気持ちは分かる7(ペットについて)
あなたは犬派ですか?猫派ですか?
と、唐突に質問された。
あまりにも唐突過ぎたので、両方好きです、と我ながらツマラナイ返答をしてしまった。
きっとね、初対面で二人きりだったから、話題の一つとして言ってきたのだろう、と思う。
気を使わせてしまって、後になって申し訳ない気持ちになった。
別の人が現われ、その話題は直ぐに流れたが、
あの時、犬です。猫です。と、どちらかで答えていれば話は膨らんだのだろうか?
好きな動物を正直に答えていれば、二人の距離は縮まったのだろうか?
ここで書いても仕方が無いことだが、私が一番好きな動物は象である。
胸を張って言える。
象である。
と思っても、あの時の相手の質問はペットにするなら、どっち?だったのかも知れない。
だとしたら、犬かな。いや猫もいいな。いや柴犬が好きだから犬かな?
でも今までの人生で飼った事ないしな。
とか思いながら、某打ち合わせ会場のビルを出た。
ダイエットの為、暑いけど3000歩の距離にある自宅へ歩いて帰ろうか、
と数メートル進んだところで、犬を連れた絵に描いたようなセレブ風のマダムが正面から歩いてきた。
デカいサングラスが少し怖い。だからマダムの足元をチョコチョコ歩くトイ・プードルに視線を向けた。
リボンをしている。愛らしい、
と思った瞬間、擦れ違いざま私に向かってキャンキャン吠えたのである。
ごめんなさいね、と言って去るマダム。
私は、飼うならやっぱり柴犬が良いなぁと改めて思ったのだが、
いや、ちょっと待てマダム!
今、何時や。気温は何度や?と急に怒りが込み上げてきたのである。
そう、そのマダムとトイ・プードルと擦れ違ったのは午後2時過ぎ。
しかもその日はカンカン照りの夏日であった。
リボンなんか付けて可愛がっているのは分かる。
犬を飼ったら散歩は必須。
夜のお仕事ですか?
だから今がお散歩タイムなのですか?
いろいろ事情があるのでしょうね。
気持ちは分かる。
いや、でもね、マダム。
あなた犬の気持ちを分かっていないよ。
私も分かっていないけど。
でも、単純に想像できないものかね。
人間でも暑いのよ。汗ダーダーよ。
ワンちゃん毛で覆われているのよ。
しかも裸足よ。あなた、裸足で歩いてみなさいよ。
ペットは愛玩と言うけれど、家族じゃないの?
ファッションの一部なんかにしてしていませんか?
せめて最後まで責任を持って飼ってよ。
飽きても捨てるなよ!
はっ!
さっきトイ・プードルが吠えたのは
「助けて!助けて!助けて!」のメッセージだったのかも知れない。
そう思うと居ても立っても居られず、
マダムに伝えようと振り返ったら既に姿は無かった。
それは3日前の話。
いよいよ夏本番。
大変でしょうが、事情はあるのでしょうが、
真昼間にワンちゃんを散歩されている方は辞めて欲しいと思う。
ついでに水を飲ますのも忘れないで欲しいと思う。
糞も持ち帰ってね。
手ぶらで散歩している人も意味が分からない。
それから、それから、それから。
やっぱり犬を飼うのは相当な決意が必要だ。
私にはまだ無い。
だから、しばらくは今まで通り、他人の柴犬の映像を見て我慢しよう。