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魂の出版社、百万年書房を推す
「おい、本気で生きてるか?」
百万年書房の代表・北尾修一さんを見てると、
そう自問自答したくなる。
百万年書房は今とっても勢いのあるひとり出版社。今回はその魅力を紹介したいと思います。
北尾さんは元々、太田出版に在籍。数々の書籍編集、Quick Japanの編集長などを経て、百万年書房を設立。
ひとり出版社とは、通常の出版社の仕事である、編集、営業、マーケティングなどをたったひとりで遂行すること。 大量生産して広く売るよりは一冊一冊丁寧に作り、丁寧に販売していくスタイルであることが多い。
北尾さんを知ったきっかけは、本づくりの裏側を書いた本『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』である。
本を作る工程を細分化して公開。
企画のこと、構成のこと、お金のこと…。
知りたかった本の世界を教えてくれた。
「ここまでさらけ出すこの人はおもしろいぞ」と
当時の僕のセンサーがビービー鳴った。
ひとり出版社なら「何十万部!」という大ヒットじゃなくても数千部売れれば十分ビジネスとしては成り立つと書かれていた。
とにかく数を売るという訳じゃなく、必要な人にしっかり届けきるという形が今の時代にフィットしてる。
ひとり出版社という形態は出版業界の一筋の光になり得るんじゃないかと思った。
新人発掘の嗅覚
それでは、百万年書房の好きなとこを挙げていく。まず数々の優れた作家さんを次々と発掘してるところ。デビュー作が百万年書房という方がたくさんいる。
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まだ全部は読めてないけど笑
特に向坂くじらさんが好き。
冷静に世界を見つめる眼差しと強固な哲学で綴られるエッセイは濃厚でおいしい。
あと数年でとんでもないことになると思います。(世に出るという意味合いで)
皆さんの作品を読んで、逸材を見つける北尾さんの勘の鋭さを思い知った。
そしてさらに驚くべきは刊行ペース。
1年で8冊出した年もあるそう。
どうなってんの?
どんなスケジュールでやりくりしてんの?
高速で動いているのか。
速すぎて火花出てるんじゃないか。
僕が尾崎豊のこと好きだから胸が躍るのかもしれない。全速力で駆け抜ける北尾さんの姿を尾崎と重ね合わせてるのかもしれない。勝手に尾崎重ねてごめんなさい。
生前弔辞集とか出してる
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縁のある作家さんや本屋の店主さん計9名から弔辞を集めたという本も作られた。
実は北尾さんはがんを患っていることを公表している。でも毎日バリバリ働き、お酒を飲んで力強く生きておられる。
そんな姿を見て「全く死ぬ気配がないけれど、もし弔辞が届くとしたらどんな言葉が集まるんだろう」という思いつきから企画されたそう。
発案は田中理那さん。
(田中さんは北尾さんの弟子らしい。現在、百万年書房の様々なお手伝いをされている。ふたり出版社となる日も近い…?)
この大胆な企画を考えついた田中さん素敵。
GO出した北尾さんも素敵。
器の大きさとユーモアに盛大な拍手を送りたい。
だってこれがまたいいんですよ。
読み物として大変おもしろい。
9名の多種多様な愛が詰まってる。
想いが込められてるのがひしひしと伝わる。
それはなぜか。
北尾さんが深い関係性を構築してきたからに他ならない。
たくさんコミュニケーションをとってダメなとこはダメ。いいとこはいいと褒める。とことん付き合って作家の力を十二分に引き出す。
そして1冊出して終わりじゃなくてその先の作家人生にまで思いを馳せてくれる。
『作家と編集者の関係は、セックスのない恋愛関係である』という言葉を北尾さんは体現している。とことん向き合っている。
愛される理由が垣間見える珠玉の1冊だ。
会いに行ける出版社
北尾さんのすごいところは編集者として作家と深く関係性を築くところだと言ったがそれだけじゃない。広さも取ってくる。
広さとは、より多くの人と会うこと。
トークイベントなどをよく開催してるし、文学フリマなどの手売りイベントへの参加も積極的。読者との接点を作りまくってるのがさすが。会いに行けるアイドルならぬ会いに行ける出版社。
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先ほど話に出た生前弔辞集は文学フリマで購入した。その際、北尾さんと初めて直接お話をした。
見た目的に怖い人かと思ってたけど全然そんなことはなかった。
町内会でラジオ体操を誰よりも張り切るおじさんくらい元気で爽やかだった。
「なんか書きましょうか?」
「えぇ、いいんですか?是非!」
「はいどうぞ!ありがとうございましたー」
「ありがとうございます!」
交わした言葉は少ないけどサイン嬉しい。
本を卒業証書みたいに両手でそっと受け取った。
人を大切にするところ
そろそろまとめに入る。
総じて北尾さんの魅力とは
『全力で生きて、人を大切にするとこ』である。
手を動かしてものを作る。
足を動かして人と会う。
シンプルだけどなかなかできないから尊敬する。
ご病気になったから鬼気迫る感じで動けるのか?いやあんま関係ないよな、と思う。
いずれ死ぬという条件は全員同じだ。違いを強いて言うなら、病気は命の締め切りの目安を意識できる点くらい。
大事なのは締め切りの日までに何を提出するかだ。何かを提出しようと生きることが本気で生きるということなんだろう。
明日、締め切りが来るかもしれない。
それを念頭に置きながら日々を生きたい。
北尾さんの活躍を見るたび「福本、おまえは本気で生きてるか?」と自問自答したくなる。
僕は文章を書いていたいし、文章で好きや感謝を伝えたい。今まさにやってるこれ。書いては消し書いては消しを繰り返して今に至る。想いを込めて書くことが僕にとっての『本気で生きる』だ。
百万年書房、及び百万年書房を愛する人たち、さらにはまだ百万年書房を知らない人たちにもこのラブレターが届くことを願います。
僕がいつかnoteで働けることなったらシナジーが生まれると思うのでその時、仕事でご一緒したい。
思い出は消えない。人と人の出会いは無くならない。形として残り続ける本というものが好きだし、本作りに命をかけてる人が好きだ。
本作りの先頭を走る北尾さんのことが好きだ。
これからも推していく。
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