司書の雇い止めで話題になった、狭山市立中央図書館に行ってみました
先日、用事があって埼玉県にある狭山市駅周辺で時間を潰さなければならず、近くの狭山市立中央図書館に行ってみました。
ここは、2023年に図書館司書の雇い止め問題で話題になったところです。
我々図書館業界人のあいだでも(悪い意味で)話題になっていました。
どうせならもっと素敵なことで話題になっている図書館に行きたかったのですが、仕方がありません。
図書館に一歩入って感じたのが「空いている」ということです。
館内には数えるほどしか利用者がいません。1階の児童書フロアでは靴を脱いで絵本が読めるコーナーに親子一組がいるだけで貸切状態です。
市立図書館といえば閲覧席をお年寄りが占領している印象でしたが、角がポツポツ埋まっている程度です。「高齢者・障害者専用席」が設定されていますが、そんなものがなくても誰でも空いた席に座れます。
利用する側としては空いていて快適ですが、土曜日のお昼前、図書館に行くには絶好のお天気でこの状態というのは大丈夫でしょうか。
蔵書構成としては「普通」という印象で、きちんと整理されていて、分類がめちゃくちゃとかいうこともないですが、裏を返せば利用者がいないからとも言えます。活気ある図書館ではどうしても利用者が棚を漁るので、整然とした状態を維持するのが難しいのですが、その代わり「この棚が人気なんだな」「返却台にこんな本がある」といった発見もあります。
人が少ない理由の一つは、後でわかりました。
立地です。
狭山市駅前は再開発されていて、駅から直結で立派な市民交流センターがあります。
特産の狭山茶を使ったカフェや、公民館、子育て支援センターなどが入っています。
図書館に中高生らしき人がいないなと思いましたが、こちらの学習スペースはほぼ埋まっていました。
図書館はそこから道路を隔てた場所にあるので、何かのついでに立ち寄るとか、通りすがりでふらっと入ることができません。
狭山市役所も違うところにあるので、役所の手続に来た人が立ち寄ることもありません。
さらに建物がボロいです。クラシックで素敵、というわけでもなく、いかにも昔の公民館、という雰囲気です。フロア以外の階段や廊下が薄暗くて「学校の怪談」的雰囲気もあり、トイレは入るのをためらってしまいました。
書架にある本が年数のわりに色褪せているのが気になりましたが、窓や照明のUV対策は予算措置が必要で無理なのかもしれません。
レファレンスカウンターらしきものはありましたが、一般図書とは違うフロアでガラスを隔てたところにあり「誰でも何でもお気軽に相談してね♡」という雰囲気ではなく、全体に冷遇感が否定できません。
「会計年度任用職員募集要項」のチラシがあったので、参考にもらってきました。
「プロ意識のある人には絶対来てほしくないんだな」ということがヒシヒシと伝わってくる内容です。
気になる点としては、こんなことです。
・司書資格要件が無い
・フルタイム勤務でない
・絶対に食べていけない「主婦狙い」賃金
・社会保険に加入させない
(なぜか雇用保険加入ですが、雇用期間が2ヶ月では、失業給付は受給できないのでは…?)
また以前の記事↓で書いたとおり、蔵書点検や配架は資料を把握するうえで馬鹿にできない業務なのですが、単純作業としてパートに丸投げするつもりなのでしょうか。
まとめ
司書の雇い止めと、図書館の活気のなさに因果関係があるかどうかはわかりません。
ただ、ベテラン司書を切ったとしても、もっと優秀で革新的な仕事ができる人を採用して図書館が活性化するならそれはそれでいいかもしれませんが、どう見てもそうなってはいません。
もちろん今も現場のスタッフはがんばっているのでしょうが、それだけではどうにもなりません。
もともと狭山市民は図書館に関心が薄く、市としても図書館は捨てる方針であるためにこうなった、という可能性もあります。
雇い止めされた司書の方々がその後どうなったのかはわかりません。
新しく活躍できる場所を見つけていることを願っています。
ただ現状を見る限り、優秀な司書であればあるほど狭山市から離れたのはむしろ良かったのではないか、と思えてならないのです。
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