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ゆかりと梅干し
カンカン照りの中外に出ることが嫌いでない。
なぜなら子供の頃真夏の昼下がりに祖母の家に行くと、それはそれは楽しかったからだ。
呉座の上にたくさんの胡麻とその近くに梅と紫蘇が良い匂いを放ちながら、ジリジリと干されているのだ。
誰もいない庭にごまと梅と紫蘇と私だけ。
さらさらの胡麻を飽きるまで撫でる。
ときどき巨大な尺取り虫に出会い我に返って家に入る。
あの時に嗅ぐ梅干しと紫蘇の香り、そして太陽の匂いはなぜか私を元気にさせる。
毎年祖母は梅干しとゆかりを作ってくれる。食が細く、すぐ夏バテしていた子供の頃の私も祖母お手製の梅干しとゆかりがあればご飯もすすむ。
市販でおいしいおにぎりのもとはたくさんあるけれど、私の中ではあの夏の庭の思い出が入った祖母のゆかりと梅干しを超えるものはない。