ロサンゼルス旅行記 -そして楽園へ-
ロサンゼルスの美しいビーチを巡る旅。ぼくがこの旅に課したルールは二つ。一つはたくさんの海(つまり水のかたまり)を見ること。二つ目はただひたすら南に行くことだ。
前回はマンハッタン・ビーチのあたりからルドンド・ビーチというところまで歩いた。
今回はその続き。ラグナ・ビーチまでの道のりについて写真を多く交えながらご紹介していきます。
ロング・ビーチ (Long Beach)
朝のコーヒーはロング・ビーチのあたりで飲むことにした。ホテルを出てUberで「Confidential Coffee」というカフェまで走る。ヒッピーな感じのカフェだった。カラフルでポップでどこかトリップしてしまいそうな雰囲気。ぼくがお店に入った時にはフランツ・フェルディナンドの「Take Me Out」という曲がかかっていた。
ぼくは小さなカプチーノをすする。そしてこの日の旅路に想像を巡らす。さて今日はどうなることやら?
ハンティントン・ステート・ビーチ (Huntington State beach)
カフェを後にしてUberを呼ぶ。車を走らせること15分。
美しいビーチが目の前に広がる。海水浴場にはたくさんの人影。
浜辺を一望すべくぼくは桟橋を歩いてみた。おおらかでゆったりしている。この日は朝から多くの観光客で賑わっていた。
桟橋から海の方に顔を出すとサーファーが海にぽつぽつ浮かんでいるのが見えた。黒いウェットスーツに身を包んだ人がゆらゆらと立ち泳ぎしながら頭を海面から出している。遠くから見ると黒い小さな点がぽよぽよ動いているように見える。なんだかおたまじゃくしみたいだな。
桟橋の上で人々は思い思いのかたちで時間を過ごしていた。
会話をするでもなくじっとビーチを見つめる人もいれば、わいわいと会話に花を咲かせながら散歩を楽しんでいる人も。
そうかと思えば、いやそうな顔をしてギターをかき鳴らしながら歌っている少年の姿もあった。まるでこの世で自分だけが不幸かのような面持ちで。もちろん歌ってるのはロックの曲。なんの曲は分からなかったけど。
浜辺に沿って歩く。てくてくと。
この日は暑かった。しばらく歩いていると喉もカラカラに乾いてくる。お腹もぐーっと鳴ってるじゃないか。よし、ここらで軽くランチでも取ろう。
海の近くにレストランがあったので暖簾をくぐる(まあ実際に暖簾というものがあるわけではないけれど)。風通しがよく、時折さっと吹く風がとても気持ちいい場所だった。
席に着いてとりあえず水をもらう。カップには透明なゴツゴツした氷とキリキリと冷えた水が入っている。ぐっと飲み干す。くーーー生き返る。
そしてサーファー・サラダというのがあったので頼んでみる。ここハンティントン・ビーチはサーファーの聖地ということだから納得のネーミング。アロハな感じのサラダはなかなか食べ応えがあり幸せな気持ちになった。ごちそうさまでした。
ランチを済ませた。海に沿って歩く。ひたすら南へ。
たまに波打ち際まで足を運ぶ。海水浴を楽しむ人を眺める。なんだか楽しそうだし見ているだけで快い。こころがスッとする。
ニューポート・ビーチ (Newport beach)
しばらく散歩したのち、次のビーチに移るべくUberを捕まえる。
Uberの車に乗り込むと懐かしいメロディーが聞こえた。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」だ。幾何学的なベースラインが耳につく。ぼくは中学生のときにエレキベースを習っていた。島村楽器の音楽教室ではじめて練習したのがこの曲だった。なんだか時間の流れを感じて不思議な感慨におそわれた。
太陽の光が燦々(さんさん)と照りつけるビーチには海水浴を楽しむ人々で溢れていた。ぼくは海をじっくり見たあと、ビーチ沿いをぶらぶらと歩く。
ここはエネルギーと活気に満ちている。大人が集まってワイワイがやがやしながら飲んだくれていた。
ぼくは比較的静かでこじんまりとしたお店を探して中に入った。小さいテーブルに座り、生牡蠣とプロセッコを頼む。ここでまたちょっと休憩をする。まあまあ歩いたのだしいいだろう。
気づけばもう随分と長い距離を歩いてきた。いよいよ最後の目的、ラグナ・ビーチへと向かう。
ラグナ・ビーチ (Laguna Beach)
これまでの旅路でたくさんの海を見た。すなわち「水のかたまり」をこれでもかというほど目にしてきた。ここまでくれば「ロサンゼルスのビーチはだいたいこういう感じだ」というあたりもついてきた。そのはずだった。
