、介護についてひたすらお酒を飲んで夢を話す会からはじまった宿。ここは「どんな人も泊まりに来ていい民宿」で、車椅子に乗ったあるお客さんは、チェックインと同時に「どうします?先にお風呂入ります?」とあたりまえに声をかけられたことに感動したといいます。
2023年2月、指出さんはFacebookに「やわらかいインフラ」と投稿。30件近くシェアされました。
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「北斗七星のようなまちづくり」というキーワードも。7つのやわらかいインフラが、1ヶ所に集約するのではなく、ぽつぽつぽつとまちに点在していることが大切なのだといいます。
ここからは「私たちは高島でゆたかさを見つける ~リジェネラティブとウェルビーイング」というテーマへ。
おもしろいリジェネラティブ
「リジェネラティブ」は、農業で用いられてきた言葉だそう。
「もともとは『農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復につなげることを目指す農業』を意味します。そこから転じて、まちづくりにつかわれるように。今の社会を持続する『サステナブル』を超えて、一歩進んだ社会をつくった方がおもしろいな。そういう言葉です」
リジェネラティブに関連して紹介されたのが、「ふくしま未来創造アカデミー」。
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東日本大震災に伴い避難区域となった12市町村が舞台のプロジェクト。ここに集ったのは「ふくしまの未来をつくりたい」という高校生や大学生たち。一度はマイナスになったまちが、0に戻り、プラスへと転じつつあります。移住者も増加中。
ごきげんなウェルビーイング
つづけて、ウェルビーイングとは。
「定義を読んでもなかなか頭に入ってこないウェルビーイングですが、ぼくは『ごきげんな状態』と解釈しています。自分なりに意訳することで、言葉の裾野を広げましょう。今日は『ごきげん度』が高まる2つの方法を紹介します。
① 限りなく移動してください。生活のルーティンをつくらないということです。わたしは家族が神戸にいて、実家の高崎にも行き、会社が東京にあります。ルーティンのなかでの生活は、快適ではあるけれど、だんだんと閉じていきます。適度なストレスは大事なんです。
② あなたを認めてくれる居場所をつくることです。ここでいう居場所は「サード・プレイス」とも少し異なるかもしれませんね。あなたの名前をフルネームで覚えてくれている場所です。あなたがそこにいることを認めてくれる場所です。そういう場所と出会うことが、あなたの、ひいてはまちのゆたかさをつくるんですね。」
あなたを認めてくれる居場所、という話に紐づいて指出さんが紹介したのは山形にある〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉。
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雪深い山形市南部で、どんな子どもも冬を楽しく過ごせるようにとはじまった居場所。ここには、いろいろな親子が集まってくる。そして、おもいおもいに過ごしていく。
日本各地でたびたび耳にする「地域に人がいない」という言葉。指出さんはこう捉える。
「地域に人がいないのではなく、地域に人が現れていなかったんです。地域に住むだれもがおしゃれな場所を楽しめることが大事なんです。家のなかでもじもじしている人たちが現れてくる“関係案内所”を、ぼくたちはつくれているのでしょうか?」
ローカルプロジェクトは、目の前の人の笑顔に取り組む
「ふくしのヒントになるかもしれません」と最後に挙げたのは〈ワンコの森遊び〉。
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三重県大台町にある森から、人とワンコが幸せに過ごせる時間を届けています。
「日本の森林を取り巻く環境には、いろいろな課題があります。林業の担い手不足、毎年のように続く自然災害。それが起きたときに、ぼくたちは助け合えますか?ワンコの森遊びは、直接の課題解決にはつながっていないかもしれません。だけど、ここにいるワンコも人も、みんな幸せそう!」
「なぜぼくらは、課題を解決しないといけないのでしょうか?その先にいる人が幸せになるからでは。ローカルプロジェクトが取り組んでいるのは、目の前の人の笑顔なのでは?」
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幸せを表す英語には、短期的な幸せを表す「ハピネス」と中長期的な幸せを表す「ウェルビーイング」の2種類があると指出さん。
「ウェルビーイングは、ごきげんな状態であると、ぼくは言いました。今日、みなさんはごきげんですか?
みなさん、会場を見渡してみましょう。今日、会場に集まることができた。ここで仲間と発表の場に臨めている。それをともに聴いている人がいる。高島には、ごきげんに、ゆたかさをつくっていく人が大勢いますね」
<中編へつづく>
(編集: toi編集舎 大越はじめ、撮影:奥田しゅんじ/大越はじめ)
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