「結婚したい」のではなく「好きな人と結婚したい」
まず最初に、私は少子化が悪いとはまったく思っていません。
さらに、社会が悪いから少子化になったとも思っていません。
むしろ、少子化の原因は「好きではない人としかたなく結婚し、しかたなく子どもを産む人が減ったから」だと思っています。
この「しかたなく」というのもポイントで、銃で脅されたわけではなく、たしかに本人の意思ではあるのでしょうが、他の選択肢をすべて奪われた状態なので、いわば「背後から火の手が迫って来て目の前は崖、という状態で海に飛び込む選択をする」ようなものです。
現代でも、若い女性にアンケートを取ると「いずれは結婚したい」とか「理想は子ども2人」とか答える人がそれなりにいて、「それ見ろ!出会いがあれば結婚するんだ!」と見当はずれのお見合いツアーを自治体が企画したりしますが、それは「いずれは好きな人と結婚したい」「めでたく好きな人と結婚できた暁には子どもが2人欲しい」という意味であって、「誰でもいいから結婚したい」というわけではありません。
しかも結婚というのは相手のあることですから、こちらが「この人と結婚したい」と思っても先方がそう思ってくれるとは限らないのでさらにハードルが上がります。
今だって20歳の女性が「自分より20歳年上で、醜くて性格の悪い男性でもいいから結婚したい」と思えばほぼ誰でも結婚できるでしょうが、それが嫌だからみんな独身なので、裏を返せば昔の女性がみんな結婚していたのはそれをやっていたから、とも言えます。
働かないと生活できない世の中では、不本意な仕事でも、給料が安くても就職せざるをえないようなものです。
男性の経済力の低下が未婚率上昇の一因なのも確かでしょうが、それも裏を返せば「昔の男性は妻をお金で買っていた」わけで、決して妻から愛されて選ばれていたわけではないのです。
みんなが好きな人と結婚して、97.2%もの女性が結婚経験者である、などありえるでしょうか。これは1985年時点・65歳女性のデータですが、この人たちは第一次ベビーブームの親世代です。
このころの出生率は4.4だそうですが、これもみんなが心から欲しい子どもの数が4.4人、などありえるでしょうか。もちろん世の中には子だくさん指向の女性もいるでしょうが、全員の平均が、というのはどうも不自然です。このあと優生保護法が施行され、人工妊娠中絶が合法化されたとたん出生率が下がったことを考えると、4.4人のうちかなりの部分が不本意な出産だったのでは、という推測も成り立ちます。
また「跡継ぎの男子を産むのが嫁の務め」という社会では、「子どもは2人でいいかな」と思っていても、2人産んで2人とも女の子だったら3人目も作らねばなりません。2人産んで2人とも女の子になる確率は25%なので、4人に1人は3人目出産を求められることになります。さらに3人目も女の子だったら4人目も作らねばなりません。
もちろん昔の女性の人生を一概に否定しているわけではなく、しかたなく結婚した人が意外といい人で、しかたなく産んだ子どもが意外と可愛くて、「それなりに幸せな人生だった、自分の意志を通して孤独死するよりましだった」と思うものかもしれないのですが。
誰かの「しかたない」に依存し、誰かの意志を踏みにじらなければ人口が維持できない社会なら、あえて存続させなくてもいいのでは、とも思うのです。
ちなみに私の考える有効な少子化対策はこちらです。