それでも最後にたどり着いた、このラグナ・ビーチの景色はそれまで見てきたものとはぜんぜん違うものだった。このラグナ・ビーチで見た息を呑むような絶景はこれからの人生できっと忘れることはないと思う。
ラグナ・ビーチは崖の上から砂浜を一望できるというユニークな地形になっている。地続きに砂浜があり、そして海がある、というこれまでのビーチとは大きく異なる。山の上から見下ろすようにしてビーチが見れるのだ。
背高くスッと伸びた椰子の木の間に目を向ければ、小さくて可愛いビーチが顔を出す。崖を降りて砂浜にたどり着くとそこはまるで秘境のよう。神秘的で美しい自然に囲まれると不思議な心地よさに包まれる。人の数もまばらでまさに隠れ家のようなビーチだ。
海の色は深く青い。水平線を見ているだけでこころが和む。
崖の上のストリートにはおしゃれなレストランやカフェが並んでいる。そしてこの街を更に創造的なものにしているのはアートだ。街を歩いているとそこかしこにギャラリーがあり、すっと中に入って素敵な絵の数々を見ることができる。これが実に興味深くて楽しい。
こんな素敵なところがあっていいのだろうか。
たとえて言うならば、鎌倉・逗子を越えた先にたどり着く葉山のようだ。エレガントで品がよく、それでいて可愛らしい街並みに惹き込まれる。
海が一望できる崖の上を散歩する。結婚式をしている人やベンチに座って静かに海を見ている人もいた。街の方を向けば、お酒を飲んだり音楽を流して踊ったりしている人の姿も見える。
ここは楽園だ。ロサンゼルスのビーチを渡り歩いてたどり着いたのがそう、楽園だったのだ。
そう思った瞬間リップ・スライムの「楽園ベイベー」が頭の中で流れた。なんだかチープな気もするけどいいじゃないか。いい曲だし。懐かしいなーと思いながら口ずさむ。
「常夏の楽園ベイベー♪ ココナッツとサンシャイン・クレイジー♪ 持ってく明日の朝まで summer day, oh-oh-oh〜♪」。
砂浜を歩く。足にはじんと疲れが感じられた。
もうたくさん歩いたのだ。太陽が少しづつ沈もうとしているのが見えた。
あーこの旅もそろそろおしまいなのだなーと感慨に耽る。
そんなことをぼやぼやと考えながら散歩を続ける。ビーチ・ボールのコートの脇を通ったとき、脇に置かれた小型スピーカーからコールド・プレイの初期の名曲『イエロー』が聞こえてきた。エモーショナルで歪んだギターの音とクリス・マーティンの神々しいとも言える歌声が響く。
ぼくはぐっと胸がつかまれた。そしてもうここで旅は終わりにしようと思った。すべての美しい景色を振り返って、感謝の気持ちを抱きながら。
旅の最後はおいしい食べ物で締めくくることにした。
海辺の街にイタリアン・レストランがあったので入ってみることに。バー・カウンターに腰をおろす。隣にはじいさんばあさん仲良く二人で座っていた。このじいさんばあさんがまあ元気で向き合ってはチュッチュしたり、目を見つめ合いながらペチャクチャとおしゃべりしたりしていた。
その隣のじいさんが食べてたミートボールがあまりに美味しそうだったので同じものを頼んでみた。うん、ミートボールをつまみに生ビールを飲むのもわるくない。
バーの奥のモニターに目をやるとメジャー・リーグの試合が放映されていた。青いユニフォームのチームは一目で分かった。
シアトル・マリナーズだ。それを見て「よし、そろそろシアトルに戻る時間だ」と思う。ふと現実に戻ったようだけど、からだにはエネルギーが満ちているのが分かった。旅を始める前はあれだけクタクタだったのに。
最後の最後に日の入りを見ようと店を出る。でも海の先に見えたのは水平線に広がる微かなオレンジの光だけだった。ぼやぼやしていたからちょうど日が沈む瞬間を見逃してしまったのだ。それでも美しかったけれど。
「きっと日が沈む景色はもっときれいだったんだろうなー」と悔やむ。
まあでも人生はいつもちょっとだけ間に合わない。次はもう一度夕焼けを見るために帰ってこよう。人生はまだ「途中」なのだから。
そうこころの中で決意する。
ここ、楽園のラグナ・ビーチにて。
今日はそんなところですね。ここまで読んでくださりありがとうございました。今回の記事が少しでも気に入っていただけたらスキしていただけると嬉しいです。
ロサンゼルスの美しいビーチを巡る旅、いかがだったでしょうか?ぼくにとってこの「たくさんの水」を見る旅は忘れ難いものとなりました。また疲れた時にはきっとこれらのビーチを訪れることでしょう。それまでまた頑張らなくては。
それではどうも。お疲れたまねぎでした!