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ショートショート / 詩

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#X字小説

🎖️ ピリカグランプリ すまスパ賞|ショートショート|誰モガ・フィンガー・オン・ユア・トリガー

「私がピストルの引金を引くのは上司に頼まれたからなの。決して私自身が好き好んでではなく……」と彼女は呟き、静かに水を飲んだ。 「それが役割ですから」と僕は返したが、自分でも気の利かない発言だなと思いゲンナリした。それで慌てて付け加えた。「あなたのおかげで、静止した世界が動き出すんです。その先には喜びも悲しみもあるけれど、それはあなたのせいじゃない。まずは誇りを持たないと」  彼女と僕は仕事仲間だ。だから彼女の苦悩も分かるつもり。上からの指示をこなす日々に嫌気がさすこともある

40字小説|荒れ模様

「止まない雨はない」 「名言ですが気象予報士がそれでは困ります」  気象庁も荒れ模様。

140字小説|涙のホームラン

 ボールは美しい放物線を描き、これまた馬鹿正直な重力によって盆栽に直撃した。歓喜のホームランのはずが、違う意味で涙ぐむバッターの子。 「怒っていないよ。本当さ」とお爺さんはボールを返して笑った。「広い公園を用意できない大人にも責任はあるんだ。だからせめて広い心を持たんとな」

100字小説|約束、果たせず

 僕らが幼稚園児の頃、妻は言った。「いつか結婚してあげる。約束するよ」  そして今「離婚しましょう」と妻は告げた。「昔あなたは『ヒーローになって地球の平和を守る!』と誓ったわ。でも約束を果たせないみたいね」

40字小説|最終便

バス停で最終便を待っていたら妖怪がゾロゾロと……隣は百鬼夜行バスらしいな。

140字小説|あたかも深海のようなコーヒー

 彼女は僕が淹れた温かいコーヒーを静かに飲み、「ありがとう、この深みが好きなの」とささやいた。  だから僕は深海へ。潜水調査船もかくやマリアナ海溝の底の底まで泳ぎ、水を汲んだ。  深呼吸。深煎りのモカでドリップ。さあ、この湯気が昇るコーヒーは彼女の心まで温め得るだろうか?

20字小説|人生はホラー小説

生まれて死にました。 めでたし、めでたし。

140字小説|太陽系第3惑星までの距離

「ねえ、星を見て」と息子はささやいた。私は夜空を仰いだ。手が届きそうで届かないもどかしい遠さ、その先に夏の大三角が燦然と輝いている。  息子は嬉しそうに笑った。「みんな空を見上げるね。でも地球だって星だから地面を見下ろしてもいいはず」  しゃがんで太陽系第3惑星を撫でる私たち。